平凡くんの秘密の恋
4
「な、なぁ・・・ミツ。俺今猛烈に後悔してんだけど」
「っ、・・・嘘だ、そんな!そんなの信じたくない!」
「ミツ・・・」
今までおとなしかったミツが急に泣きそうな声で頭を抱えた。この辺はさすがに年下か。
「俺が一緒に、居たら、先輩に迷惑かける、なんて・・・っ」
「まぁ酷な事だがな」
失礼な人は、あくまで真剣な表情を崩さない。本気で心配してくれてんだ。
「俺はそうやって退学していく生徒を山ほど見てきた。・・・気い付けろよ。生徒会には近付くんじゃねえぞ」
「はい」
「・・・先輩」
「ミツ、バレねえようにだったら部屋でなら会うから。それで許せよ」
「っ、うん」
ぎゅぅぅって抱きついてきた。可愛いやつ。俺の大好きなミツわんちゃん(大型犬)。
「はぁ・・・かなり気に入られてんじゃねえか」
「ははっ、羨ましいですか?」
「うるせえよ。もう話先に進めるぞ」
「どうぞどうぞ」
抱きつかれたままで良いや。
「これ、奨学金制度生のカードキー」
差し出されたカードは一つだけ。
ん?手帳の色からして、ミツのやつが青だろ。俺の手帳と同じ赤色は・・・?
「悪い。手配し違えてお前だけ注文すんの遅れた」
おぃぃぃぃ!!!
「どうするんですか!だってカードキーなんでしょ!?」
「まぁ落ち着け。平凡の運命だ」
どんな運命だ!
「明日か明後日には届くらしい。ケイタイ貸せ」
「ん?うん・・・」
最近買い換えた使い慣れてない携帯電話を手渡す。黒いふたとダークレッドの本体だ。
「これで良いな」
赤外線でお互いに登録したらしい。でも俺の方には2つ新しいのが入っていた。
「寮の管理は2人の交代制だ。カードキーがいつ出来るか分からねえから、もしかしたら米田(ヨネダ)から連絡くるかもしれねえし」
「だからって何で・・・ここって内線とか無いんですか?」
「おっ、良い質問だ平凡」
だから失礼なんだってば。
「実は内線の通話はいちいち録音される。だからダメだ」
嫌な予感がした。
「・・・それってまさか、俺のカードキーの注文が遅れたこと隠したいって言うんじゃ――」
「正解」
なんか威張られても・・・
じゃあ理事長とかお偉いさんたちはこの事知らないんだ。バレたらどうなるんだろ。ま、その辺俺にはどうでも良いけど。
「もう1人の人は米田さんっていうんですよね。あなたは?」
「嗚呼悪い。言ってなかったか。塩見明信(シオミ アキノブ)だ」
会って30分後、失礼な人はようやく自己紹介をしてくれた。
とことん失礼な人だった。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!