[携帯モード] [URL送信]

◆短編
性悪猫の誘惑※R18
※女性との性表現を匂わせる描写が含まれます。
苦手な方は避けて下さい。



彼を動物に例えるなら間違いなく猫だ。
気まぐれな性格にコロコロと変わる興味、そして何よりも自分の都合のいい時だけ甘えてくるその態度。

近づけば離れ、離れれば近づく。
誘うように手招きするくせに、近づけば手酷く裏切る。
それなのに近づかずには居られない。

翻弄されるのは、……まあ嫌いじゃない。
今回は機嫌が良かったのか自ら進んでフェラをすると言い出したのも俺にとっては幸運だ。

金には不自由していない俺の財布目的な面があるのもわかっている。
俺も完全に気持ちを許しては居ないからどっちもどっちでおあいこだ。

フェラをする彼のなんども染髪されて痛んだ髪の毛に指を通して撫でる。
キシキシと軋んだ金髪は安っぽいけれど彼に良く似合っていた。

「ちゅ、……は、ふぅ、んぷ…」

「ん、いいぞ」

彼はホストなんて仕事をしているけれど男性経験はなかったはずなのに、いつの間にかフェラチオも大分上手くなった。
時折頬肉に亀頭を擦りつけて優しく刺激するのも凄く気持ちがいい。

チラとこちらを見た彼はニヤリと笑いつつ口淫していたペニスを口から出すと、唾液にまみれたペニスをを根本から舌で弄りあげる。

肉体的な気持ちよさにあわせて視界から来る快楽にゾクリと震えた。
これで自称ノンケなのだから嫌になる。

「溜まってた? 今日のチンコ凄く大きいし、玉もパンパンだ」

ムニムニと玉を揉み解しながらペニスの先端を舌でチロチロと刺激した。
腰が浮かび上がりそうになる程気持ちがよく、太腿がヒクヒクと震える。

「誰かさんが最近忙しいと連絡もしないものだからな」

「えぇ、誰ぇ?」

「おまっ」

わざとらしい口調は声に甘えを含んでいる。
気まぐれにコロコロと変わる表情は何故か憎めない。

「うそうそ、ゴメンって! 最近店に来るようになったお客サンがしつこくってさ、なにを勘違いしたのか携帯にもガンガン連絡してくるんだよねぇ」

「どうせ気を持たせるような事をしたんだろう?」

「そんな事無いと思うけどなぁ」

呆れた口調で言うと、不思議そうな顔をして彼は指で摘んだ俺のペニスをプラプラと揺らす。
揺らすなしゃぶれ。

「じゃあ何故その女性は携帯の番号を知っている?」

「俺が教えたから」

「お前の所為じゃ無いか」

「そうかなぁ」

口をへの字に曲げてムゥと唸った彼に今言っただけではない何かを感じてカマをかけてみる。

「……抱いただろう」

「え、うん」

嫌になる程あっさりと認めた。
悪びれる様子すら無い事に若干腹をたてつつも言葉を続ける。

「それじゃあ勘違いするのも当然だろう」

「だって俺の場合それも仕事の一環だし? 彼女だけ抱く訳じゃないんだけどなぁ、そういうのわからないのか……」

「わからんだろうな」

俺にもわからない。
そして肌を合わせる時にこんな話を振ってくる彼の気持ちも理解出来ない。
恋人という甘い関係ではないかもしれないが、コレはルール違反だ。

彼の額をグッと押して俺の身体から離すと、微妙に萎えたペニスをズボンの中にしまいこむ。
下肢にわだかまる欲求が気持ち悪いが行為を続ける気にはならなかった。

「あれ、もういいの?」

「いい。お前とはする気にならない」

椅子にかけておいた上着から携帯を取り出すと、電話帳のリストを漁る。
特定の相手など面倒だという考えの俺は、彼に会う前このリストにお世話になることも多かった。

以前は猿のように肉体を貪ったが、最近では会っても話すだけで終わる事が多く、心地よい時間を提供してくれる見返りに多少の金と物品を渡す、そういう関係。

物を絡めないと人と上手く付き合えないのは俺の悪い癖だ。
だが誰も彼も見返り無しで付き合ってくれるとは考えられず、金と物品で済むならそれが1番安い。

「それで誰か呼ぶの?」

「まあな」

「男?」

「ああ、俺は『お前と違って』ゲイだしな」

わざと『お前と違って』を強調してみる。

自分がゲイだからといって女性を抱く男に嫌悪感はない、彼が女性を抱くのも理解しているし許容はしていた。
だが必要も無いのに報告されるのは不愉快だ。

彼も今不愉快かもしれないが知った事か。
先にルールを破ったのは彼だ。

片手で携帯を弄り誰に電話をしようかと悩む俺の手を彼の手が包む。
画面に触るな、指紋がつく。

「だ、駄目!」

「何が」

「えっと、だって、俺、男はアンタだけだし、そういうの、ヤダ」

上手く自分の中で考えがまとまっていないのか、彼は細切れのまま言葉を紡ぐ。
言葉の端々から読み取れる意味は自分本位そのものだけれど。

「自分は女を抱くのにか?」

「だってそれは、仕事だし、そうしないとお金もらえないし、柔らかい身体気持ちいいし」

「お前が女性がいいなら別に無理して俺に付き合わなくていい」

「女の事抱くのも好きだけど、アンタに抱かれんのも気持ちいいから好き」

「ビッチか」

「否定はしない」

「自分は自由にするけど、俺には我慢しろと?」

「うん」

コクリと頷いた彼に言葉が出ない。
俺に折れろと、あっさりそう言い切りやがった。

キョトンした瞳とこちらを見つめる彼は全く悪いとは思っていないらしく、俺がそれを受け入れるモノだと信じきっている。
頭も性質も悪い、どうしようもない尻軽。

なのに、

「……性悪め」

何故俺はコイツを抱きしめてしまうのだろう。
胸にすり付く猫の誘惑に囚われて離れられない。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!