企画
Treat or Trick(禊宗)
「『ねぇ』『ねぇねぇ!!!』『形ちゃん形ちゃん!!!』」
雑誌を斜め読みしていた球磨川が突然興奮気味に声を上げ､隣に座っていた宗像の肩を叩き始めた｡
何故読み終えた部分をわざわざ千切って床に捨てるのかとか､そもそもページを順番に捲って読まないのかよとかツッコミ所が満載な読み方わしていたけれど､そこはノーツッコミの宗像｡
最近では球磨川の奇妙な言動をスルーできるアブノーマルを身に付けてしまっているのでは､と−13組連中に思われているのはまた別の話｡
「『見てよ』『見て見て!!!!』『馬鹿だよねー』『こんな事して何になるんだか!!!!』『僕にはさっぱりだよ!!!』」
バシバシと肩を叩かれながら耳元で叫ばれるのは流石に鬱陶しかったのか宗像は今まで眺めていた教科書から目を上げた｡
13組が試験免除とはいえ､先日気紛れで受けた定期考査でオールレッドな結果を叩き出すという快挙を達成してしまった宗像の最近の趣味は勉強だったりする｡
彼なりに一般社会に溶け込もうとしているらしい｡
「何？」
「『そんなに』『教科書ばっか見てると』『僕が嫉妬しちゃうから止めてよね!!!!』」
「殺す」
クダラナイ事で邪魔をするなと殺気立つ宗像に球磨川はヘラヘラとした笑顔を向けるだけ｡
「『でね!!』『コスプレをしてよ!!!!』」
「？」
色々と説明を飛ばした球磨川の言葉を宗像が理解出来る訳もなく､無表情なまま不思議そうに首を傾げる｡
「『ほら僕たちみたいなマイナスだって』『バカみたいなお祭りに参加すべきなんだよ』『しかも』『このお祭りったら僕たち向け!!!』」
「僕はマイナスじゃない」
「『悪戯してくれなきゃお菓子をあげるよ!!!!』『Treat or Trick!!!!』」
宗像のささやかな主張は無視され､球磨川は意味不明な事を叫ぶだけ
「逆じゃない？確か小さい頃やったけど」
過去の記憶を呼び起こし､そして雑誌を覗き込んだ宗像の言うとおりに紙面には通常のハロウィンの話題が
「とりっくおあとりーと」
たどたどしく英語を読む｡
「『あは!!!』『形ちゃんったら可愛い〜』『でも残念だなぁ』『僕ったらお菓子持ってないや』『僕のTreat or Trickとあわせて』『いっぱいいっぱい』『いーぱっい』『悪戯してあげるね!!!!』」
自分勝手にも程がある戯言を吐いた球磨川がいそいそと取り出したのは江迎の制服｡
「『形ちゃんが着てくれるなんて』『嬉しいなぁ〜』『この制服を着た形ちゃんを生まれた時から』『待ってたんだ』」
「…だから殺す」
「『いやん』『形ちゃんったら』『僕の中の全ドＭを悦ばせる天才なんだからぁ〜☆』」
「だから!!!!」
「『殺していいから』『この制服着てよ!!!』『着てくれたら死んでもいい!!!』『それでこの制服の次は飛沫ちゃんのね!!!!』」
聞く耳持たない球磨川が取り出した服たち｡
女装ばかりの絶望が広がる世界に宗像は殺意を収めた｡けれど､抵抗を諦めた訳ではない｡
「着る訳がない」
「『え〜』『なんでなんで!!?』『絶対似合うのに!!!!』」
「だって君はコスプレをしてないじゃないか｡僕だけなんて不公平だ」
「『人間は公平じゃないんだから仕方ないって』『僕たちみたいなマイナスは負けっぱなしで』『いつも不平等条約なんだから』
『でも』『大好きな形ちゃんが言うなら』『僕もするよ』『コスプレ!!!!』『キャー!!!』『告白しちゃったー!!!!』」
顔を赤らめる事もなく恥ずかしがる球磨川は次の瞬間､何本もの螺子を自分の頭に顔に突き立てた｡
ビシャリと生温かい液体が宗像の頬を汚す｡
それに指を伸ばせば､ぬるりとした感触｡
「『フランケンシュタン!!!』『どう？』『似合ってる？？』」
巨大な螺子で割られた頭から脳漿を垂れ流す球磨川はフランケンシュタンというよりも惨殺死体みたいで
吐き気を催すぐらいに気色が悪い｡
「仕方ないな…」
けれど､宗像は球磨川のコスプレに納得したのか江迎の制服を手にとった｡
「着方が分からないな｡着せてよ」
制服を前後上下左右から観察し終えた宗像は無表情のままトンチンカンな台詞を吐いた｡
「『ちょっ…!!!』『け…形ちゃんったら』『恐ろしい子!!!!』『男は須く狼なんだぜ』『もっと』『気をつけないと』」
そう言いながらも球磨川は宗像の制服に手を掛けた｡
「『はーい』『脱ぎ脱ぎしましょうねー』」
「脱ぐのは出来るから」
冷静なツッコミなどには耳を貸さずに､球磨川は物凄く楽しそうに宗像の上着をボタンをはずすこともなく無理矢理に引きちぎる｡
「『無理矢理』『襲ってるみたいで』『僕』『興奮してきちゃった』」
「君は変態だね」
何を言っても無駄だと察した宗像はその一言を呟くと完全に抵抗を諦めた｡
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どうも禊宗は血が流れるみたいです(笑)
[2010/11/13.Up]
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