長編小説
4
息を乱しぐったりしている悠人の隣りで、悠人から離れた英雄は服を整えながら、先程までの行為の疲れを感じさせない。
「とうとう、山田孝司が本性を現したぞ…」
その名前を聞いた悠人の熱が、一気に覚めた。
「それって……まさか」
「あぁ、そのまさかだ」
山田孝司…英雄の溺愛している12歳の年の離れた弟、楓の彼氏である。
前々から、英雄は山田を良く思っていなかった。
今時の若者らしく、派手な外見。
定職に着いていないのにも関わらず金遣いが荒く、デート費用は全て楓が払っていた。
既に、何百と言う単位を楓は山田に貢いでいた。
それを悪いとも思わぬ態度に、英雄は呆れていたが、ある種の不安もあった。
可愛い楓には傷付いて欲しくない英雄は、再三別れる様忠告したが、熱が上がりすぎていて、貢いでいる事にも気付かず話にならなかった。
また悠人も英雄と同じく、山田が良い印象はなかった。
英雄には話していないが、山田の悠人を見る目は色を含んでいて、下から舐める様に悠人を見るのだ。
「それで?」
悠人は続きを促す。
「手切れ金を要求して来た…」
乱暴に、シャツの胸ポケットから煙草の箱を取り出す。
呆れと怒りを含んだ仕草だ。
「要求金額は五百万…」
「…なんて奴だ」
思わず唇を噛む。
すると、英雄は思いがけない事を口にした。
「金の受け渡しには、悠人…お前に来させろと奴は言っている」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!