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企画
クリスマスの過ごし方(暗殺者の憂鬱# 血)
【クリスマスの過ごし方】
「さむ…」

ブルっと体を震わせ、両手を擦り合わせる青年が一人。
寒さでかじかんだ指は冷え切り、擦り合わせる力も殆ど残っていない。

「ホント、嫌な仕事だっての」

ぶちぶち文句を言いながら、青年は床に転がる肉の塊からズルリと大ぶりなナイフを引きずり出した。
先端が鍵の様に曲がっている独特な形のそれは犠牲者の肉を削ぎ取りながら冷たい空気の中に姿を現す。
遠い昔、インドのシク教徒が扱ったというキルパンというナイフであり、芸術性の高い骨董品であるのだが、青年はそんな事お構いなしにキルパンを投げ捨てる。

堅い音を立て床に転がるキルパンには目も暮れずに青年は窓の外を見る。
世界には闇しかない。

エネルギー統制の名の下に夜間の灯りは全て消される事となっている。
かつてはこの時期はイルミネーションで煌々と照らされていたらしい。

それがどんなものなのか青年は知らなかったが、多分、幸せな物なのだろう。

室内に視線を戻した青年は幸せとは言い難い世界に溜息を吐いた。
真っ白な呼気が漏れる。


「せーんぱーい」

どこからともなく聞こえる暢気そのものの大声に青年は溜息を殺し、一歩前へと足を踏み出した。

グチャ

血を吸った絨毯の不快な感触に眉を顰め、彼は周囲を見回した。
辺りには散乱する肉片が飛び散っていた。
大量にぶちまけられた血と臓物に白い壁は赤く染まり、異臭が蔓延する。

まるで獣か何かに喰い殺されたかの様な惨状。
だが、この凄惨な現場を作ったのは青年自身であり、そして別に恨みがあった訳でもない。


見せしめ

それが妥当な表現であった。
"暗殺法"に抵触すればどうなるのか。
聖夜に"カミサマ"はステキな贈り物をしたのだ。

反抗するものには無惨な死を


自らが作り出した地獄絵図に何の感情も見せることなく、彼は相変わらず自分を呼び続ける後輩の元へと歩き出し、すぐに立ち止まった。


僅かに振り返り、

「ハッピーメリークリスマス」

皮肉気に唇を歪め、彼は物言わぬ死体に囁いた。



―――――――――――――――
オリジでクリスマス
まさかの血塗れですみませんm(_ _)m
まだ本編の進み具合的に書こうと思ってたネタが書けずにこんな事に(笑)

あ、青年=ヴァイスですよ




[2009/12/22 Up]

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あきゅろす。
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