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首無しライダー
一日遅れのMothersDay(竜ヶ峰家族)
男の子ってつまんない

一緒にお買い物に行ってくれないし
ヒラヒラふわふわとか着せられないし
いつの間にかガタイは良くなるし
あ、私の帝人は華奢なままだから良かったけど




「昨日は母の日だったのに」

小声で文句を言いながら竜ヶ峰ひとみは弁当の支度をしていた。

「お隣の佐藤さんはご飯作ってくれたらしいし」

不満そうに頬を膨らませる彼女は年よりも幼く見える。けれど、弁当を作る手はベテランの主婦そのもの。
毎朝毎朝息子と夫の弁当を作り続けるひとみの手際に隙はない。

昨日の母の日は何だかんだでうやむやにされてしまった。
夫は仕事だとか言って一日中居なかったし(深夜に帰宅した時にパウンドケーキというお土産を持ち帰っては来たが)
息子はよく分からない理由をつけて外出してしまった。

夫はともかく、息子は確実に逃げたとひとみは踏んでいた。
別に高価な物が欲しい訳ではない(無論、貰えれば嬉しいけれど)
プロ級の家事を求めてはいない(下手に手伝われたらそれはそれでキレそうだ)
ただ、少しくらい何かあって欲しいという期待をして何が悪いと言うのだ。

そんな期待を物の見事に打ち砕かれたひとみはかなり不機嫌だった。
それでも彩り鮮やかな弁当は栄養バランスも考慮に入れたものになっているのは大したものだ。

「あ、母さん。おはよー」

ふにゃふにゃとした寝起きの声が聞こえ、ひとみは不機嫌を隠すことなく振り返る。

「おはよーじゃないわよ。さっさと顔洗って朝ご飯食べちゃって」

「う…うん」

わたわたと去っていく息子の後ろ姿にため息しか出ない。
可愛いんだけど、いまいち頼りない息子。それがひとみの評価だったりする。
夫みたいな意味不明な性格にならないように慎重に育てすぎたのが仇になったとしか思えない。とか思いつつ弁当を包み、ダイニングテーブルに置く。

既に起き出して居た夫が朝食を食べ終えているのに気付き、もう一つため息。

「貴方は貴方で朝の挨拶も出来ないの?」

「んー」

経済誌を読むのに熱心な夫の生返事に頭痛すら感じてしまう。
速読術でも修めているのか竜也のページを捲る手は早い。けれど、大手新聞やら地元紙やら計7誌を読む彼の新聞タイムは毎朝30分以上。
ウザイ事この上ない。

「食べ終わったら食器くらい流しに置いて頂戴」
「後でやるよ」
「やるなら今して」
「んー」

絶対聞いてない。
そう判断したひとみは竜也の前から食器をひったくると台所に戻り、洗い物を始める。

「それにしても今日はやたら生返事だったわね」

普段なら洗い物くらい進んでやってくれるのに…
ぶつぶつと文句を言いながら、荒っぽく洗っていれば、バタバタと帝人が朝ご飯を食べ、バタバタと歯磨きをし、「行ってきます!!!」バタバタと外に飛び出していった。

「ちゃんとお弁当持って行くのよ!!!」

台所から顔を出し、叫んだひとみはダイニングテーブルの上に見慣れぬ物を見つけ、頬を染めた。
食べ終わった皿の隣に置かれたのは、少し萎れたカーネーション。

「洗うよ」

タイミング良く帝人の食器を下げ、台所に入ってくる竜也のニヤニヤとした笑顔。

「知ってたの?」

「何が?」

「…帝人がカーネーション用意してた事」

「恥ずかしくって直接渡せなかったんだって。昨日の夜相談されちゃったー」

スポンジを手にして洗い物を始めた竜也の笑顔にイラっとしたひとみは軽く蹴りを入れながら、嬉しそうにカーネーションを手に取る。
昨日から用意して渡せなかったせいで少々元気の無くなってしまった花。
けれど、なんだかとてつもなく嬉しかった。

「花瓶何処にしまったかしら」

今までの不機嫌なんて吹き飛んでしまったらしくひとみはウキウキと花瓶を探しに台所を後にした。

―――――――――――――――

中学生くらいの帝人
素直に渡すのが気恥ずかしいお年頃みたいです(笑)

[2010/5/10.Up]

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あきゅろす。
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