企画
ウィキプディアの誤情報(性転換セル帝:来夏様リク)
性転換セル帝
デュラハンとは
アイルランドに伝わる首の無い女の妖精である
――――(出典)ウィキプディア
その日もいつものように帝人は友人のもとに遊びに来ていた。
学校が終わるとどこにも寄らずに此処に来る帝人は当たり前だが制服に身を包んでいる。
そんな彼女は開口一番。
「正臣ったら酷いんですよ!!」
ポンポンと頭から湯気を出しながら怒っていた。
そんな帝人を迎えたセルティは意味の分からない現状に首を傾げるしかできない。
帝人の幼馴染である紀田正臣は口から先に生まれた様な性格の持ち主で大体において帝人の不興を買うのはその口のせい。
また彼が妙な事を言い出したんだな。
そう判じながらもセルティは何も語らずに帝人をソファーへと誘う。
「もう信じられない!!!」
怒りのせいで帝人の所作はいささか乱暴だが、ソファーに腰掛ける時はスカートに皺ができないように気をつけている。
座るときだけ丁寧な動きをしたけれど、座った途端に怒りを再び露わにする。
『…一体どうしたんだ』
首がないセルティは声を出す事ができない為、PDAに文字を入力しなければ意思の疎通をとる事ができなかった。
けれど、怒り心頭の帝人はPDAにも目を向けない。
PDAを帝人の目の前でこれ見よがしに振り回しても結果は同じ、帝人は画面に目を向ける事もせずに幼馴染の紀田正臣に怒り続けていた。
こうなってはセルティに出来る事は殆どない。
コミュニケーションを取る手だてが見あたらないのだ。
だから
セルティは帝人の華奢な体を抱き締めた。
制服に包まれた体はほっそりとしていたが、少女特有の柔らかさを持っていて、実際、セルティは帝人を抱き締めるのが大好きだった。
もちろん、今回のハグは下心がどうとかいうものではなく、帝人を落ち着かせる為。
軽く背中を叩いてやれば、帝人は徐々におとなしくなってゆく。
帝人が充分に落ち着いたのを待って、セルティは帝人から離れた。
『大丈夫か』
「あ…はい」
自分の醜態を思い出したのか頬を赤らめ、帝人は照れ笑いを浮かべる。その笑顔はすぐに申し訳なさそうな顔に取って代わられる訳だが。
「ごめんなさい」
『帝人が落ち着いたならいいんだ』
頭を軽く撫でれば、すぐに嬉しそうな顔になる。
自分に表情がないセルティにとって、コロコロと変わる帝人の表情は何とも好ましいもの。いろんな顔が見たい。そう思っても一番見たい表情は笑顔で、帝人の笑顔にセルティはほかほかとした温かい気持ちになる。
『それでどうしたんだ』
セルティの問いに帝人の表情は強張る。再びの怒りに、握り締めた両手に力が篭もった。
「正臣が」
プルプルと怒りに打ち震えながら、帝人は叫んだ。
「園原さんサイズにしてやるから揉ませろって!!!!!」
居たたまれない理由にセルティは沈黙を守るしかなかった。
実際、帝人の胸はつるぺたというのに相応しいサイズ。
Aサイズのブラジャーにも隙間が出来てしまう。という事実をセルティは知らなかったが、帝人がバストサイズにコンプレックスを抱いている事は知っていた。
コンプレックスを刺激するセクハラ発言。
帝人が怒るのも無理がない。
「この気持ち、セルティさんなら分かってくれますよね!!?」
『いや…』
「わからないとは言わせませんよ」
想像はつくけれど、流石に分からない。
そう告げる前に帝人の口から信じられない言葉が出る。
「だってセルティさん、Aも無いじゃないですか」
『はぃ…?』
しかも、
ペタリ
と帝人はセルティの扁平な胸に両手を当てる。
予想の斜め上を行く暴挙に流石のセルティもポカンと真剣な顔の帝人を見つめる。
「ごめんなさい」
血の気の失せた顔で帝人は謝罪を口にする。
意味が分からなさすぎる。
「A−もなかったなんて…」
帝人の目の端に浮かぶ光は涙か何かだろうか。
『ある訳ないだろ!!?』
「そんな自虐的にならないて下さい!!…大丈夫です。バストアップの為の運動だってありますから!!!」
『帝人…何を言ってるんだ』
「諦めちゃダメです」
グッと両手を握り締め、帝人は力強く言う。
「一緒に頑張りましょう」
目を輝かせる帝人の勢いに危うく頷きかけ、セルティは我に返った。
『私は男だ!!胸なんてある訳が』
「え…だってセルティさん。デュラハンなんですよね」
パチパチと瞬きしながら訊ねてくる帝人にセルティは大きく頷く。
「なら女の人じゃないですか。変な冗談言わないでくださいよ」
やだなー
セルティさんったらー
ケラケラ笑う帝人。
デュラハン=女の妖精
という公式が帝人の中で完成してしまっているという事実にセルティはウィキプディアを心の底から呪いながら、PDAに指を走らせた。
『帝人。残念ながら私は男だ。確かに私は記憶はないが、体を見れば男か女かの違いが分かる程度の記憶はあるぞ』
「……」
これで信じてくれなかったら証拠を見せるしかないのだろうか。
あまりにも変態的な行為になり兼ねない展開にセルティはうち震えた。
「………」
ジーッと見つめてくる帝人の視線が痛い。
疑いの眼というか思い詰めた様な目にセルティは首を傾ける。
『帝人?』
「セルティさんが男の人…」
ポツリと呟いた帝人は見る見るうちに顔を真っ赤にさせてしまう。
「じゃあ僕は今まで男の人と抱き合ったりしてたんですか!!!?」
『!!!!』
信じてくれたものの73°ほど歪んだ方向に帝人は叫ぶ。
「そんな…僕………どうしたら」
『み、帝人』
西洋人的フランクさでハグをしていただけのセルティにしてみたら帝人の初すぎる反応は対処のしようがない。
「だって僕…」
今にも泣き出しそうな帝人にセルティはオタオタし続ける。
「男の人と手を繋いだ事もないのに」
潤んだ目で見つめられたセルティは石化する。
もともと幼さを感じさせる可愛らしさを持つ帝人の涙目&上目遣い。帝人に友人以上の感情を抱いているセルティにとって破壊力がありすぎた。
それでも何か言わなければとPDAを手にしたセルティ。
『すまない』
謝罪の言葉を書いても帝人の表情は変わらない。
『気持ち…悪かったか』
画面を帝人に見せてからセルティは後悔した。
もし「気持ち悪い」と言われたら生きていけない。と悲壮な覚悟をしていたセルティは目を丸くして画面を見やる帝人を見守るしかできない。
「気持ち…悪くなかったです」
蚊が鳴く様な消え入りそうな声で呟くと、帝人はバッと顔を背けてしまう。
『え…』
流れ的に拒絶されるとばかり思っていたセルティは帝人からの言葉の意味を計りかね、けれど拒絶されていない事を理解すると嬉しそうにPDAに指を踊らせた。
『帝人!!!!』
「べ…別にセルティさんにくっつかれると嬉しいとかじゃないんですから」
顔を真っ赤にしたままでは、ただのツンデレにしかならない。
『帝人〜!!!!!』
勢い余って、再度抱き付いたセルティは腕の中で硬直した帝人に気づくと慌てて離れた。
『すまない。思わず。気をつける』
「……セ、セルティさんならいいですよ」
もしセルティに頭があったら即座に鼻血を噴いていただろう。頬を染めた帝人は自分からセルティの手に触れ、愛しそうに両手で握り締めた。
「僕…セルティさんと一緒にいたいをです。それに…セルティさんが男の人でも、触られるの嫌じゃないです」
『帝人…』
握り締められていない片手で、帝人の頬を撫で、コツンと額にヘルメットを寄せる。
『そんな事を言われると調子に乗るぞ』
「乗って下さい」
ふにゃりとした嬉しそうな笑顔を浮かべた帝人をセルティは片手で抱き寄せた。
――――――――――――――――
セル帝!!!
デュラハンだから女の人だよなーと思いこんでいた帝人ちゃん
おっぱいのサイズに悩むお年頃です
そして僕っ娘
来夏様
大変お待たせ致しましたーm(_ _)m
お待たせした挙げ句、ベタかつ低クオリティーなもので申し訳ございませんですm(_ _)m
[2010/7/1.Up]
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