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長編小説
4
フッと目を開くと、一瞬白い世界にいるような錯覚を起したが、実際そこは保健室で、何故か千尋はベットの上で寝かされていた。

取り敢えず身を起すと、ベットをしきっていたカーテンが不意に引かれた。

「森重くん、良かったわ。意識が戻って」

保険医の先生に、そう声を掛けられたが、イマイチピンとこないし、頭の働きが悪い。

寝不足が祟ったようだ。

「…オレ、どうしたんでしょうか?」

自分の頭が動かないので、聞いてみた。

それを聞いた先生はクスクスと笑った。

「あらぁ、覚えてないの?」

また笑った。

「…すみせん」

返す言葉もなく、取り敢えず謝る。

「森重くん、あなた教室の移動中に倒れたのよ。原因は寝不足…」

心当たりがあって尚も言葉を失う。

「幸い、倒れた際頭を打った様子はなかったようだし、直ぐに砂田くんが運んでくれたのよ」

「は…砂田が?」

隼人が、ここまで運んでくれた…。

その事実が千尋には嬉しかった。

「彼の冷静な判断は、本当に良かったわ」

その言葉に、上がったテンションが一気に下がった。

冷静な判断…確かにそれで助かったのだろうが、そんな事より、もっと焦って、心配してくれた方が逆に良かった…。

余り感情を表に出さないタイプだが、やっぱり、そう言う時は、本音を見せて欲しい。

不安になるのだ…。
隼人は本当に自分の事が好きなのか…と。

元々、迫り迫って最終的に折れたのでは、と疑ってしまう時が、千尋の中に不安としてあった。

そんな時、保健室の扉がノックされてから開かれた。

「失礼します」

「あら、砂田くん」

「森重は起きましたか?」

そんな隼人を先生はほほえましげに見た。

「友達思いね…幸せね森重くん」

そんな事を言われると何だが恥ずかしくて、顔を上げられなかった。

「そう言えば、先生放課後会議があるとか、おしゃってませんでしたか?」

「はっ!そうだわ。忘れてた!!」

ちょっと間が抜けてる所が生徒の中で好感が持たれている先生だった。

「鍵は閉めたら所定の場所によろしくね」

と、バタバタと会議室に走って行った。

それを見て千尋は笑っていた。

「先生が廊下走ったら、ダメじゃんなぁ〜」

いつもなら、そうだなあ…位の返事が返って来るのに、隼人は無言だった。


どうしたのか…考え始めようとした時だった。

聞いた事のない低い低い声で…。

「千尋…お前そのキスマーク、どうした?」





まだまだまだ続く…

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