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◆短編
獣人ペット3※R18
小屋のそばまで行くと柵の隙間から牛がピョコリと顔をのぞかせる。
牧場主が近づいて来た事に嬉しそうな顔をするが、その後ろに見慣れない私を見つけ、表情を曇らせた。

「ほら、お客さんだ。挨拶しろ」

「……こ、こんにちは」

牧場主にせっつかれ、柵に半分顔を隠しながら牛が挨拶してくれる。
年齢は人間なら20代後半から30代前半ほどに見えるが、その表情は獣人特有のあどけなさを残していた。

「こんにちは」

挨拶を返すとびくっと震えて牛が牧場主の服の端を掴む。
いじめるつもりは無いのだが、怖がらせてしまっただろうか?

「すみませんねぇ。人懐っこい性格の筈なんですが、最近お客さんが来る度こんな様子なんですよ」

申し訳なさそうに牧場主が謝り、牛の頭をガシガシとなでた。
強い力に見えるけれど牛には気持ちがいいらしく、その手を自然に受け入れている。

(客人におびえる……)

なんとなく言葉に引っかかりを覚えて、わがままだとは思いつつ牧場主に提案した。

「しばらくこの牛と2人きりにさせて貰う事は可能だろうか?」

「えっ」

「構いませんよ、こいつは気質が大人しいですから。それにハーディ様の事は信用しております」

牛が身体を震わせあからさまな拒絶を見せたが、牧場主は深くうなづいてそれを了承する。

「そんなに私は信用されるような事をしたかな?」

「本人からの情報だったら信じられないかもしれませんが、家の牧場をご愛顧頂いている貴方のご友人から聞き及んでおりますから」

「下調べ済みという訳か」

「もちろんです、大事な牛の飼い主を決めるんですから」

酪農家の鑑のような事を言いつつ牧場主は胸を張る。
なるほど、この牧場がここまで愛されるにはそれだけの理由があるわけだ。

牧場主は怯える牛の頭をまたガシガシと撫でて慰める。
牛は牧場主の作業服の袖にすがろうと必死で腕を伸ばすけれど、牧場主はそれを軽くいなしてと私に向きかえり軽く頭を下げた。

「それじゃあ私はしばらく席を外しますから、何か用事があったらそこのボタンでお呼びください」

「ありがとう」

この場所から離れていく牧場主に牛が悲しそうな視線を送るのを見て心が痛い。
なんだかものすごく悪い事をした気分だ。

「私が怖いかい?」

牛に話しかけると牛はじりじりと距離をとり、柵の向こう側まで行ってしまう。
こちらの声は聞こえているらしく、頭の上でピコピコと揺れる耳は私の声に合わせて可愛らしく動いた。

「私を政府の人間だと思っている?」

「っ!」

ビクリと身体を震わせた牛が、青ざめた顔で唇を振るわせる。
何か言おうとしているようなのだが、怯えてしまっているらしく、うまく言葉にならないようだ。

それにしても思った通りだ。
牛は政府の人間に連れて行かれる事を恐れている。

自分が牧場の重荷になってしまっている事もすべて理解した上で、生まれ育った牧場から離されるのを恐れていた。
牧場に迷惑をかけたくは無いけれど、離れるのは寂しい、怖い、そんな所だろう。

「違うよ、私は政府の人間ではない。この牧場を見学しに来たんだ」

「……本当、に?」

私をじっと見ながら警戒を解かない牛にニッコリと笑って見せる。
私が笑った事で牛は少し安心したようだが、それでも完璧に警戒を解く事はしなかった。
臆病な性格ならすぐに人を信じるようにはならないだろうし、少しでも警戒を解いてくれただけでよしとしよう。

「もし政府の人間なら君と2人になる事を牧場主が許さないだろう?」

「うん」

「そんなに遠くては話しづらい。君の近づけるまででいいから近くに来てくれないか?」

「……う、ん」

おそるおそるといった足取りで、牛が私の方に近づいてくる。
牧場主のように触れ合える位置まで近づいてきてはくれないけれど、話すには十分な距離に来てくれた牛に礼を言う。

「ありがとう、これでちゃんとお話が出来そうだ」

「う…、でも、俺、話なんて、すること無い、よ」

「じゃあ好きな食べ物は?」

「りんご。甘いの、好き」

本当に好きなのだろう。
りんごと口にした瞬間、彼の尻尾をフルンと円を描いて嬉しそうにゆれる。

「りんごか、私も好きだな」

「りんご、美味しい」

コクコクとうなづいた牛は、同意を得られたことを喜んでいるらしくいつの間にか少しだけ距離が縮まっていた。
牧場主の言った通り、本来は人懐っこい性格なのだろう。

「好きな事は?」

「好きな事……」

私の言葉を繰り返しながら牛は顔を赤くしてうつむくと、何かが酷く恥ずかしいのかもじもじと身体を揺らした。
何か変な事を聞いただろうか?

「あの、ね……、あんまりでないけど、ミルク搾ってもらうの好き」

「あ」

しゃがみこんだ牛は勃ちあがってしまったペニスを手で必死に押さえ込んでいる。
牛らしく巨大なペニスは先端からすでにとろりとミルクをこぼしており、甘い香りが辺りに漂っていた。


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あきゅろす。
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