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首無しライダー
月の肖像(臨帝)

「飼いたいなぁ」

目の前に座る臨也の唐突な言葉に帝人は目をぱちくりと瞬きさせた。
放課後にいきなり拉致られて新宿の臨也の部屋に連れてこられた帝人には状況があまりにも不可解だった。

普段なら「愛してる」だとか「可愛いね」だとかウザイ位に聞かされる言葉はなく、黒いシンプルな机に顔を付きあわせるみたいに正面に座った二人の間には何故か水槽が一つ。

臨也の言葉と水槽を考慮した帝人は一つの解を出した。

「魚ですか?」

飼うべき魚を買わずに水槽を先に買った臨也のマヌケな行動に密かに笑いながら帝人は訊ねる。

けれど

「なんで俺が魚なんか飼わなきゃならないの」

臨也は帝人の言葉を異世界からの言葉とでも思っているかの様な不思議な顔をしていた。

「でも水槽」

「ああ、これね」

クッ。と喉の奥で笑った臨也は水槽を長い人差し指で突いた。
ゆらりと水面が揺れる。

「覗いてみてよ。ちゃんと"ある"から」

「何にも見えないですよ」

目を凝らしてもなにもない。
臨也なら水を飼ってるとか言い出しかねないと思って帝人は首を振った。

「横からじゃなくって上から」

「?」

言われるがままに立ち上がり、身を乗り出した帝人は水面に映る満月に息を飲む。

「今の趣味は風流ですか?」

「月を飼うなんていいだろ?」

嬉しそうに臨也は笑い、水面の月を帝人と一緒に覗き込む。

「やっぱり飼いたいなぁ」

「そんなに月が好きなんですか?」

「いいや。違うよ」

人の悪い笑顔を浮かべながら臨也は水面の帝人を見つめる。

「もう一つあるでしょ?」

「っ!!!」

臨也の言葉に帝人は咄嗟に水槽を払いのけた。

ガシャン!!!!

派手な音を立て、ガラスの水槽が割れる。

「はは。帝人君はいつになったら俺に飼われてくれるの?」

「一生ありえないです」

心の底からの嫌悪を露わにした帝人は臨也の顔面に拒絶の言葉をぶつける。
それなのに臨也の顔から気持ち悪い笑顔は消えない。

フローリングに広がった水は相変わらず満月と帝人とを写していた。

「もう遅いよ。だって君はもうこの部屋から出られない」


―――――――――――――――
臨帝ー
監禁しちゃうぜ☆


[2010/3/28 Up]

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