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紅の旋律
第二話 逃げるは幸福(Writer:Tubaki)

(ハンター、か)

教えてもらった宿屋へ足を進めながらふと考えてみる。ハンター。その言葉の響きにすら嫌悪感を抱きそうだ。
ハンター、狩る者。
狩るだけが彼らの仕事ではないが大半が何かを狩る仕事だという。
狩る。花を、動物を、貴重種を、貴重人種を狩る。なんて自分と合わない職業なのか。
―はぁ。
大きな大きな溜め息が出る。今滞在しているハンターの目的は不明。目的さえわかれば彼(彼女?)を避けることも容易くなるというのに。
―はぁ。
また、ため息が出た。来たばかりだというのに何だこの疲労感は。…しっかりせねば。何だかんだと頼りになる相棒はいないのだ。上手く動かねば。






何が、悪かったのだろうか。
宿屋に着いた。部屋を借りた。思っていたより広く綺麗な部屋に喜んだ。久々なベッドに飛び込んだ。食堂の親父が街特有の料理を作ってくれると聞いた。
―ここか!
ここなのか!
うきうきしながら昼食に食堂へ向かったのが悪かったのか!
レヴァンスが食堂に足を踏み入れた瞬間だった。怒号に悲鳴、そして何かが割れるような音が場に響き、男が宙を舞った。そして。
ガシャーンッ。
盛大な音を立てて木製のテーブル上にと不時着する。レヴァンスは嫌な予感を巡らせながら、どこか冷えた頭で思った。ああ、料理が勿体無い、と。
―はぁ。
溜め息がこぼれた。
嫌々ながら騒がしい方へ顔を向ける。どうやら若い男が数人の男ともめ事になっているようだ。周囲の人間は止めるどころが煽り立て、中には乱闘に参加する者まで出ている。
…現実から目を背けたくなるのを誰が責められようか。
―はぁ。
レヴァンスは大きく息をついた。その息には紛れもなく疲れが滲み出ていた。
何だよ、この状況。酒場ならともかく、食堂なんだからさ。
―はぁ。
重たい溜め息を吐く。ダメだダメだダメだ。こんな状況じゃ飯なんざ食えやしない。味わえやしない。ゆっくり出来やしない。彼はきびすを返し、食堂に背を向けた。

「…そこのターバンっよけろぉ!」

ターバン?もしかして俺のことか?
レヴァンスが振り返った時には、既に遅く。
視界一杯に鍛え上げられた男の腹筋が広がっていた。

「ごふッ!」

ドスンッと鈍い音を立ててレヴァンスは押し潰された。痛む後頭部に涙しつつ上を見ると非常にむさくるしいマッチョが。どうやら気絶しているらしい男は口から泡を吹いている。
―は、ああああああ。
今日一番の溜め息を吐き出した。
(…そういえば、溜め息ってつくと何か逃げるんだよな…何だっけな…)
周囲に目をやる。大丈夫か?と声はかけてくるものの誰も手をかそうとせず、むしろ笑ってみている。
…己は昼食をとりにきただけだというのに何だこのさまは。
(…どうしてだ、何でピンポイントで俺に飛んでくる…狙ってんのか?)
眉間に大量の皺が刻まれ、低下傾向だった機嫌が一気に下がる。
(あ―苛つく…凄く苛つく!!)

「があ!退けこの糞マッチョ!!」

力任せにマッチョを退ける。その際鈍い音がしたが無視だ。
ギッと全ての元凶である乱闘を睨みつけ、歩き出す。
そして、

「しにさらせえええ!!」

背中を向けるマッチョ一人に跳び蹴りを食らわした。





To Be Continued...

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