森に棲む魔女
03
魔女に促されて魔女の目の前にある椅子に腰掛けて少女は自分の願いをいった。
「不老不死?」
「そうよ、不老不死」
少女が願ったのは不老不死、老いて朽ち果ててしまうことなく己の美貌をそのまま間持ち続ける唯一無二の方法。
「出来ないの?」
「もちろん出来るわよ」
まだ幼い少女からの意外な願い事に魔女は少し驚かされた。今まで何人、何十人、何百人と願いを聞き、叶えてきた魔女だったが今目の前にいる少女のように若くして不老不死を願うものなど一人もいなかったからだ。
不老不死を願う少女の顔は真剣そのもので心からそれを望んでいるのが魔女にはよく分かった。
「不老不死の代償は高いわよ」
「構わない、この美しさが老う事も傷つく事もないなら」
そこで一度言葉を区切ると一呼吸入れてから続けた。
代償が何なのか考え付くはずもなかったが、少女にとって代償など取るに足らないもので不老不死こそが全てであった。
「どんな代償でも支払う覚悟は出来てるわ」
怯むことなく少女は言い切った。
それを受けて魔女もうなずき、わかったと少女の願いを承諾した。
「代償はなに?」
「貴女の名前…と、居場所を貰うわ」
少女に聞かれて魔女は不老不死の代償を答えると、想像が付かなかったとはいえもっと大変なものを想像していた少女は意外そうな顔をした。
「名前は分かるけど、居場所ってどういうこと?」
「貴女に帰る家はない。家族や周りの人間から貴女の存在そのものを消すの」
魔女はそういって少女の出方を待った。
「なら交渉成立ね」
躊躇することなく返した少女に魔女は驚いた。
いくら望んでいるものが不老不死とはいえ、己の名前と家族との繋がりを全て断ち切るという条件を少女は選んだのだ。
不老不死、交換する代償はさほど高いものでもない。何故なら不老不死そのもの事態が呪いにも似た大きな代償に過ぎないからだ。
この先少女はきっと孤独を味わうことになるだろう、少女が誰かと親しくなってもその者は少女を残してこの世を去る。少女がどんなに死を願ってもそれが訪れることなど決してないのだから。
「いいのね、後悔しても取り消しは聞かないわよ。望みも一人一つまでなのよ」
逆に少し心配になってしまった魔女が最終確認も兼ねてそういうと少女は呆れた様にため息をついた。
「私が欲しいのはこの美しさを永遠に保持し続けることよ」
少女は不適に笑うと椅子から立ち上がって魔女を見据え、魔女も微笑み返して少女に向かって言い放った。
「汝の願いを叶えよう」
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