長編小説
7
『あの犯罪者を取っ捕まえる!』
そして、隼人の誤解を解かせて、ついでに謝らす。
と、意気込み千尋は家に帰ると、早速準備を始めた。
必要な物を鞄に詰め込むと、千尋は家を出た。
公園に着くと、千尋は物陰に隠れる。
警察に掴まっていなければ、まだ此所で犯行に及んでいる筈、しかも襲われても、女でも男でも『強姦されました』と、そうそう訴えられない。
そんな事を考えると、怒りに拍車がかかる。
絶対、掴まえて警察に突き出してやると固くて誓う。
…が、そうそう事が上手く進む筈もなく、気付くと十時を回っていた。
人が来る気配もなく、今日は大人しく帰ろうと、張っていた場所を離れ歩き出した。
例の場所を通りかかった時。
「また此所に来たんだ」
この声、あの強姦魔の…。
「もしかして、僕めやて?」
調子に乗ってる犯罪者に今でも飛び付いて殴ってやりたいと、だか此所はぐっと自分を押さえた。
誤解をしている犯人は、すぐには襲ってこない。
気付かれないよう抱き抱えていた荷物から、野球のプラスチックのバットを取り出す。
普通に向かって行っても勝ち目がないのを前回で分かっていたので、千尋なりに作戦を考えて来た。
「うん…。凄く遭いたかった」
そう言うのと同時に、千尋は犯人に襲いかかった。
「ぐっ」
見事犯人の頭に命中。
「ホント、遭いたかったよ。恨みを晴らしたくてな!」
何度もバットを打ち付ける千尋。
それに夢中になって気付かなかった。
犯人がスタンガンを取り出した事に…。
ビリッと身体に電気が走って、倒れてしまった後に千尋はそれに気付いたが、既に遅かった。
犯人は千尋を前回襲った場所に移動させる。
千尋が抱えていた鞄を奪うと、中身を見る。
中から、ロープやらナイフやらが出て来た。
「へぇ…僕を捕まえに来た訳か…」
意識は僅かある程度、身体は痙攣を起こしたようにピクピクとしている。
「そっかぁ、折角僕に逢いに来たんだから、優しく抱いてあげようと思ったのに…」
千尋が持って来たロープで腕を縛り、ナイフでシャツのボタンを一つずつ切って行く。
「本当に白くてスベスベした肌だよね…」
いやらしく肌を指が這う。
「やっやだっ」
「今日は最後までしようね。気持ち良くしてあげるよ。ああ、でもお仕置もしなきゃね」
そう言って唇の右端が上がった。
顔はまた見えない。
目深にニット帽を被っていて、顔がまた見えないのだ。
しかもそのニット帽が、千尋の攻撃を吸収していたようだ。
絶体絶命のピンチ。
千尋は絶望を感じながら、最後の希望の名を叫ぶ。
「隼人っ、隼人っ!」
恋人の名前。
助けに何て来ないのは分かっている。
でも呼ばずにはいられなかった。
「恋人…男何だ?だから馴れてる訳か」
「だからって他の奴に抱かせるって事にはならないと思うが?」
第三者の登場に千尋と犯人はハッと声の方を見る。
居る筈のない人が、木の側に腕を組んで立っていた。
「はっ隼人っ!」
続く…
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