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企画
彼は神が叶える筈もない願いを祈った(静帝)

パロ
修道士静雄×神父帝人





村外れにある小さな教会。
荘厳さよりも素朴さを感じさせる木造の教会の礼拝堂で一人の神父が掃除をしていた。
何故か叩き割られた長椅子の破片を袋の中に入れ続けるという教会ではあまりなさそうな種類の掃除ではないだろうか。
礼拝堂の中で暴れるなんて不敬をする人間が居るとは思えないし、
教会の中に侵入できる位に高位のモンスターがわざわざ礼拝堂だけを荒らして帰るとも思えない。

全くもって不可思議な現象だ。

しかし、彼は馴れきった手つきで木材を回収している。



「すまない」

長椅子に座る修道士の謝罪の言葉に彼は顔を上げ、そちらに視線を向けた。
青灰色の綺麗な瞳の中に俯いた青年の姿が写り込む。

「大丈夫ですよ。掃除なんてすぐに終わりますから」

「ああ…」

気落ちした様子の男は自分の両手を見下ろし、深く深く溜息を吐いた。

「なんで加減ができねぇんだ」

後悔にまみれた青年の言葉にかけるべき言葉を持たない神父は掃除を再開する。



この教会の修道士である静雄は普段は温厚で優しい性格をしており、町の人々から慕われていた。そんな彼には最大の欠点があった。
人間離れした筋力の持ち主で、やる気は無いのに物を破壊してしまう事が多々あるのだ。
さらに沸点が低すぎる短気な性格も破壊活動の原因になってしまってる。


昨夜は天敵とも言える臨也がこの教会に顔を出したせいで長椅子をへし折り大立ち回りを演じてしまった。
自分の怪力を気に病んで修道士となったというのに、未だその力と折り合いがついていない。その事が静雄を憂鬱な気持ちにさせる。

「そんなに自分の力を嫌がらないで下さい」

木片を回収し終えた神父が優しく声をかけた。
穏やかな声にゆるゆると顔を上げた静雄は帝人の優しい笑顔に息を飲んだ。

「帝人…」

「全ては神の思し召しなんですから。静雄さんの力だって意味があるんです」

穏やかに語る帝人に静雄の表情も柔らかくなる。
家族以外で唯一自分の力を受け入れてくれた帝人に静雄はいつも救われていた。
帝人からしてみたら宗教的な義務観念かもしれない。そうであったとしても優しく受け入れられるだけでいつもの平静な自分を取り戻せた。

「悪い」

「謝らないで下さい」

優しく諭し、帝人は長椅子が無くなり、空白になってしまった場所を見下ろす。

「物なんてすぐに元通りになります。それよりも静雄さんに怪我がなくて本当に良かった」

破壊の嵐をまき散らした張本人の身を案じる帝人は聖職者というよりも天使かの様。
その優しさに、その言葉に静雄はどれほど救われてきただろうか。
聖書を読むよりも、神に祈るよりも、帝人と共にいる事が静雄の心に平穏をもたらしていた。

「帝人」

この想いを伝えようと口を開いた静雄だったが、上手い言葉は何一つ出てこない。

「どうしましたか?」

木材を集め終わった帝人が振り向いた瞬間
トクン
と静雄の心臓が小さく跳ねた。

「いや…」

今度こそ本当に言葉を失ってしまった静雄は頭をガリガリとかきむしる。

「その、だな」

「?」

不思議そうな顔をする帝人の幼い表情に心臓がまた跳ね上がる。
この感情の名を静雄は薄々気付いていた。
そして、その感情が禁忌である事も知っていた。
神は同性同士の恋愛をお赦しにはならない。

だから、静雄は自分の感情を無視しようと気のせいだと自分に言い聞かせる。

「いや…」

そして、声をかけたのが不審に
思われない程度の自然さで手を帝人に向かって差し出す。

「それ、持ってくから」

「え。大丈夫ですよ」

帝人はそう言うが
長椅子一つ分の木片は大量すぎて彼一人では持ちきれそうもない位。

「俺が壊しちまったんだから」

「…」

少し不満そうな顔をした帝人だったが、すぐに納得したらしく「わかりました」と言う。

「静雄さんはこっちを運んで下さい。僕はこれを持って行くので」

一緒に行きましょう。
そう言われた静雄の心臓はまたドクドクと脈を打ち始める。

「あ、ああ。分かった」

帝人に指定された木材に手を伸ばしながら、静雄は神に祈った。
こんな時間が永遠に続く事を

―――――――――――――――――
静帝!!!
シスターな静雄×神父な帝人
との事でしたが
シスターは女性のみを示す言葉なので
女体化にするか単語を変えるかで悩み
単語を変えましたm(_ _)m

あんまり設定を生かせなかった感じがします(´・ω・`)


[2011/2/20.Up]

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