Short dream
もしもの話。 佐久間夢 甘
サッカー部の活動が終わり、いつものように二人で歩く。
少し冷たい風が吹き抜ける中、俗に言う恋人の二人は手を繋ぎ歩いていた。
「ねぇ、佐久間?」
彼女が呟いた。
「何だよ」
ぶっきらぼうに、でも、優しく返答する。
風で綺麗な水色の髪が揺れる。
ちょっと歩くのが遅くなった。
「もしも、私が何処か遠いところに行っちゃったらどうする?」
唐突な質問。
「え?・・・・・っプ」
佐久間はつり目を大きく開いて、そして大声で笑った。
「あはははっ」
名前はちょっといらっとする。
「な、何が面白いのよ」
こっちは真面目に聞いてるのに…、と付け足した。
「ごめんごめんだってさ、んなの答えなんかひとつじゃん」
佐久間が名前の手を強く握り締めた。
止まって、向き合う。
「俺が絶対行かせないぜ?名前はずっと俺の隣だ!」
佐久間は笑いかけた。
そう言って再び歩き出した。
名前は佐久間の耳が真っ赤になってるのを気づかない振りをした。
そして、強く握り返した。
「佐久間ー」
「な、何だよ」
「大好きだよ。ありがと」
(もしもの話。)
(君には敵わないなぁ。)
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