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「…………――――なら良い」


数秒開けて僕は首を振る。あんたとやり合う位なら良いです、自分で頑張ってやります。

無能晒すよりも駄目な選択肢だ。危ない橋を態々手放しで渡る必要は無い。



「…―――――」

「……………………?」


しかし、ちょっと反応するのが早すぎたのかもしれない。真上から遮る物のない日光に、眩しそうに目を細めながらクラウディオはじっと此方の様子を伺っていた。



その視線に、何故か背筋に変な汗が浮かぶ。


………―――――なんだ?




「…―なんか、反応が早いね。別に必要以外の殺しや喧嘩はしないってタイプでもなし、」

「………………」



やっぱり、……ヤッバイこの人!

僕は探るような不躾な視線に耐え、必死にポーカーフェイスを守った。これは何かを疑う目だ。ヤバイ。


「………――――ちょっと、訊いても良い?あ、コレに答えてくれても手伝ってあげるよ?」

「………答えられる事だけなら、」


心臓がやけに冷静な脳みその下で暴れ
る。僕は緊張を悟られ無いように体中の力を抜いて空を見上げた。掌が汗ばんでいる。

あー、隣のビルにしとけば良かったー!
僕の大ばか野郎ー!!



「………――ずっと思ってたんだけどさ、何つーか、早すぎる気がするんだよね」

「………」

「キミが此処に来て、まあ、全部で三年かな?日本で何してたか知らないから、良くはわからねぇよ?わからねぇけど…」



あーーーっ、もうっ言うな!!!

此方を見るクラウディオの瞳は何処までも静かだ。しかし、獲物を狙う猛獣のそれでも有った。今にも飛び掛ってきそうな。

少し踵を浮かせて、床を蹴る準備をする。止めとけ、あんたの言うことはきっと気のせいだ!!


僕の内心の叫び、ていうか絶叫を無視し、クラウディオは一息だけ付いて試すように僕を見た。





「狂喜に触れるこの街最強のソードダンサー、…それだけの悪名を持つにはキミはまだ早すぎる気がすンのね。オレの知る限り」

「……………」

「だけど、三年前の赤雪のクリスマスは確かに起こったし、今だってキミは幹部第三位としてやれて来てる」

「………―――」

「だからオレが訊きたいのは、…何処でどうやって技術を磨いたのか何だけど―――…」

「ノーコメント」



しれっと済ました顔で答えると、クラウディオの瞳は妖しくギラつく。そのクラウディオの視線と僕の視線がかち合うと、僕らの間に有る空気圧がぐっと増した気がした。


お互いに、指先を一本も動かせないような重力が降りかかる。まばたき一つ出来ないような。まるで根比べのように絡み合う視線を逸らせない。



「ふぅン?何か、意味深げかなあ?」 


どちらかが動けば、始まるような。

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