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◆短編
正義のミカタ1
怪しげな機械がゴウンゴウンと音を立て空気を振動させる。
その微弱な振動に身じろぐ影が1つ。

「う……、こ、ここは?」

「ようやくお目覚めかね、レッド」

「お前は……っ!」

慌てて臨戦態勢に入ろうとする男の身体はガシャリと音を立てて止まる。
腕と足首を頑丈な拘束具で固定されているのに気がつきレッドと呼ばれた男は愕然とした。

彼は地球防衛の為に組織された戦隊のレッドであり、そのリーダーである。
勇敢で明るい性格であり、いかなる困難があっても決してへこたれないガッツで度重なる苦難を乗り越えてきた。
身に纏ったスーツは彼の中にある情熱を表すように赤い。

「中々精悍な顔をしているじゃないか」

カツカツと靴を鳴らしレッドに近づいた男は口元ににやりと嫌な印象を受ける笑みを浮かべた。
指先でレッドの顎を掬い上げると満足そうに頷く。

レッドの顔は黒目がちで意志の強そうな瞳は意外と長い睫毛で縁取られ、男性的で凛々しい眉に肉厚な唇が印象的な清潔感のある顔だ。
美男子というより好青年といった表現の似合うその顔は、今苦渋に満ちている。

レッドは男を噛み付きそうな視線で睨みつけると、ギリと奥歯を鳴らした。

「ドクターJ…!」

「知っていてもらえて光栄だ、まあ敵対組織の幹部ぐらい阿呆の君でも知っているか。ああ、だが『J』なんてコードネームで呼ぶのは非常に無粋だ、ジェレミーと呼びたまえ」

男は芝居がかった仕草でレッドの言葉に喜ぶジェスチャーをするが、実際に喜んでいる雰囲気は一片もなくただひたすらにからかっているだけなのが見て取れる。
く、くっと顰めたような笑い声がそれに拍車をかけていた。

「俺を捕らえてどうするつもりだ!」

「そう怒るな、いきなり殺したりはしない」

自らをジェレミーと名乗った男はレッドの顎をツイと掬って上向かせ、こちらを睨みつけたレッドと視線を絡める。

爬虫類に似たジェレミーの瞳は冷たい印象を与え、酷薄そうな薄い唇はハッとするほどに紅い。
つりあがった瞳は嬉しそうに細められ、ニマリとあがった口角はきまぐれな猫のそれを思わせる。

「ただ君の尊厳を踏み躙り、消えない傷をつけたいだけだ」

「傷くらいでは俺の信念は歪まない!」

「……勘違いするな」

ジェレミーはレッドのスーツの胸元を長い爪で飾られた指でツゥとなぞった。

「え……?!」

信じられない光景にレッドは目を見開いた。
丈夫なはずのスーツがプツ、プツンと頼りない音を立てて裂け、日に触れる機会の少ない白い胸元が露わになっていく。

まるで手の平に落ちた雪が溶けるようにあっさりと裂けたスーツが、今では胸元を申し訳程度隠す飾りにしかなっていない。
筋肉のついた胸に食い込んだ細い繊維は健康なレッドの肌を卑猥に見せる。

「な、なんでだ?! 爆発にも耐えるスーツがこんな風に……」

「不思議かい? そうだろうそうだろう、もっと怯えてくれても構わないんだよ?」

慌てふためくレッドをジェレミーは笑う、押し殺した笑いの中に可笑しくてたまらないという感情を含ませて。

「君が意識を失っている間に強化されたスーツを劣化させておいた。だからこんなに脆くなっている」

「ひ、ぃ?!」

ジェレミーの指が身体の中心をなぞるようにレッドの胸からヘソへとむけて指を下げていく。
ジッパーを下ろすように肌が晒されていき、スーツの切れ目からアンダーヘアーが覗く所まで指を進めて、ジェレミーはピタリと止まった。

「ぁ、やめ……っ!」

「止めるはずがないと君はわかっているだろう? まあこんな楽しい事頼まれても止めはしないが」

「ひぅ、…んんっ!」

ショリ、と小さな音を立ててアンダーヘアーが擦れると、過剰なほどにレッドの身体が跳ねる。
明らかに他人の指の感触になれて居ないのだろう反応に、ジェレミーはいやらしく笑った。

「おやおや、随分可愛らしい声で鳴くものだ」

「う、うるさい! この変態め!」

「ははは、さては君、童貞だろう」

レッドがグッと言葉を飲み込んで頬を赤く染める。
それは誰の目にも明らかな肯定の証だった。

「俺は好きになった人としかしたくないだけだ!」

「こう言っちゃ何だがね、君はもう成人済みだろう? 今でそんなに奥手じゃこれから先立って絶望的だと思うが」

「大きなお世話だ!!!」

からかわれたレッドは屈辱と羞恥で瞳をウルリと潤ませて、目元を朱に染める。
普段の快活な様子からは想像も出来ない程萎縮したレッドにジェレミーは笑った。

その顔は悪人にピッタリの醜悪極まりない表情に彩られており、レッドはその表情にビクリと身体を震わせる。
数々の困難に立ち向かってきた筈のレッドでも恐れを感じるらしく、背筋をツゥと嫌な汗が伝った。

確かに笑みを浮かべているはずなのに全く安心出来る類のものではなく、むしろ嫌悪感を煽る表情は悪巧みをしているのだろう。
時折口の隙間からチロリと紅い舌が覗く。

「そうだ、それがいい、それが最適だ、そうしよう」

「な、なにを……」

「君をレイプするって話だ」

唐突なジェレミーの会話についていけず、レッドはポカンと口を開いた。
だが次第にそれを理解していくにつれて顔色を赤く青く変え、震える声でジェレミーに話しかける。

「は? 俺は、……男だぞ?」

「そう、そうだ、君は男だ。そして男の君が、私に犯されるんだ」

「冗談……」

緩々と首を左右に振り必死で諸悪の根源から距離を取ろうとするけれど、がっちりと身体を固定する拘束具は緩む気配すらない。

「レッド」

「ひ、く、来るなっ!!!」

「最高の屈辱を君に」

ジェレミーの指がレッドのスーツを下肢まで裂く音は機械の音に掻き消えた。


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あきゅろす。
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