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企画
決戦は14日:2/6夕方(六帝)

「全く、あの人たちは…」

ブツブツと文句を言いながら駅へと向かう帝人。
相変わらず足は自宅へと向かわないのは本能的な恐怖のせいだ。

「あ!!!あの子!!!」

そんな帝人はいきなり掛けられた声に顔を上げ、足を止めた。

「久しぶりー」

甘えた様な少女の声に帝人はあちこち見回すが自分に声を掛けてくる相手が確認できなかった。
そもそも声に聞き覚えがなかったので、気のせいという判断を下し帝人は再び歩き始め…

「無視って酷いよ!!!」

いきなり服の袖を引っ張られた。

「うわっ」

余りにも突然の事に帝人は躓き掛けるがなんとか転ぶという醜態を晒す事だけは避けた。

「な、何するんですか」

振り返れば見たことのある顔が
そして、心に痛みを感じる顔でもあった。

「ろっちー!!ろっちー!!!」

楽しそうに少女は帝人の袖を掴んだまま近くの女性の塊に話し掛ける。

「あ、どうしたノン」

女性の群から顔を出したのは六条千景。
その姿を見た帝人はますます渋い顔をした。
そして六条も帝人を見て目を丸くした。

「お前…あの時の」

ペコリと頭を下げた帝人を見てほかの女性たちも騒ぎ始める。

「何ーこの可愛い子ー」
「ろっちー男の子にも手ぇ出したのぉ」

「ちげぇよ」

カラカラと笑いながら彼は女性達に帝人を紹介した。

「ノンがヤベェ時に助けてくれた奴だ」

彼女を危険な目に合わせた原因だという事も
結局何も出来なかった事にも
触れずに六条は話し続ける。

「いい奴だろ」

違う。
そう否定する前に六条は帝人の頭に何故か手を置いた。

「そういう話はするなよ」

コソッと釘を差された帝人は小さく頷く。
あとで聞いた話なのだが、この六条千景という男は女性が"そういう"事柄に関わる事を非常に嫌うらしい。
自分が園原杏里に抱く感情を拡大した様なものと理解していた帝人は大人しく彼の主義に合わせた。

「ろっちー。私たちもう帰るから!!!!」

女性の誰かが口を開けば皆が「バイバイ」だとか「またねー」とか言い出す。

「ああ、気をつけて帰れよ。絶対に一人になるんじゃ」
「ろっちーったらクドいよぉ」

キャッキャッと笑いながら六条千景のハニー達はゾロゾロと連れ立って去ってゆく。

「よく喧嘩になりませんね」

歪な恋人たちを見ていた帝人はふと思いついた事を口にする。

「ハニー達?」

六条は自信満々に答えた。

「全員を平等に愛してるからな」

「…六条さんはすごいですね」

「ん」

「僕は…」

杏里とマトモに話せない自分を思い、帝人は溜息を吐いた。

「まぁ人それぞれだろ。奥手は奥手で魅力あると思うぜ」

ニカッと笑いながらフォローしてくる六条に帝人は小さく笑った。
彼のこういう所に人は惹かれるのかもしれない。

「それはそうとお前、何で俺の名前知ってんだよ」

「この間、門田さんから聞いたんです」

「門田京平か!!」

嬉しそうな声を上げる六条は何かに気付いたのか帝人を見据える。

「お前、まだダラーズに関わってんのかよ」

あれだけ忠告したじゃねぇか。と告げてくる六条に帝人は頷く。

「僕が作ったものです。僕が元の姿に戻します」

決意。と呼ぶには無謀な意志。
巨大になった組織を立て直す事は至難。

「……そうか」

六条は後戻りする道を絶った帝人の決意に沈鬱な顔をしてからすぐにワシャワシャと帝人の頭を撫でる。

「もし困った事があったら相談くらい乗ってやっから」

「ありがとうございます」

「そういや名前まだ聞いてねぇな」

「そうでした。僕、竜ヶ峰帝人っていいます」

この池袋に来てから何度自己紹介をしただろうか。などと思いながら笑顔を浮かべ、帝人は名乗った。
もう名乗るのに慣れてしまってかつての様に変な名前じゃないかと怯える事もない。

「っ!!!」

そんな帝人に息を殺した六条は自身の動揺を気取られぬ様に努めて愛想良く笑い返した。

「帝人だな。今度埼玉にも来いよ。お前なら歓迎するぜ」

女性を口説く様な甘い言葉に帝人は少しばかり頬を染める。

「来週の日曜とか空いてっからさ」

「来週の日曜って…」

途端に帝人はげんなりした声を上げた。

「バレンタインじゃないですか」

「ああ。何かあんのか?」

「……いえ…ちょっとしたストーカーみたいな人が居まして」

「ストーカー!!?お前!!そりゃヤベェって」

「大丈夫です…大丈夫………」

「…全然大丈夫そうじゃねぇぞ」

「それよりも六条さんはバレンタイン忙しくないんですか?」

「ああ、ハニー達とのデートはバレンタインは無しだ。TO羅丸の集会があっからよ」

「へぇ」

話題を無理に変えた自分に付き合ってくれる六条に感謝しつつ、帝人はバレンタインにデートをしない六条に疑問を抱いていた。
バレンタインデートって定番なのでは…

「この日ばっかりはハニー達も二人きりが良いって言うからさ」

誰かを特別扱いはできない。
と主張する六条の変な主義に首を傾げながらも帝人は深く追求しなかった。

二人が立ち話を延々としていた間にいつの間にか日も暮れ、辺りは闇が支配し始めている。

「そろそろ帰った方がいいんじゃねぇか」

「そうですね」

まだ家に変態が居たらどうしようか。
不安にかられる帝人に気が付いた六条は優しく肩を叩いた。

「なんなら送っていってやろうか」

「ぇえっ!!!?大丈夫ですよ!!!一人で帰れますから!!!?」

わたわたと慌て、頬を紅潮させた帝人は六条の突然な提案を拒絶し、頭を下げた。

「心配してくれてありがとうございます」

可愛らしい笑顔を浮かべたまま帝人はそう言い、家路についた。


そんな帝人の小さくなってゆく背中を見送り、六条は口元を手で隠した。

「可愛い……」

手で隠しきれない部分が赤く染まっていた。

――――――――――――――
ろっちーです
六帝であります

意外と楽しいです(笑)


それにしてもバレンタインにろっちーがデートではなく集会に行くとは…
モテないほかの奴らに気を使ってんでしょうか?



[2010/2/12 Up]

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あきゅろす。
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