[携帯モード] [URL送信]

マネジのお姫様
26.立海合宿編〈8〉

…えーっと…
ただいまあたしはブン太先輩の部屋のベッドの上におりまして…
この部屋にはあたしとブン太先輩の2人っきりでありまして…
方やブン太先輩は何もしゃべらず…



あたくしの頭を拭いてくれております。



急に腕を掴まれて連れていかれるから何事かと思えば、ベッドに座らされて頭を拭き始めたんですよ。
…無言で。な、何だろう…?


「ぶ、ブン太先輩?」

丸井「…………」

「ブン太先輩ってば!あの!もう少し優しく拭いてくれると嬉しいな!頭もげそうな勢いだよ!」

丸井「あ…ああ、わりい」

「………?」


大丈夫?具合でも悪いのかな?
なんかずっと黙ってるし…
いでででででっ!さ、さっきから何回も強く拭き過ぎって言ってるのにやめないし!
なに!?これを機に頭もごうとしてんの!?
そんなにクッキーの件怒ってるの!?


「ブン太先輩、クッキーの件は本当にごめんなさい…」

丸井「………!!」

「………?」


な…何だ…?
急に手が止まったぞ?
振り向いてみたら先輩ってば目を見開いて固まってるし…


「あの、先輩?」

丸井「…はあ〜〜〜……」

「なっ!?」


何だいこんどはため息かい!?
もう、何なのよーー!!








〜丸井side〜


あーあ。
ほんと情けねぇ…
あいつらに散々「男として見られてない」と言われ、ショックを受けてたとこに真央からの兄ちゃん発言だぜ?そりゃ、イラつきもするだろぃ。
……けど何も無言で無理矢理引っ張ってくことはなかったな…


何と無く自分でも薄々気がついていた。
真央が俺のことを男として見ていないことを。これって恋愛の対象として見ていないって言っても同じことなのか?
…うわ、自分で言ってて何か落ち込むぜ…
まあ、なら誰をそういう目で見てんだって言われると何も言えねぇんだけどよ。
改めて言葉にされると異常にムカついた。いやムカつくと言うよりは傷ついたっつったほうが正しいかもしれねぇ。


そりゃ、最初は俺だって妹みたいに思ってたぜ?けどよ、そういうのって一緒の空間にいて、一緒に時間を過ごせば過ごすほど一瞬でも徐々にでも変わるもんなんだ。
「妹のように可愛い」という感覚から「女として可愛い」に変わったときがいつだなんて、んなもん覚えちゃいねえ。
けど確実にいつからか変わっていた。


…きっと、赤也や仁王、幸村くんなんかは少なくとも同じ気持ちだと思う。
わりとそういうことには鋭い方だ。
みんな口には出さねーけど。…いや、幸村くんは意外とストレートか。
真央があまりにも鈍すぎて全然気がついてないだけで…
俺は今まで好きな子がいなかったわけではない。けどできても口には出さなかった。何よりそんな色恋沙汰よりもテニスが1番優先だったからだ。
それは今でも変わってない。…と、思っていた。
実際テニスは大好きだし、テニスのことだけを考えていたい。…できれば食い物のことも。とにかくもっともっと強くなりてえ!…けど、真央を他の奴らにもとられたくねぇ。
これって矛盾か?
しょうがねーだろぃ、正直に言ってるだけだぜ?


…けど今の俺、先輩としてどーなんだよ。
あいつらも突然の出来事に驚いたのか、気を使ったのか、引き止める奴はいなかった。
いや、後ろから「ちょ…どこ行くんスか丸井先ぱ…むぐっ」って声は聞こえたから、誰かが止めたんだろ。
一方真央は俺がまだクッキーの件を怒ってるのかと思って「ごめんなさい…」と謝ってくる。
ちげえ…!ちげえよ!
もちろんクッキーのことはもう全く気にしていない。確かに食べたかったが、渡した相手が俺んとこのチビたちと同じくらいの年だと聞いたら何も言えなくなる。むしろ俺でも同じことをしたかもしれない。
ったく…お前が謝んなきゃなんねーことなんか一つもねぇだろぃ!
なのにこいつは心配そうな顔で謝ってくる。
違う、そんなこと怒ってない!
こいつにそんな気を使わせてどうする!
あーあ、俺ってほんとガキだな…


丸井「…はあ〜〜〜…」

「なっ!?」


あ、びっくりしてる。
うわまた顔が曇った。
何つーか…ほんとにすぐ顔に出る奴だよなぁ…
てか、こんな顔させてんの俺なんだけど。
どこまで最低なんだよ…


丸井「よし真央!」

「は、はい!?」

丸井「髪の毛も乾いたし、行くぜ!」

「は…はい!」


よし!とにかく仕切り直しだ!
あいつらにいつまでも心配かけるわけにはいかねーしな!


「あの、ブン太先輩」

丸井「ん?なんだ?」

「ありがとう!」

丸井「………!!」


あ、ありがとう?それは何に対するありがとうだ?
クッキーの件許してくれてありがとうか?
あたしのことを好きになってくれてありがとうか?もうフラれたのか!?


丸井「な、何が……」

「え?髪の毛乾かしてくれてありがとう!ってことだよ?」

丸井「あ、ああ…それか」


なんだよ焦らすんじゃねーよ…!
つか俺が勝手に焦っただけか…
マジ余裕なさすぎだろぃ…


「うん!髪の毛乾かしてもらうのなんて久しぶりだったからなんか気持ち良かった!」

丸井「そっか」


…何だろ、俺このままでもいいかもしんねぇ…
真央が笑いかけてくれて、幸せそうに笑って…
俺はそれを見てるだけで満足だ。
…いや、強がりかもしれねーけど。今はこれでいい。今はとにかくテニスだ!

丸井「行くぜ!」

「はいっ」


ここで焦らねーのが先輩の余裕ってやつだよな!













[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!