企画
だってカミサマだもん(オリジ:雪姫様リク)
ジリジリと照りつける太陽。
じんわりと吹き出る汗は玉の様になって頬を伝い、顎から地面へと落下してゆく。
「熱…」
白髪の男、ヴァイスは額を拭い、力なく呟いた。
日の光に、鬱陶しそうに目を眇めた彼の睫毛までにも汗がたまり、時折アイスブルーの瞳の中に転がってゆく。
その度に瞬きをし、湿度120%の腕で目元を拭う。
そんな彼の手にはシャベルが一本。
近くにはネコ。
(当然、動物の猫ではなく掘った土を運ぶアレだ)
そう、彼はこの灼熱地獄の中、穴を掘っていた。
貧乏なせいで充分な水分を用意できなかったヴァイスは滝の様に流れる汗を舐めるしか脱水症状から逃れる術はなかった。
まだ汗が出るから俺は生きてる。
そう判るだけでも汗は貴重な存在でもあるのだが、いずれこの汗も流れなくなるといった未来は程なく訪れるだろう。
そんなこの世の地獄に彼が居る羽目になった理由はほんの数時間前に遡る。
簡潔に言えば、暗殺法が適用された犯罪者が全く見つからず、逃げ続けたせいだ。
残り5日になってシックザールシステムによる全世界的な探索の結果、その犯罪者は南の果ての島。世界が水没する前にはベトナムと呼ばれていた地に居ると分かった。
そして、その地下300Mに潜んでいると…
けれど
『生体反応がないんだよねぇ』
シックザールシステムがそう判じた通り、その犯罪者は既に死亡しており、地中深くに埋められていたのだ。
暗殺法が適用されるずっと前に殺されて、なのに死亡を確認される事なく今までいたらしい。
それでも死亡をきちんと確認しなければならないと堀り起こしが命じられたのだ。
ちなみに
「せんぱーい。まだぁ?」
木陰で寝ころび、喚くレイも同じ任務に就いてる筈なのだが、早々にさぼり始めていた。
そんなレイに文句を言う体力も残っていないヴァイスは黙々と穴を掘る。
シックザールシステムによる正確な位置情報が無ければ、ヴァイスだってこの仕事を投げ出していただろう。
位置情報があるから掘る穴は一つで済むのだから。
そして、ヴァイスはシャベルを地面に振り下ろし続けた。
「ぷぷぷ」
瞳を閉じたまま気色悪い笑い声を出す子供が一人。
至極おもしろいものを見つけてしまったかの様に無邪気に笑い続けている。
「シックザール」
「シー君だよ」
「シックザール」
感情を見せない声に子供を目を開け、目の前に立つ男を見上げた。
「もう、僕の事はシー君って言ってよ!!!!それで、なぁに?」
「例の件ですが」
「聞かないよ」
「……シックザールシステムに死者の管理が出来ない訳がないと思ったので調べたのですが」
「だから聞かないってば」
「なぜ、わざわざ貴方が死を偽装して生きている様に見せかけたのですか」
これが証拠です。とか行ってマイクロチップまで出してきたオルドヌングに少年は深々と、けれど態とらしい溜息を吐いてみせた。
「面白いからに決まってるじゃない」
あんまりな断言に流石のオルドヌングも言葉を失い、仕えるべき子供の酷い趣味に憤りさえ抱いた。
そんな事お構いなしに少年は言葉を続ける。
「ホラ、見てよ。ヴァイスったらもう500Mは掘ってるみたい。あんな所に死体なんてないのにね!!!!」
ケラケラと笑うシックザールシステムのインターフェイス。
彼が空中に投射した映像の中のヴァイスは今にも死にそうな顔で地面を掘っていた。
いつしか流れ落ちる汗の量は少なくなってきている。
「もう止めさせます」
「あそこの地域、変な磁場があって通信できないみたいだから止めたいなら自分でそこに行ってね〜」
ヒラヒラと手を振るシックザールを背にオルドヌングは少年の部屋から出て行く。
シックザールを罵る事をしないのは、そうしている間にヴァイスが死に近づくと理解しているからだろう。
「行ってらっしゃーい」
扉が閉まるまで手を振っていた少年は、オルドヌングの気配がどこかへ行ったのを確認してから彼はいそいそと着替えはじめ、シックザールシステムをオートに切り替えた。
「よーし!!!お目付役も居なくなったし遊びに行くぞー♪」
機械だってたまには休暇ぐらい欲しいのだ。
その為に誰かを生贄の羊にしたっていいよね
だって僕、カミサマだもん♪
――――――――――――――――
雪姫様リク
不運なヴァイスとハッピーなシー君
色々とぼやかして書くのって難しいです(笑)
またしてもリク内容に合ってない感じで申し訳ないですm(_ _)m
ヴァイスの不幸な一日って毎日毎日不幸続きの彼だし
シー君のハッピーな一日ってシー君機械だからハッピーもアンハッピーも通常ないし
どうしようか
と悩んだ末にこんな感じに
いつも働き詰めのシー君に休暇をあげようかと
オルさんを追い出す為にヴァイス使うとか…別にオル×ヴァイとかじゃないですって主張しておきます
[2010/5/23.Up]
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