長編小説
5
隼人の言葉に千尋は固まってしまう。
しばしの沈黙の後、やっとの事で千尋は声を発した。
「…どうして」
何故、分かったのか、それが千尋は不思議で仕方無かった。
隠した筈なのに…。
「呼吸が苦しそうだったから、シャツを開いた。そしたら、キスマークがあった…。俺の質問に答えろ、それはどうした?」
怒っているような隼人に、理不尽を感じた千尋は怒をぶつけた。
「ふざけんな!お前がオレを一人で帰らしたのが悪いんだろ!!」
「…で、他の男を誑かした訳か」
決め付けた隼人の言葉は、千尋の怒りを更に煽る。
「…どうして、決め付けんだよっ」
悔しくて、涙が滲んだ。
どうして、そう決め付けるのか…。
信じてほしい人に信じて貰えないのが、酷く悲しかった。
すると、隼人はとんでもない提案を持ち掛けた。
「それなら、それを証明してみろ…」
「何言ってんだよっ」
酷過ぎる隼人の態度に、千尋はとうとう涙を流し始めた。
「泣いて許して貰おうと思うなよ」
「ぐすっ…そん…なんじゃ…な」
溜め息を吐いた隼人は冷たく言放った。
「一週間、性交渉は禁止。勿論、他の奴ともだ」
「だからっ、オレの意思じゃ…それに隼人以外の」
言い切る前に隼人に遮られる。
「御託は良い。それが守れたら、一週間後に抱いてやる」
傲慢な隼人に、怒りを感じた千尋だが、隼人に捨てられたくない。
答えは決まっていた。
「…分かった。それで隼人が信じてくれるなら」
隼人への想いを分かってほしくて、その理不尽な条件を千尋は呑んだ。
まだまだまだまだつづく…
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