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企画
決戦は14日:2/8朝(青帝杏)

「せんぱーい!!!!!!」

元気いっぱいの後輩の呼び声に帝人は足を止め、振り返った。
思いっきり「邪魔」と言いたげな帝人の表情にもめげず、青葉は突進するかの様な勢いで帝人と杏里の間に割って入る。

「おはようございまっす!!!」

朝からハイテンションな青葉に杏里はクスリと小さく笑う。
それを見た帝人が可哀想な位に慌て始めるのはご愛敬。

「おはよう。黒沼君」

柔らかい杏里の声が青葉の名を呼ぶだけで帝人は露骨に不機嫌になるが、その不機嫌さをすぐに隠して帝人も笑顔を見せた。

「相変わらず元気だね」

朝っぱらから騒々しい。
帝人の裏の声をきちんと聞き取った青葉はそれを完全にスルーする。

「帝人先輩を見ればいつでも元気になれます!!!」

「何ソレ」

「えー帝人先輩は俺の元気の元だって前から言ってるじゃないですか」

「初耳なんだけど」

「ふふ」

帝人と青葉が掛け合い漫才をしているのを見ていた杏里は楽しそうに笑う。

「二人ともとっても仲が良いんですね」

「はい!!」「園原さんそれ誤解だよ!!!!!」

青葉と帝人の声が完全に重なると杏里はやはり楽しそうに笑う。
優しいその笑顔に帝人は最終的には否定するのを止めた。
杏里が楽しそうなら別に何でも構わないのだ。

そんな帝人の態度に青葉は少し不満そうな顔をする。
あまりにも露骨ではないか。

「ほんって帝人先輩って杏里先輩が好きですよね」

「わー!!!!!!」

慌てて帝人が青葉の声をかき消そうと叫んでも言葉の殆どは杏里の耳に届いてしまう。

「だって、同じクラス委員だもの」

友達とも言ってくれない杏里に帝人はヘニャリと泣きそうに顔を歪めた。

「杏里先ぱーい。一緒に登校するのって友達じゃないですか」

青葉のフォローに杏里は眼鏡の奥の瞳をしばたたかせた。

「そうですね」

しばしの逡巡の後、花が綻ぶ様な笑顔を見せる杏里。
それだけで帝人の機嫌が良くなるならば、お手軽なもの。
帝人の心をサッカーボールみたくあちこちに転がしまくった青葉は少し満足気に笑っている。


「そーいえば」

青葉はふと思い出した様に口を開いた。

「帝人先輩チョコ下さい!!!」

目を輝かせる青葉。

「チョコ?」

先日のやりとりを知らない杏里に青葉はあることないこと吹き込んでゆく。

「帝人先輩がバレンタインにチョコくれるって言うんです」

「君が無理矢理約束させただけじゃない…」

「可愛い後輩にくれるって言いましたよ!!!」

断じて言っていない。
これっぽっちも言っていない。

「私…チョコ好きなんです」

青葉を怒鳴りつけてでも黙らせようとした帝人だったが、恥ずかしそうに頬を染めて告げた杏里の言葉に慌てて鞄の中を漁る。

「そ…園原さん!!!コレ!!!」

鞄の中から目当てのチ○ルチョコを取り出した帝人は杏里にその大袋を突き付ける。

「でも」

困惑した様子で帝人とチョコと青葉を見る杏里。
彼女の表情から気掛かりな事を察した帝人は大袋の中から一掴みチョコを取り出すと青葉に押し付けた。

「青葉君もこれ位でいいみたい。僕もこれ貰った物だしいっばいあるから、園原さんにも食べて欲しい」

頬を赤く染めながら一世一代の告白をした帝人だったが…

「ありがとうございます」

杏里には余り伝わらず、彼女は袋の中の僅かな量を手にしただけ。

「せんぱーいかなり早い逆チョコですかぁ」

「ち、違っ!!!!」

からかってくる青葉に慌てて帝人が反応する。
端から見れば本当に仲が良さそうで、杏里は二人を止める事なく、けれど二人と同じ歩調で進んでゆく。

「隠さないでいいですから」

「だから違うって!!!!」

騒ぐ二人を見ていた杏里はふと思う。
紀田正臣の事を…

竜ヶ峰君は気付いているのだろうか
紀田正臣が居ない世界に慣れつつある自分自身に

「私は…慣れてしまったんです」

目の前で騒ぐ竜ヶ峰君も私と同じなのだろうか
それとも心の空白を何かで誤魔化しているだけなのだろうか

そう思うと胸がツキンと痛んだ。


「どうしたの園原さん」

様子のオカシイ杏里に気付いた帝人に声を掛けられ、彼女は穏やかに微笑んだ。

「なんでもないです」

「帝人先輩!!!俺の話無視しないで下さいよ!!!!」

青葉に引っ張られる帝人を見つめながら杏里は微笑みを消した。



私はただ、紀田君を待つ竜ヶ峰君の傍に居るだけでいい。
居られるだけでいい。

「だから…帰ってこないで。永遠に」

そうすれば私は竜ヶ峰君とずっと一緒にいられるでしょ?
私たちは紀田君が戻るのを待つたった二人の仲間なんですもの。


バレンタイン当日にチョコをくれ。とか強請っている青葉を拒絶する帝人をジッと見つめる杏里に誰も気付かない。

「愛してる」

罪歌の言葉を理解できてしまう位に

受け取ったチョコを握り締めながら杏里はうっすらとした笑みを浮かべていた。


――――――――――――――
杏里怖いよぉぉぉぉぉ(笑)

ほのぼのとした帝杏+邪魔する青葉を書こうとしたら
むしろ杏帝!!!!
しかも病んでるですね(-_-;)

いったい何があったらこんな事に





[2010/2/13 Up]

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