企画
ある昼下がり(正帝:ろめ子様リク)
「あ」
カラン
卵焼きの刺さったお箸が床に転がる。
今月は少し懐具合がいいからと買ったコンビニ弁当。その中でも好物な甘い卵焼きが屋上の床に転がっている。
そんな悲しすぎる光景に帝人は両の拳を握りしめた。
「…紀田君」
氷点下な帝人の声。
「あ、ああ…」
呼び掛けられた紀田正臣は僅かにビビりながら返事をする。
帝人が卵焼きを好きな事も
その卵焼きが床に落ちたのは帝人に飛びついた自分のせいだとも
知っている。
「屋上から落ちてよ」
いつもにも増して辛辣というか酷すぎるコメントを口にする帝人の目は全く笑っていない。
(こ、こぇぇぇぇっ!!!!!)
心の中で悲鳴を上げながらも正臣はぎこちない笑顔を浮かべ、必死で弁解しようと頭をフル回転させても今の帝人を納得させる言葉が出てこない。
弁当のひよこ豆を一粒ずつチマチマと食べる帝人の可愛らしい所作に感極まって「帝人ぉ〜お前ウサギみたいだなぁ〜」なんと頭の悪い事を叫んで抱きついたのが始まり。
当然、帝人ってウサチャンみたく可愛いと正臣は毎日思っているし、気の迷いなんかじゃない。けれど、抱きついたのは衝動。
そして、彼はウサギという生き物が可愛い一方でかなり凶暴だという事実を失念していた。
なにはともあれ、嫌がって暴れた帝人が抵抗をあきらめ、ランチを再開し、卵焼きをグサリと差した瞬間に頬擦りなんてしてしまったものだから卵焼きは床に落ちた。
落ちてしまった。
そうして、さっきの台詞に結びついたのだ。
「可愛い」
「は?」
「怒ってても可愛いなんて帝人ってば誘い受けスキル高すぎだぜっ」
意味不明の発言を始める正臣は気色悪そうに見た帝人は目が穢れると言わんばかりに目を逸らし、床に落ちた卵焼きを見つめる。
洗えば大丈夫だよね。
とか思いながら箸に手を伸ばせば
「み〜か〜どっ」
「何、紀田君」
流石に鬱陶しい正臣を軽く睨み帝人は顔を上げる。
ムギュ
強引に口の中に押し込められたのは甘い味。
「ん」
「美味しい?」
咀嚼すれば甘い卵の味が口に広がる。よく見れば正臣の弁当から卵焼きが一つ消えている。
「うん」
「だろー紀田正臣特製卵焼きはスペクタクルデリシャスな」
「コンビニ弁当だよね」
正臣の台詞に完全に被せた帝人は口の中の卵を飲み込み、幸せそうに頬を染めた。
「もう一個食べるよな!!!」
最後の卵焼きを箸で掴み、正臣は帝人の口元に運ぶ。
「どうせくれるなら普通に食べさせてよ」
「だって帝人の箸、床に転がってるじゃん。ホラ、あーん」
「確かにそうだけど…」
「それとも口移し希望!!!?この紀田正臣様が濃厚なキスと共にこの卵焼きを」
パク
正臣がよく分からない事を言っている間に帝人は正臣の箸の先にあった卵焼きをパクリと口にした。
あんまりにも可愛い仕草に正臣は顔を真っ赤にしながら、自分の弁当のメインディッシュ。エビフライを箸で挟んだ。
「箸が無くなっちゃった帝人の為に今日は食べさせてやるからなー」
「え…」
「はい、あーん」
「いや、普通に箸洗ってくるし」
「はい、あーん」
満面の笑みでエビフライを自分に向けてくる正臣に帝人は負けた。
「…………頂きます」
――――――――――――――――――
帝人が大好きすぎる正臣で正帝
あんまり大好きすぎる的な表現が出来なかったよーな感じで申し訳ないですm(_ _)m
まともで幸せそうな正帝を書いたのって初めてじゃないかと思いますwww
[2010/05/01.Up]
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