企画
おお、ろっちー。どうして貴方はろっちーなの(六帝)
ダラーズとTO羅丸
先日の抗争以来、二つの集団は冷戦状況になっていた。
ただ、ルールも集団意識もないダラーズという組織の人員の殆どが事件を気にもとめずに日常を送っているのも事実。
そこがダラーズがダラーズであるが故の特徴だとTO羅丸が理解し、埼玉に戻っているからこその平穏でもあった。
ただ、TO羅丸の連中がダラーズのした事を心の底で未だ恨んでいるという事。
事件に関わったダラーズの一部が制御のない組織に頭を抱えているという事。
その二つはれっきとした事実として埼玉と東京の狭間に横たわっていた。
「よ、ハニー」
「…六条さん何の用ですか。それに僕、いつから六条さんのハニーの仲間入りしたんですか」
「相変わらず手っ厳しいな」
カラカラと笑いながら帝人の目の前に居る伊達男は今まで座っていたガードレールから腰を上げ、徐々に歩み寄ってくる。
「そんな所もお前の魅力だけどな」
歯が浮くような台詞に帝人は微妙な顔をする。
目の前に居る男が呼吸するのと同じ位の感覚で甘い台詞を吐く癖がある事を知っていたし、
そもそも此処は通学路なのだ。
通り過ぎる来良生にチラチラと好奇の目で見られるのは非常に迷惑。
「まずお前が俺のハニーだっていうのは前世から」
ドン引きした帝人に千影は流石に言い過ぎたかった頬を掻いた。
「冗談が過ぎたな。まだハニーじゃねぇって事は認めておくとするさ」
「将来的にもならないと思いますよ」
「そんなのわかんねぇじゃないか。未来に限界を作っちゃダメだ」
格好良い台詞ではあるが引き気味の帝人にはあまり効果はなく、帝人の目はますます困った人を見る目になってくる。
「で、用ってのはだな」
千景はあたりに人通りが多い事を嫌ったのか帝人の手首を掴んだ。
「お前ん家で話す」
今までのチャラさが抜けた千景の言葉に帝人は緊張気味に頷いた。
並んで歩く帝人と千景。
二人の間に会話はなく。ただ行き先が同じ他人の様な空気を垂れ流していた。
それでも、二人の裏の顔を知る者が居たら、目を剥くかもしれない。
冷戦状態のダラーズとTO羅丸のリーダーが一緒に歩いているのだから。
そして、帝人の放つ緊張感に二大勢力の頭同士の話し合い。と勘違いする者も居るかもしれない。
けれど
小汚い帝人のアパートに入り、扉が閉められた途端、帝人は千景に抱き付いた。
「ほんってお前は恥ずかしがり屋だな。ハニー」
「ハニーじゃないです」
と言いながら、帝人は千景に抱き付く腕に力を込める。
そんな素直ではない帝人の頭を見ながら千景は嬉しそうに笑う。
「帝人」
殊更に甘い声で囁けば、帝人の耳は真っ赤に染まる。
「顔見せて」
「ヤです」
グイグイと胸板に顔を押し付ける帝人の可愛らしい抵抗に千景は帝人を抱き締め返した。
「ホンット可愛いよ」
「可愛いなんて言われても嬉しくありません」
「じゃあ玄関でいきなり抱きつくのは止めよっか」
「ヤです」
何、この可愛い生き物!!!
益々嬉しくなった千景は帝人の頭に頬摺りをし始める。
「な、何するんですか!!!??」
「愛情表現」
「っ…!!!!!」
恥ずかしくなったのか帝人は千景から突き飛ばすみたいに離れるとさっさと靴を脱いでしまう。
「帝人」
「何ですか」
「上がっていい?」
「…勝手にして下さい」
背中を向けたままの帝人のとてつもない破壊力に「うっ」と小さく呟きながら、千景はボロい畳に足を踏み入れた。
簡素な部屋だ。
調度品は殆どない此処は昭和の貧乏学生を思わせる。けれどパソコンだけは最新のもの。
主な活動場がネット上であるダラーズのリーダーらしい。
部屋に対してそんな感想を抱いた千景は小さな部屋の真ん中で体育座りをする帝人の背中に笑いかけた。
「帝人」
名を呼べばピクリと肩を震わせる様子が愛しくて愛しくて、千景は後ろから帝人に抱き付いた。
「ハッピーバースデイ」
「…知ってたんですか」
「ハニーの事はなんでも知ってるぜ」
その実、かなり必死で情報を集めた千景の努力はふざけた口調のせいで全く帝人には伝わっていない。
それでもいいと彼は思っていた。
素直になれない帝人を困らせるだけだと知っていたから。
「プレゼント何がいい?」
この質問だって本当はしなくて良かった。
きちんと用意しているし、店も予約を取っている。
「要らないです」
抱き締められたままの帝人の返事に「やっぱり」と思い、千景は帝人の頭を撫でた。
「何言ってもいいのに」
「だって無理ですから」
「俺がハニーのお願いは何でも応える男だって知ってるだろ」
「………そうですね」
「だから言いな。誕生日は思いっきり我が儘になるもんだ」
「じゃあ」
今まで俯いていた帝人はスッと顔を上げ、自分の体に回された千景の手を握る。
「六条千景を下さい。TO羅丸のリーダーじゃない六条さんを」
無理な話だった。
一度集団の頭となってしまえば全てのしがらみから抜け出す事はできない。
「できっこないですよね。僕もダラーズを手放すなんて出来ないですから」
自嘲気味に笑う帝人を抱き締めながら、千景は携帯の電源をオフにしてそれを投げ捨てた。
「今日一日は何があってもお前だけの為に存在する。だから帝人も」
「………はい」
携帯の電源を切った帝人は千景に体を預ける様に寄りかかった。
――――――――――――――――
六帝ー
極度のツンデレ帝人を目指してみました(笑)
人がいる前では自分たちの所属している集団とか、一般常識とか気になっちゃうのです
生真面目なんですね
それを知ってるろっちーもごり押しできず…
やっぱりダラーズのリーダーに恋しちゃったことがTO羅丸メンバーに対して負い目を感じてる
というのを目指したんですが………
不発に終わりました(´・ω・`)
[2010/3/21 Up]
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