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短編小説
1
カレンダーに×印を付け溜息を吐く。

オレ、森野豊は×印でうめつくされてるカレンダーを見て胸がズキリと痛む。

恋人である西条啓之が出て行ってから、今日で半年目となる。

特に別れたとではなく、啓之は突然姿を消した。

確かに、啓之が帰って来なくなる前日、口喧嘩をしたが、別れを口にするような大きな喧嘩ではない…筈だ。

今となっては、それを断言する自信がない。

それに、これだけ連絡がないと、何処かで、大怪我をして動けないのではないか…もしかしたら死…一番想像したくない事まで考えてしまう。

それでも、今でも啓之を好きな気持ちは変わっていない。

だから、無事を願いつつ、今も彼の帰りを待っている。

オレと啓之は駆け落ちをして、この土地に来た。

互いの両親にオレ達の関係がばれたのだ。

今考えると、ばれない方がおかしい。
あんな頻発に、互いの家に行き来していたのだから…。

その時大学三年生だったオレ達の仲は違いの両親によって引き裂かれた。

それでもオレ達の互いの気持ちは変わる事なく、大学卒業と同時に、誰に告げる事なく自分の家を捨て、オレは啓之を、啓之はオレを選んだのだ。

その後もオレ達は、多少の喧嘩をしつつも、上手くやって来た。

定時で仕事を終えたオレは、久しぶりに町の中心部へ出た。

中心部と言っても、人口が少ない町で、しかも捨てて来た家族の住む家の隣り町。

きっとその方が見つかりにくいと、啓之が提案した。

そこでオレはハッとする。

直ぐ啓之の事を考えてしまう。

それ程までに、啓之の存在はオレの中で大きなものなのだと、思い知らされる…。

そんな事を考えていると、後ろから人がぶつかって来た。

「あっすみません」
その声に反応し、オレは振り向く。

すると、ずっと会いたいと思っていた啓之が目の前にいた…。

突然の事でオレの体は動かない。声すら出ない。

そうしていると、啓之の後ろから、可愛らしい女の人が顔を出した。

「ゆきくん、どうしたの?」

「いや、ぶつかっただけだ。すみません」

もう一度短く謝った。

二人は恋人らしく、仲睦まじく寄り添って去って行く。

啓之じゃない…。別人。

不意にオレの目頭が熱くなった。

やっと会えたと思ったのに…

走って自宅に戻り、声を殺して泣いた。





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