長編小説
8
山田の衝撃的な話しは、悠人を凍り付けるには、恐ろしく効果覿面だった。
いつも見るポーカーフェイスではなく、表情が浮き出ている悠人に山田は満足そうに笑ったって続けた。
「先代の後妻とできて、楓が出来た訳だ」
「…そんなデマ信用しない」
この位の嘘は山田は普通に吐くだろうと、悠人は反撃するが、又しても窮地に追いやられる。
「確かな情報だぜ?なんたって一族の人間から聞かされたんだからな」
またも愕然となる。東海林一族の中で裏切りがあったのだ。
確かに、代々続いている会社だけあって身内が多くいる。
しかも英雄より年上の輩は若輩の下で働くのを嫌がり、その地位を狙っているのが今の現状。
「何か新鮮だ。あんたの表情が動くのって…。いつも無表情でさ…あんた見ると何だかさ、啼かしてやりたくなるんだよ。言ってる意味分かるよな」
山田は遠回しに、悠人の身体を要求しているのだ。
脅している…。
マスコミにリークされたくなければ、抱かれろと…。
本心は嫌だと思った。
生理的に悠人は山田を受け付けなかった…。
顔は悪くない…一般的なハンサムと言えるだろう。
そんな事は関係なく、人間性の話なのだろう。
だが、悠人は首を横に振る事は出来なかった。
「分かった。それに応じる。その代わり一つだけ条件を付けたい」
「良いぜ」
逃げる気はない悠人に気を良くした山田すんなり快諾した。
「…これっきりと約束してくれ」
「了解。オレもそこまで人間腐ってねぇよ」
こんな犯罪を犯している人間の言う言葉ではないと、悠人は心の中で毒吐いた。
「さて、ベットに行こうか、女王様」
ソファから立上がる。
「……」
これから起こる事に、悠人は眩暈を覚えた。
だが、守りたかった楓を何よりも英雄…。
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