Short dream
憧れと好きは違う ヒロト夢 甘
「イジゲン ザ ハンド!!!」
「はぁ・・・円堂君・・・いつ見ても凄いな・・・」
基山は今、グラウンドの外でキャプテン、円堂の練習をまじまじと見つめている。
隣に彼女がいる状況で。
だが、彼の視線は一向に彼女の方へ向くことはなく、ずっと、憧れの彼の元だった。
そのせいで彼女のイライラは募るばかり。
だが、彼はそんなこと気にも留めず、只ずっと円堂だけを見ていた。
サッカーを純粋な気持ちで続けている円堂が基山の憧れだった。
何回も円堂を目で追って、そして気づく。
「・・・あれ、名前は?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「何よ円堂君、円堂君て・・・」
夕焼けが良く似合う、珍しく誰もいない静かな河川敷。
そこで、名前は原っぱで座っていた。
時々、電車の通る音が聞こえては名前の寂しさがどんどんと増した。
(どーせヒロトの一番はキャプテンなんでしょ)
いつもいつも円堂君、円堂君。彼の話題で円堂の出ない日はない。
「もしかして、ヒロト・・・男が好きなの?」
自分で言っといて少し笑いそうになる。
(でも、有り得るよねぇ・・・)
日頃の行動から見て、円堂が女だったら絶対に訴えられそうなほど基山は円堂を見ている。
「というか、女が男に負けるってどーなのよー!」
(なんか、キャプテンに負けちゃった感じだなぁ・・・)
また、寂しさが増した気がした。
(どーせ、ヒロトはまだキャプテンのところにいるんでしょ・・・。私のとこに来るはずは、ないか)
ちょっと期待した、とでも言わんばかりに名前は項垂れた。
「・・・へぇ、名前は円堂君に嫉妬してるんだ」
「そうなの、私馬鹿だから。ヒロトの視線独り占めしてるキャプテンに妬いちゃった・・・・ってえぇ!?ヒロト!」
そこにいたのは、今円堂と一緒にいるはずの名前の彼氏、基山ヒロト。
「そうなんだ、相変わらず名前は可愛いね」
基山はクスっと微笑む。
「隣、良い?」
「・・・・どーぞ」
許可を取って基山は名前の隣で座る。
「・・・ヒロト、何処まで聞いてたの?」
「最初から、ね」
また微笑む。楽しそうに微笑む。
「・・・・キャプテンのところに戻れば良いじゃない」
「名前の方が大事だよ」
「嘘ばっか」
「本当だってば。・・・なんなら証拠、みせてあげようか?」
「遠慮しとく」
断ったにも関わらず、基山はどんどん名前に詰め寄ってく。
どんどん、お互いの距離が縮まっていった。
そして、いつの間にか、基山が覆いかぶさるような形になってしまった。
「ちょっ、誰か来たらどうすんのっ?」
恥ずかしがりながら何とか有り余る力で抵抗する名前。
「見せ付ければ良いだろ?」
意地の悪い笑みを浮かべ、名前の抵抗する様を楽しんでいる基山。
「嫌だってば!!馬鹿ヒロト!」
「それだけオレが本気だってこと」
リップ音が聞こえて、名前は解放された。
真っ赤になった名前と、楽しそうに笑う基山。
「名前、オレは円堂君に憧れてるだけ。オレが愛してるのは名前だけだよ?」
ストレートに愛の告白。
彼の真剣な緑色の眼差しに、吸い込まれそうだった。
毎回思う。この男は・・・。
「あ、でも嫉妬する名前、可愛かったな」
「うるさいーっ!黙れ!」
真っ赤になった名前をぎゅっと抱きしめる基山。
(憧れと好きは違う)
(何時か、君に勝てるように)
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