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企画
ネッギネギにしてやんよ〜(ボカロ一家)
「〜♪」

鼻歌を歌いながら台所に立つ少女が一人。
長いツインテールを頭頂で団子にした彼女はピンクのフリフリエプロンを翻しながら鍋をかき回し、レンジの中を覗き込んでいる。
慌ただしくも楽しそうな光景だ。


「あー腹減ったぁ」

一人の少年が台所に足を踏み入れた瞬間、顔をしかめる。

「くっさ!!!!」

「あ、レン。おはよー」

ボウルの中をかき混ぜながら少女は笑う。

「…はよ」

鼻を摘みながらレンは台所に入ると冷蔵庫の中からバナナオレを取り出す。
目当ての物以外は見ない様に目を反らしたまま

「ミク…何やってんの」

鼻を摘んでいても何故か嗅覚を刺激する異臭に食欲が無くなかったのかレンはバナナオレに口を付けようとはせずに異様な臭いの台所の中心にいる姉に訊ねる。
そもそも料理ベタな彼女が台所に居る事がオカシイ。

「えー」

ミクは恥ずかしそうに両の頬を染め、いやいやと顔を振る。
乙女チックな行動にレンは気持ち悪そうな顔をする。

「いや…言いたくないなら別にいいから」

本能的に身の危険を感じ始めたレンは後退りしながら言ったものの、ガシっと手首を掴まれてしまう。

「お兄ちゃんへのバレンタインチョコを作ってるの」

聞きたくなかった!!!

「だから味見してみて」

語尾にハートマークを付けたミクの要請にレンは固まった。


♪♪♪


リビングには数多の死体が転がっている。
無理矢理に口の中にミク特製『ネギ風味チョコアイス・ネギのコンポートを添えて』を突っ込まれたレンは胃から湧き上がるネギ臭に失神寸前だった。

「レ…レン……生きてる?」

「…ネギ………」

ソファーの上でぐったりしているMEIKOは『ネギアイス』
日の当たる窓辺で寝転がるリンは『チョコネギのクッキー』
マスターは『ザッハトルテ・ネギクリームとアイス添え』
を食べさせられ生死の境をウロウロしてしまったらしい。

「ミクの奴…」

吐く息がネギ臭い。

「なんでマスターである俺まで……」

皆がそれぞれに独り言に近いグチを呟き、早く恐ろしいネギとチョコのタッグがこの世から消え去る事を願っていた。


チーン

だが、この世界に神は居なかった。
無情にもオーブンが焼き上がりを知らせる音を立てる。

「ん〜いい匂い〜」

ネギ臭いだけだ!!!!
とリビングの死体が心の中で叫んでいるのにも気づかず、ミクは出来立てホヤホヤのポイズンクッキングを皿に移し替える。

「レンーさっきのだけじゃ足りないでしょー!!!」

「ご指命よ」

「勘弁して…」

涙を飲み、レンは寝た振りをする。

「あ、卑怯!!!!」

小声でリンが文句を言ってくる。極限状態では双子の絆もあっさりと断ち切れるらしい。
そして悪魔はリビングへと進出してきた。

「レンったらまた寝ちゃったの!!!!」

ふてくされたミクの文句を聞き流しながらレンは寝た振りを続ける。それだけが自分の身を守る術だと信じた彼の必死な願いをやっと神が聞き届けてくれたらしい。

「ミク、何作ってるんだい?」

「お兄ちゃん!!!」

KAITOがひょっこりとリビングに顔を出したのだ。
ミクは顔を赤らめながらポイズンクッキングを背中の後ろに隠した。

「な、何でもないわ!!!!」

「ふーん。なんかネギっぽいけど」

まぁ、いっか。と鈍感なKAITOは異様なネギ臭を気のせいと判断したらしい。

「そうだ、皆」

KAITOは手にしていた袋を軽く掲げる。
袋に書かれたロゴは近くのケーキ屋のもの。

「ネギケーキなんて売ってたんだ。皆で食べない?」


いい加減にしてくれ!!!!!!

大喜びするミク以外の心の声が完全に一致した。

――――――――――――――
ミクカイてゆーかボカロ一家
マスターが陰薄いですね

ルカ様やがっくんが居ないのは…ルカカイとか書きたくなるからです(笑)

そもそもこれはバレンタイン小説ですか?





[2010/2/5 Up]

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