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トロイメライ
talents into consideration
非現実的かつ非科学的現象

まさに今その現象は我が身にふりかかっている。
正直、科学で解明できないことはないと思っていたが、この世界ではそんな考えはまったく通用せず、ソレが此処の人間にとっては当たり前であることをたった数時間で理解させられた。

それと同時に、元の世界に帰るまではこの世界の常識を自分は受け入れるまではいかなくとも、理解しなければならない…もしくは適応しなければ…

否、もうこの世界にいる段階で適応してしまっているようだった。









Chapter 2
Brown from Red










楓と宙がトロイメライに来てから一夜があけ、楓は学生鞄の中で鳴り響いた携帯のアラームで目を覚ました。鞄から携帯を取り出してアラームを止めると同時に、部屋が自分の部屋でないことから、昨日の出来事は夢ではないことを実感させられる。というか、携帯の存在を今の今まで忘れていた。
しばらくぼーっと携帯の画面を見つめ、充電の残量をみればマークが一つになっていた。ああ、トロイメライには充電できるところあるのかな?などと思いながら携帯をとじた。まぁ充電したところで圏外のため電話なんてできないのだが。

すると、どこからか何か調理をしているいいにおいが漂ってきた。誰かもう起きているのだろうか。宙は起きていてもおかしくないが、料理などできなさそうだ。アニルはなんだか朝が弱そうな気がする。あー…いいにおいがだんだん焦げくさく………ん?

楓は勢いよく部屋を飛び出し、においの元へ駆け出せば、そこには鼻歌を歌いながら真っ黒な物体を炒めているアニルの姿があった。

「あら、おはよう楓。そんなに慌てても朝ごはんは…」
「いやいやいやいや!!アニル、それもはや料理じゃない!!ただの炭になってるから!発がん性物質の塊だからぁ!!」
「な…そこまで言うことないじゃない!!私が久しぶりに腕をふるって…」
「腕をふるうと炭を作っちゃうの!?ってか普段どうしてるのよ!?」

いくらお世話になっている身とはいえ、さすがに炭の塊は食べれない。それにしても、炭になってしまった食材を未だに朝ごはんと言っているアニルはいろんな意味で恐ろしい人だ。真剣にいつもご飯はどうしているのだろうか…昨日からこのアニルの屋敷にいるが、メイドさんの一人もみない。魔法ですべてすませているのだろうか?
そうアニルの心配をしていると、アニルは炭の塊が乗ったフライパンを火にかけたまま、楓の方をみてクスクスと笑っていた。

「ちょ…何がおかしいの?早く火けしなさい!!」
「あーはいはい。いや、昨日に比べて元気になったな・と思って…」

アニルがガスコンロの火を消しながらそう答えたのだか、何がいいたいのかよくわからず、へ?と間抜けな声を出してしまった。

「昨日ものすごく遠慮してたでしょ?昨日の楓からは人にこんなにツッこむ子だとは想像できなかったもの。」

はっと慌てて口を押さえると、アニルは「敬語もとれたみたいだし、そっちの方がこっちもやりやすいわ。」と言って、魔法で黒こげになったフライパンを洗っていながら、棚から卵をとりだしたので、楓はあわてて「私がやるから!」とアニルから卵を取り上げた。楓が料理をし始めると、アニルはその様子を見てなにか思いついたかのように、あ!といったので楓は火に目をやりつつアニルの方をみる。

「どうしたの?」
「ねぇ、楓。この家にいる間料理頼んでいいかしら?」
「もちろん!」

断る理由なんてない。というか、お世話になっている間、家事全般すべてを頼まれなくてもひきうけるつもりだった。

「よし、なら契約成立ね。私が貴方を鍛えてあげる。」
「…え?」

何の前触れもなく、いきなり鍛えるといわれて理解が追い付かなかった。はて…鍛えるとは?運動部みたいに腹筋、腕立て伏せ、スクワットなどを恐ろしいほどやらされるのだろうか…しかしこれは鍛えるにはいるのかどうか…そう考えながら、焼きあがった目玉焼きをのせる皿をキョロキョロと探す。

「私のカンだけど、貴方には魔術師の才能があるわ。」
「えぇ!?いや、無理でしょ…私はトロイメライの住人じゃないんだから…」

アニルは人差し指をたて、軽く動かすと、棚の引き出しから皿が出てき、楓の手が届くか届かないかくらいのところで止めた。楓がありがとうと言ってその皿に手を伸ばせば、アニルはニッと笑って手をパッと開き、皿はいきなり落下し始めた。楓が慌ててその皿に手を伸ばすと…

「え?」
「ほら、できるじゃない。」

落ちかけた皿は空中でピタッととまってから、楓の手元で綺麗に重なったのだ。

「…ん?できるじゃないって…アニルがやったんじゃないの?」
「私じゃないわ。貴方がやったのよ。」
「冗談でしょ?だって…私、元いた世界ではこんなこと…」
「楓、人差し指をたてなさい。」

まだまだ納得いかなかったが、アニルが真剣な顔で言うものだから、楓はアニルの言うとおりに人差し指をたてた。

「その人差し指で…そうね、皿を並べて目玉焼きをそこに乗せるのをイメージして指で小さくその動かすものの道を描いて。」

半信半疑でアニルに言われたようにする。すると、皿はテーブルに綺麗にならび、コンロからはフライパンがフライ返しと一緒に皿のそばまでやってきて、目玉焼きを載せていった。

「うそ…」
「フフッ…上出来よ、楓。」

なぜ自分がこんなことができるのか、未だに楓は理解できていなかった。夢ならあり得そうだが確かにここは夢の世界などではない。ということは…自分がここでやっていくために、この世界に適応したのだろうか…

「まぁ、さっきからやってる物体を移動させる魔法は、魔術師の才能がある人はほとんどの場合、修行せずにできるわ。問題はこの後なの。」
「この後?」
「木の枝を傘や杖にかえたりするある物体を他の物体にかえる魔法、生物を召喚する召喚魔法、そして…火や雷をおこしす魔法よ。元の世界に帰りたいなら、しっかりマスターしてもらうわよ!!」
「試練受けるのって魔法なんて必要なの!?」
「いいから黙って私についてきなさい!私のお手伝いをすることで貴方は私の弟子で魔女見習なんだから!」
「ええっ!?」

魔女のお手伝いをすると魔女見習になるなんて、そんなこと聞いたことがない。しかし、これでこんな広い屋敷にお手伝いが一人もいない原因はわかったようなきがする…。それにしても、自分が魔法をマスターするなんて無茶な話だ!

「楓にアニル…何騒いでんだ?」
「宙!!」

今までどこに行っていたのか…宙がようやく顔を出した。アニルは宙に満面の笑みで話しかける。

「宙、楓には私が魔法を教えるから、貴方は朝ごはん食べたらハリスの所に行きなさい。ハリスが何か用意してくれているはずだから。」
「?うん。わかった。」

宙も何もわかっていない様子だ。どうやら自分一人が伝えられていないわけではないとわかって、楓は胸をなでおろした。

「ってかさっき散歩がてらハリスのところ行ったばっかなんだけど…あ、そいや昨日教会にいなかった人がいたぞ。」
「あら、どんな人?」

宙の言葉を聞いてアニルの目が一瞬光ったような気がした。宙はうーん…と唸ってからその人の特徴を話し始めると、アニルは身を乗り出して聞き始めた。

「ハリスよりほんのちょびっとだけ背が高い楓とあんまり年齢がかわらないくらいの男で、目が緑色で、青色の髪で…」
「どんな髪型してた?」
「男の割には前髪も後ろも長かった…かな?あ、癖っ毛だったみたいで耳の後ろの髪だけ左右にぴょんと広がってた!」
「雰囲気は!?」
「結構落ち着いてた。剣もってたから剣士だったのかな…」
「待ってて、マイ・スウィート・ダーリン!!」
「「は?」」

アニルはそう叫んで部屋を飛び出して行ってしまったので、楓と宙はしばらくそれにあっけにとられたあと、あわててアニルの後を追って行った。





To Be Continued...



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