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◆短編
心はバージン1
人生って1回じゃん?
後にも先にもこれっきり、それなら楽しんだ者勝ちじゃん?
少なくとも俺はそう思う。

美味いモノ食べて、気の合うダチと遊んで、気持ちいいSEX。
たまに金持ちのおばさんの欲求不満を満たしてお小遣い貰ったり。

髪の毛も軽く見える薄めの茶色、洋服はさりげなくブランド、携帯は最新。
嫌な事もあるけど、大体幸せ。

そんな俺にも最近気になる奴が居る。
バイト先の後輩、真面目クン。

男、名前はただし。
名前通りに曲がった事が嫌いな超堅物。
俺より身長も高いし、ガタイもいい。
ちんこもデカそう、……見た事ナイけど。

俺はあんまり性別とか気にしない。
病気はヤだからゴムは付けるけど、アナルセックスもした事あるし、男のケツに突っ込んだ事もある。
女性独特の柔らかさとかは無いけど、背徳感や征服感はたまんない。

「ただし、一緒に飯食いに行かね?」

軽く誘う。
あんまりがっつくとみっともないし?

「俺、金無いんで……」

あっさりばっさり。
先輩からの誘いは「はい」「YES」「わかりました」だろうが。

少しだけ自棄になって食い下がる。

「金無いなら奢るし? 一緒に行こうぜ」

「……」

ジッとこちらを見るただし。
顔立ちは平凡よりちょっといい程度。
でもなんか好き。

「奢って貰う理由が無いんで」

あ、酷い。

ふいっとあちらを向いたただしをこれ以上誘う事も出来ず、俺はすごすご引き下がる。
だってカッコ悪いじゃん?
しつこい奴って嫌われるし。

(……つまんねーの)

内心少し、ほんの少し、本当にちょびっとだけ傷ついた。
一緒に飯食いに行く位いいじゃねぇか、バカ。



別の日、今日もただしとシフトが同じ。
しかも閉店時間だから他には店長しかいない。
閉店後に事務所で仕事する店長はいないも同然だし、これはいいんじゃね?

「ただし、飯食いに行こうぜ」

あまり変わりの無いセリフ。
だってこう言ったらみんなノってくれんだもん。

「いや、だから金無いんで」

ただしの断り方も変わりばえしない。
むしろ『人の言った事覚えて無いのか』って呆れてる感じ?
覚えてるけど、もしかしてってあるじゃん。

「だって1人で飯食いたくねーもん」

「じゃあ誰か友達とでも食べに行ったらいいじゃないですか」

「えー、その後飲み会になるからヤダ」

酒は好きだけど今は酒より、ただしと仲良くなりたい。
飯の誘いに二つ返事で答えてくれるくらいに仲良く。

「……、そういうの止めて貰えませんか?」

あれ、なんか声が冷たい?
つか、もしかして……、怒ってる?

「先輩はそれでいいかもしれないですけど、俺は嫌です」

ザワザワ、心が騒ぐ。
視線の冷たさが刺さりそう。

「誰でもいいなら俺以外にして下さい」

違う、違くて、俺はただしと仲良くなりたくて……。
なんでそんな冷たい言い方するんだよ。

やだ、やだ、やだ、止めてよ。
聞きたくない。

「迷惑なんです」

ぐさり。

見えない何かが突き刺さる。
何か何てわかんないけど、確実に刺さった。

だって痛い。
スッゴいズキズキする。

(嫌われた)

俺はこういう性格だから友達も多いけど、嫌われる事も多い。
だから慣れてる。

ほら、いつもみたいにへらへら笑って『悪かった』って言ってお終い。
簡単だろ?

顔を上げてただしを見れば、平凡よりちょっといい程度のいつもの顔。
違うのは、拒否する視線。

ほら、笑えよ。何にも気にしてないみたいに。
いつもみたいにへらへらしてさ。
楽しい事だけつまみ食いするみたいに。

ただしの事何か忘れてさ。


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あきゅろす。
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