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企画
閉ざされた世界(ガン種:イザーク×フレイ#暗)
クリスマスとは元来キリストとは無関係な太陽崇拝の祭りであり、何にせよ宗教的意味合いを持つ日なのだ。

だからこそなのかもしれない
彼は現在の状況に怒りを抑えるのが難しくなっている。

バカみたいなクリスマスソングがたれ流される艦内。
戦時中にも憩いを、とか言う提案の元、クリスマスパーティーの準備が進められているらしい。
本来的意味を無視したバカ騒ぎ。

全くもってクダラナイ。

彼はそう言って鼻で笑った。


【閉ざされた世界】



そんな浮かれた艦内を彼、イザーク・ジュールは背筋をしゃんと伸ばして歩いていた。
その手には食事の乗ったトレイ。
現在、彼に与えられた仕事は捕虜の給仕。
クルーゼ隊長いわく「戦争を終わらせる鍵」である女に食事を与える事である。

その仕事も気に入らない。
何故、赤服の自分がこんな仕事を…
という不満と
ただのナチュラルの女を傍に置く隊長の真意が分からないという疑問。
全ての事が彼を苛立たせていた。


陽気なクリスマスソングを背に彼は一人きり、トレイを持ち歩いてゆく。
人気のないそこに"彼女"の部屋はあった。



シュン
と圧搾された空気が解放される音を立て、銀色の扉が開かれる。
部屋の中は暗い。

「電気くらい付けたらどうだ」

溜息混じりに言うイザークに対する反応は皆無。
それもいつもの事。

"彼女"の返事が来た事など皆無だ。

「風呂には入ったのか?」

我ながら女に訊ねる質問ではないと理解しながらも"彼女"は毎日毎日ただ椅子に座っているだけなのだ。
だが、そういう意味では質問する理由などある訳はなかった。
"彼女"はただなにもせずに座っているだけなのだから。
シャワーを浴びている筈もない。

「食事を持ってきた。食べ終わったらシャワーでも浴びるんだな」

それでも話しかけるのは返事を期待しているからではない。
世話を隊長から任されたからでもない。
ただ"彼女"の耳に言葉を投げかけると時折その声に応えてくれるのだ。
それはまばたきであったり、吐息であったり…

電気を点け、部屋の中央に視線をやればそこにはいつもの様に"彼女"が座っている。
簡素なパイプ椅子とスチールの机。
もしこの女が此処に連れてこられなければ、縁など無かったのではないか、と思う様な本人と簡素な家具のアンバランスさ。

なぜ隊長はこの女を連れてきたのだ。

何度も思い、何度も封じ込めた疑念が惨めな"彼女"を見る度に湧き上がる。
隊長の言う戦争を終わらせる鍵の意味が分からない。
何の力もないただの女ではないか。

机の上に湯気を立てる食事を置いても、女は反応を返さない。

「きちんと食べろ」

隊長を疑いつつある自分に嫌気がさす。
イザークは逃げる様に彼女の部屋から立ち去ろうと扉を開けた。

「音…」

だが、"彼女"がぽつりと呟いた言葉に足を止めた。
ほっそりとした静かで優しい声だった。

廊下に響きわたるのはクリスマスキャロル。

「クリスマスにはいつもパパが居てくれたわ」

まるでナイフで突き刺されたかの様な言葉。
彼女の父親を殺したのは自分達だとイザークは既に知っていた。
そして、"彼女"にはもう家族はない。

「帰りが遅いパパが夕方には帰ってきてくれるの」

遠い過去を思い出す"彼女"の顔には薄い笑顔。

止めてくれ。
"彼女"が語る言葉は常に過去ばかり。捕虜である"彼女"に未来を語る事など難しいとは理解している。
それでも聞くに耐えなかった。

自分達が何をしているのか思い知らされてしまうから。

「パパを返して」

俺達は大勢のナチュラルを殺してきた。そしてその分の悲しみを生み出してきた。

「パパを返して…」

それはお互い様ではある。
何しろ自分達コーディネーターと彼女たちナチュラルは戦争をしているのだ。
頭では致し方ないと割り切れても圧倒的弱者として存在する目の前の女の言葉に胸を抉られる。

陽気なクリスマスソングが流れる中、"彼女"は呟いた。

「せめて私を殺して」

涙を流す"彼女"は虚空を見つめたまま静かにそう呟いた。


「あとで取りにくる」

暗にちゃんと食事をしろ。と告げたイザークは哀れな少女から逃げる様にその場から立ち去った。


シュン

とあらゆる空気をしまい込む音を立て扉が閉められる。


艦内はあちこちが飾られ、光り、そして笑顔が溢れている。
そんな世界から少女は追い出され、そして二度と帰れない。

恐らく彼女はかつて穢れも知らずに笑顔で明るい世界に居ただろうに…

「もし…」

冷たい扉にもたれ掛かりながらイザークは呟いた。

「もし戦争が終わったらお前は笑えるのか」

仲間の元に戻る事が出来たのなら、こんな世界が浮かれる日に死を願う事はなくなるのか?


考えても仕方のない夢想を頭から振り払う様に頭を左右に振ってからイザークは歩き出した。


少女を冷たい世界に閉じこめたまま


――――――――――――――――
くっらーい(笑)
ガンダム種のイザーク×フレイであります
捕虜生活中病んじゃったフレイであります

フレイ大好きすぎる
なんでこの娘はこんなにも可愛いのかヽ(≧▽≦)/

イザフレ好きすぎる
むしろこの感じで長編書きたいくらいです( ´艸`)
隊長の命令に疑問を抱きつつも命令に反することは出来なくて悶々とすればいいのさイザーク!!!!








[2009/12/20 Up]

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