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◆短編
旦那と弟君の話1
※ツイッター擬人化から派生した交流でカップルとなった家の子とあずたかさんのお子さんのお話です。
キャラ使用、妄想小説の掲載許可ありがとうございます!



脱衣所で2人固まる。
上から下までゆっくりと確認して首をかしげた。

あれ?



「うわぁ、ざあざあ……」

夕飯の買い物をして店から出ると、天気予報通りに夕立が降っていた。
ちゃんと予報をチェックしていた俺は傘を持って出かけていたので濡れる心配はない。

パンッと心地よい音を立てて傘をさす。
オレンジ色の傘は雨空でも爽やかな色合いだ。

雨が嫌いな人もいるけれど、俺は雨も好き。
だって傘を叩く雨の音は耳にとても心地いい。
勿論晴れも大好きだけれど。

「ん?」

家に向かってしばらく歩くと街路樹の木陰に小さな影がモゾモゾと蠢いているのが目に入る。

(大きい、……猫?)

猫だとすればその大きさは大きすぎるのだけれど、白く癖のある毛は猫に似ている。

(触りたい)

種類を問わず動物は好きだ。
特にモフモフした毛の動物の柔らかい毛を指で梳くのはたまらなく気持ち良い。

その手触りの良さそうな毛をモフモフしようと近づいた俺に気付いたのか、白い毛の主が振り向いた。

「……なに?」

くるりと振り向きこちらを見たのは人間の男の子で、少年期独特の高い声は剣呑な色を含んでいる。
怪しんでいるのかその視線は冷たいけれど、とても綺麗な顔立ちをしていた。

でもそんな事よりももっと重要な事があって……。

「人間だった」

「は?」

「残念、猫じゃなかった」

両手でギュッと出来るぐらいの大きな猫を期待していたのに、人間ではギュッと出来ない。
モフモフしたい欲求が高かった分、ガッカリ感も大きかった。

「なんて顔してるの」

「だって、大きな猫だと思ったんだもの」

「ああ、もしかしてこの髪の毛が猫っぽいから? でもどっちにしろ今はびしょ濡れでふわふわしてないよ」

「じゃあ乾いたら結んでもいい? 家でよければお風呂と着替えも貸すよー」

「……危機意識薄すぎじゃないか?」

「え?」

少年がポツリと呟いた言葉は俺の耳には届かない。
声が小さかったのもあるけれど、その言葉は自分に対する自嘲にも聞こえて改めて聞き返す事は出来なかった。

「別に良いよ」

少年がにこりと笑う。
自分の半分ほどの年齢に見えるのに、笑った顔は妙に大人っぽくてドキリとした。

「案内してよ」

小さな手が傘を持つ俺の手に重なる。
褐色の僕の肌に重なる手は、冗談のように白かった。



「これがシャンプーで、こっちがリンス。ボディーソープがこれで、スポンジはクマちゃん」

手にとってスポンジを見せると、今までウンウンと頷いていた少年は顔を明らかに呆れた表情に変える。
もしかしてクマちゃんは嫌いだっただろうか?

「クマちゃんは必要ないでしょ」

「えっ、必要だよ。すっごい泡立つよ」

はい、と手渡せば少年はムニムニとクマちゃんをつついた。
可愛いクマちゃんの顔が無残に凹むが、弾力のある素材なので直ぐに戻る。

大人が持つよりも子供の手に握られている方がやっぱり似合う。

「じゃあ俺は服を探してくるから、ちゃんと肩までお風呂に浸かるんだよ?」

「うん」

「上がる前に100まで数えるんだからね?」

「はいはい」

「返事は1回」

「は〜〜〜い」

間延びした返事は聞いていない証拠だろうけど、この位の年の子供は得てして大人のいう事に逆らいたがるモノだ。

いつ風呂から上がっても良いようにバスタオル渡してから脱衣所を出る。
さて、小さい子供用の服なんてあったかな?


・・
・・・

保存しておいた昔のズボンは、本当に自分が着ていたのかと疑問に思ってしまう位小さいけれど確かに俺のお気に入りだったもので、成長したモノだとしみじみしてしまう。
思い出のズボンと一緒に小さ目のTシャツを抱えて脱衣所の扉を開けた所で話は冒頭に戻る。



脱衣所で2人固まる。
上から下までゆっくりと確認して首をかしげた。

「あれ? ……大きい?」

そこにいたのは身長181cmの俺よりまだ大きい、肌が透けるように白くて癖の強い猫みたいな髪の毛をした男の人だった。

「やべ……」

「…………、このサイズの洋服着れるかな?」

「入る訳ねぇだろ!」


これが俺と、俺の旦那さんになる人の出会いである。


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あきゅろす。
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