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長編小説
5
悠人は身を固くした。

(山田と二人で会う?)
(冗談じゃない!)

どうしたら断れるか、悠人は頭をフル回転させる。

その癖を知っている英雄は嫌な笑みを浮かべる。

「何を考えてるのか知らんが、お前に拒否権はない」

英雄は悠人の顎に指をかけると、顔を上に上げさせる。

「行きたくないそれ相当の理由があれば、話は別だが…」

「行きたくない理由は…」

(自分を見る山田の目付きが嫌…。)

多分言っても、この状況が変わる訳もない、所詮、恋人には昇格出来ない、秘書兼愛人でしかない。

「分かりました」

そう返事をしていた。




金の受け渡しの当日、早く仕事を終わらせるため、英雄と一緒には行動せず、社内に残り黙々と業務をこなす。

コンコンとドアを叩く音がした。
その次に、良く知った少年の可愛い声が聞こえると、悠人は慌ててドアを開ける。

「どうしたの楓くん?」

優しく声をかける。

いつも明るい少年なのだが、今日は目が赤く目元が腫れている。

一晩中泣きはらしたのだろう。

社長室に招入れ、ソファに座らせる。

タイミング良く、ココアがあったので、それを淹れて、楓に渡す。

「…悠人さんもオレを子供扱いするんだね」

不満を洩らしながらも、楓はココアを受け取ると、ふうふうとココアの熱を冷ましながら、少しずつ飲み込んでいく。

温かいココアで、楓も少し落ち着いたようだ。

「どうしたの?社長…お兄さんいま出てるよ?」

「ううん。兄さんじゃなくて、悠人さんに用があったんだ…」

「僕に?」

内心少し驚いた悠人だったが、勿論顔には出さない。

「うん。孝司さんの事で…」

「山田さん?」

悠人にとって、今一番厄介な相手。

「…最近会ってくれなくて、オレの事嫌いになっちゃったのかなぁ?」

金が手に入ると分って、山田は早々に楓を捨てた。

しかも、何も言わず、自然消滅の形を取って…。

何て奴だ。

激しい怒りを露にしそうになり、それを何とか制止、優しい笑みを楓に向ける。

「嫌いになる訳ないよ。楓くんは、明るくて、優しい良い子だよ?」

「何か、子供も扱いしてるね…」

「そんな事ないよ」

「…それがしてるんだってば…あ〜ぁ、兄さんに恋してる悠人さんならこの気持ち分かってくれると思ったのに…」







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あきゅろす。
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