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長編小説
2
東海林株式会社は、多数の事業を手掛ける代々続いてきた伝統ある企業である。

その代の中でも、28歳という若さで後を継いだ若社長、東海林 英雄。

歴代の中でも、一番の功績を持っているかなりのやり手だ。

幼い頃から、社長になるべく、英才教育を受けさせられ、それを今活かし、その地位に君臨している。

そんな社長の秘書である柿谷悠人は、いつもの様に仕事をこなしていた。

「社長、明日はタカタコーポレーションの専務との商談が急に入りましたが、大丈夫ですか?」

悠人の高揚のない声を聞きながら、人の悪い笑みを浮かべた。

「私を誰だと思ってる?」

こんな自信に満ちた言葉と表情は、人から見たらおかしく思ってしまうが、英雄はその通りにこなしてしまうので、笑って躱す事は出来ない。

「失礼しました」

短く、謝ると悠人は叩いていたパソコンに再び向き直る。

それと同時に、英雄は自分のノートパソコンの蓋を閉める。

「私の今日のノルマは終わった…柿谷お前は?」

その問いに、ある種の誘いが隠れているのを悠人は即座に理解する。

「後5分程で…少し待って頂けますか?」
「…勿論、楽しい事は後に延びる方が断然良い」

楽しい事…少しでもそう思って貰えるのは嬉しいものだと、悠人の顔は心なしか崩れるが、はっとして、仕事用の顔に戻す。

悠人は英雄に関する事では、感情が上手くコントロール出来なかった。

そして時間通りに悠人はノートパソコンを閉じる。

「流石、東海林株式会社一有能な秘書だ」

「…からかわないで下さい」

「来い、悠人」

柿谷から悠人と呼び名を変えた。

これは、悠人が秘書から愛人へと変わる瞬間だった。







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