首無しライダー 捻れば海にもなりましょう(一方通行) 帝人only 電気も点いていない部屋に一人。彼は唯一の光源であるパソコンにかじり付いていた。 光に照らされる白い顔には緩やかな笑みが浮かび、時折恍惚とした吐息を漏らす唇は今は堅く引き結ばれている。 スクロールされる画面を真剣に見つめる目には剣呑な光が宿り、違う記事を見れば愛しそうに細められ、またすぐに醜く歪む。 彼が見ているのはダラーズサイト内に立ち上げた『平和島静雄遭遇記』という掲示板。 池袋に住まう多くのメンバーが平和島静雄をチラ見したら書き込みを行うソコで彼、帝人は今日の一日の静雄の行動を把握していた。 どんなに愛していても帝人自身にマトモな生活がある以上、その目で実際に四六時中監視を続ける事なんて出来ない事を彼は理解していた。 だから彼の手足であり、彼自身でもあるダラーズを使って帝人は彼の支配欲を満たしているのだ。 最近書き込まれる事の多いネタとして『静雄が何かにビビっている』というものがある。 その記事を見る度に、"何か"の正体である帝人は満足する。 静雄が自分の事を考えてくれる瞬間を他人に見せつけるのは気分が良かった。 けれど、田中トムとバーガー屋に居たとか、折原臨也と盛大な喧嘩をしていたとか、サイモンと会話していたとか、セルティのバイクに乗っていたとか、 そういう記事を見ると帝人は腹立たしげに鼻を鳴らした。 自分には笑いかけてくれない癖に、他人には笑顔を振りまいている 自分には怒りさえくれないというのに、他人にはその拳を振るう。 自分とはご飯を食べてくれない癖に 自分とは会話らしい会話だってした事がないのに そういう時に帝人の心に浮かぶドロドロとした感情は嫉妬というには余りにも暴力的なものだった。 静雄以外が全員消えてしまえばいい。 水道に毒を流すことを夢想した帝人はすぐに頭を左右に振った。 「僕は静雄さんに優しくしたいんだ」 静雄が欲しがる杏里からの愛をサポートして、静雄を幸せにするのが自分の夢であって幸せ。 静雄は我が儘で欲しがりだから、杏里以外の愛、友情とかも大切にしている。静雄の友人を消してしまうのはイケナイ事だ。 自分を必死に自制し、帝人は画面を見つめる。 誰かが載せた動画の中の静雄の頬を撫で、帝人は歌うように祈るように呟く。 「早く。僕が静雄さんへとあげる幸せに気づいてください。 今の静雄さんの幸せは僕の温情故にあるって事に気づいてください。 あんまり気づいてくれないと意地悪な僕はそれを奪う事でそれが与えられた幸せだって教えてしまいますよ。」 机の下に置かれたプラスチックの箱を足先で突きながら、帝人は鬱蒼と笑った。 「早く。僕の優しさに溺れてください」 ―――――――――――――――― ヤンデレが凶器を入手したみたいです(笑) 箱の中身は致死性の何かに違いない [2010/9/4.Up] [*前へ][次へ#] [戻る] |