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首無しライダー
結局ただの生命体(帝→静→杏→正)
(帝人視点)

ふらりとあの雑居ビルに足を踏み入れると平和島さんが煙草を吸っていた。
偶然の再会に心が踊る。


けれど、正臣を消せなかったという罪が踊る心を沈ませた。



「失敗しちゃいました」


平和島さんの負担にならないように、成功するまで続けるという僕の意志を告げるように笑顔を浮かべる。

「もっとちゃんと出来る筈だったんですけど…
何でかなぁ
正臣ったら意外と逃げ足が早いみたいです。」

きちんと傾向と対策を練って正臣を消さなければ。

「今度はちゃんとやりますね」

次こそは絶対に!!!!!

「やめろ」

ギュッと屋上のフェンスを握った平和島さんからそんな言葉が。
まだ、僕がやろうとしている事に罪悪感を覚えているのかフェンスを握る手は青筋が立っている。

そんな優しい平和島さんだからこそ僕は愛しいのだ。

平和島さんは僕を止めたい。
それは彼の本心に近い感情なんだろう。
彼は酷く優しい人で、一般常識に捕らわれた可哀想な人でもあるから。
でも、平和島さんに僕の愛は止められない。
僕を止めたいなら、平和島さんが忌み嫌う圧倒的暴力で僕を叩き潰すしかない。
それでも僕は計画を遂行する気ではあるけれど。

「そうです」

単細胞とか言われるけれど平和島さんだって頭が回る。
自分が僕を殴ったら何が起こるかなんて百も承知。
園原さんは友人である僕を攻撃した人間に好意を抱くような人間じゃない。
さらに言えば、好きな相手を攻撃した人間を許す程甘い人でもない。

「平和島さんが正臣を襲ったら園原さんに嫌われちゃいますもんね。だから僕がやるんです。もし僕がやったってバレたら園原さんの友人ポジションは完全に開きますよ」

これが僕の計画。
僕が正臣を排除し
正臣を消したのが僕だと知った園原さんは僕から離れる
そうして一人ぼっちになった園原さんを平和島さんが優しくしてあげればいいだけ。
自分で思うのも何だけど、ハッピーエンドじゃないか。


「止めてくれ」


どこか怪我でもしたのか平和島さんはやけに痛そうに言う。
平和島さんが痛みを覚える必要はないのに…

「平和島さんの本心は分かってます。園原さんと一緒に居たいんですよね」

「違う」

「ずっと見てたから知ってます。平和島さんは園原さんが好きだ」

「違う!!!」

「園原さんが好きな正臣が居なくなれば良いって思うくらいに」

「違うっ!!!!!!」

悲鳴みたいな否定。
そこまでして園原さんの幸せを守ろうとする平和島さんに少し腹が立つ。
園原さんから正臣を引き離すのが可哀想?
だって引き離さなきゃ平和島さんの幸せは来ないじゃないか。
別に平和島さんにヤレと言っているんじゃない。
目を瞑るだけで、貴方の望んだ世界が手に入るっていうのに。

肩で息をしている平和島さんを見た瞬間、胸に去来したのは感動。

怯えている。
あの平和島静雄が僕みたいなちっぽけな人間を見て怯えている。

震える手でフェンスを握り締め
揺れる目で僕を睨み付ける。


あまりにも嬉しくて僕の中の怒りが霧散していく。
ごめんなさい
優しい貴方を怖がらせてしまって
少しばかり僕の愛は凶暴でしたね


「いいんです。
平和島さんは否定しててください。これはただ僕の勝手な妄想で、勝手な行動なんですから」


それでも、池袋最強の貴方に恐怖を与えられるならこの愛も報われる。


「もう、止めてくれ…」

嗚呼
震える貴方の声のなんと甘美な事か

「平和島さんの事は何でも分かってます」

怯える目のなんと美しいことか


「平和島さん」


名前を呼んだだけで警戒したみたく肩を震わせる姿が愛しい。


「幸せになって下さいね」


僕に対する恐怖を前提としたハコニワみたいな幸せが貴方に訪れますように
そうすれば、僕の望みも叶うのだから。

僕は貴方の世界を支配したい。



ブチ切れた平和島さんに殴り飛ばされ、次に意識を取り戻した時に平和島さんは居なくて
屋上には僕だけ

恐怖に耐えきれずに殴っちゃうなんてダメだなぁ

痣になってるだろう頬を撫でれば、平和島さんへの愛しさだけが湧き出てくる。



「ふふ…ふふふ。はは。あははははははははははははははははは!!!」


そして僕は理解した。

もう既に、僕への恐怖は平和島さんの世界を占めている。


ふふ
オカシイよ

僕は平和島さんへこんなに優しく優しくしているのに、どうして怯えるの?
分からない
分からない


でも、いいんだ。

だって

もう

平和島さんは

僕から逃げられない



僕から

絶対に


逃げられない。

―――――――――――――――――
静雄視点と比べると会話のかみ合ってなさがよくわかります(笑)

[2010/7/4.Up]

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あきゅろす。
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