◆短編
ならいごと ※R18
※淫行・リバ要素あり
背中の後ろで沈む鍵盤の感触、濁った和音。
俺の手を押さえる先生の指は細くて、爪の形が綺麗だったのを覚えている。
たしかピアノを弾き続ける所為で指が痛みやすく、ケアには時間をかけていると言っていた。
普段は鍵盤を走る先生の綺麗な指、だけど今は俺の手首を押さえている。
「先生、どうしたの?」
状況が飲み込めずどうすべきか尋ねようとする俺に、先生は困ったような、今にも泣きだしそうな表情で薄く笑った。
「真琴くんは先生の事、好き?」
「うん、俺、先生の事好きだよ」
兄弟も年の近い従妹も居ない俺は兄弟に憧れていて、先生は俺のお兄さんみたいに思ってた。
ピアノが上手で宿題を教えてくれて優しくて、俺は先生の事が大好きだ。
先生は熱がある時みたいに熱い息を吐き出すと、長くて綺麗な指で太ももの内側をツゥとなぞる。
柔らかな内側を触られるのはくすぐったくて、俺は先生から逃げようとするけれど、押さえられた身体は動かなかった。
「せんせい?」
「僕も真琴くんの事が、好きだよ」
陰が俺の身体を覆って、先生の表情が見えなくなる。
唇に感じた熱が妙に生暖かく感じた。
・
・・
・・・
白い首筋はどこか現実離れしていて、もしかしたら夢なのかもしれないと不意に感じる。
確かめるように口を近づけて軽く噛んだ。
「ひ、ぁ……っ!」
薄く付いた歯型は目に鮮やかな赤。
上気した肌はうっすらと表面を桃色に染めていた。
だけど先生の指だけは白のまま。
シーツを握るのに力を込めすぎているのか、指に手を重ねるとひやりと冷たい。
「先生、俺の事好き?」
白くて、細くて、綺麗な先生の指。
俺の好きな、せんせい。
「ゃ、……もぉ、やだ…」
シーツに爪を立てて俺から逃げようとする先生の身体は、ジェルと淫液に濡れて凄くいやらしい。
感じやすい先生はもう3回達しているからか、力を入れようとした脚はブルブルと震えており、まるで生まれたての小鹿のよう。
身体は離れようとしているのに先生の淫蕩な下肢は、依然として俺のペニスに甘くしゃぶりついているのがたまらない。
俺から離れようとする先生の腰を掴むと、グッと押し付けるようにして再びペニスを突き入れた。
「ふぎぃ……ッ、ぁ…、あぁ…」
「あれ、空イキしちゃった? 先生のココ、俺のペニスきゅうきゅう締めて感じてるけど」
「い、いってな、いぃ」
「そう? じゃあちゃんとイかせてあげないとね」
身体の震えに合わせて後唇がキュッと締まり、襞に押されたジェルがぷちゅりと水音を立てる。
先生は言葉よりも身体の方が素直だ。
「よっ、と」
繋がったままだった身体からペニスを引き抜く。
ネットリと絡む内壁の感触に後ろ髪を引かれる思いだが、またすぐに迎え入れて貰えるのを知っている。
まだ肩で荒い息をしている先生の身体を起こすと、ひざの裏に手をまわして持ち上げた。
ピアノに没頭すると食べる事を忘れてしまう先生は成人男性にしてはかなり軽く、浮いた肋骨や肉付きのない指を見ていると不安になってしまうほどだ。
だけどこんな時は先生の身体が軽くてよかったと思ってしまう。
だって『すきなひと』を持ち上げた時にふらついたら恥ずかしい。
「ぃや、これ怖いからぁ!」
膝の裏と背中でしか支えられていない体勢が怖いのか、先生が身を捩って俺の腕から逃げようとする。
年上なのに怖がりな所、可愛い。
「大丈夫だよ、先生。俺がちゃんと支えてる」
あやすように先生の背中にキスをすれば、一瞬びくりと先生の身体が震え、徐々に抵抗を弱めていった。
ズッ、ズッと鼻をすすりあげる泣き声に、小さな、小さな、先生の可愛い要望。
「顔、見えないと、いやだ」
ああ、先生。
好き。
大好き。
・
・・
・・・
「真琴は僕の事、恨んでるんだろ」
「はい?」
「何もわかってないお前を犯した僕を恨んでない筈がない」
「まあ初めは痛かったけど、ローションとかジェルとか使ってくれてたし慣れたら気持ちよかったよ?」
「小学生に手を出した性犯罪者だからな」
「俺の事を一人前に見てくれて嬉しかったなぁ。俺は親が歳いってから生まれた子で、何をしていてもまだまだ子供だからって認めて貰えなかったからさ」
「訴えたらいい。今だって高校生なんだから立派な淫行だし」
「先生」
「真琴は顔もいいし頭もいいし運動神経いいし、ピアノは自宅での練習サボるからそこまで上手くないけどいい男だからさ」
「先生ってば」
「こんな変態じゃなくて、もっといい子を……」
「せ ん せ い !」
先生の肩を掴むと自分でもビックリするぐらい大きな声で先生の言葉を遮る。
先生の口から出るネガティブな言葉に心がざわつくのを感じたし、なによりも先生が自分の言葉で傷つくのを見たくなかった。
「俺が好きなのは先生だから。確かに小学生に手を出したら犯罪だったんだろうけどさ、俺は先生が好きだったからずっと一緒にいたよ?」
「嘘だ、だって逃げられないように押さえつけてた」
「でも先生、手を噛んだら俺の事を離したでしょ」
「え?」
「ピアノを弾くための大事な手だよ」
「そ、れは、離した、かも」
「俺はどうやったら逃げられるのか知ってた、噛める位置に指があった。だけど先生が好きだから逃げなかった」
「……」
「先生が好きだよ」
「うん」
俯いていた先生の頬を両手で包んで顔を上げさせると、先生は目元いっぱいに涙を溜めて鼻水まで出ている。
汚い、でも綺麗。すき。
ちゅ、と音を立てて軽く触れた唇はちょっとしょっぱくて、でも初めてキスした時みたいに生暖かくて先生を近くに感じられて心がジンワリと温かくなる。
「先生」
「……ん」
「昔みたいに俺に突っ込みたくなったの?」
「ん?」
「俺相手が先生ならどっちでもいいから遠慮しないで言っていいよ」
「んん?!」
「突っ込まれる方が嫌になったぐらいで泣かなくていいのに」
あれ、何だろう?
ちょっと部屋の温度が下がったような……。
「真琴の、大馬鹿ッ!」
「痛ッ!」
背中に受けた蹴りでゴホゴホと咳き込む俺を先生は小刻みに震えながら睨む。
顔は耳まで真っ赤で、綺麗で、可愛くて、色っぽくて……。
「先生ごめん、勃った。もう一回、しよ?」
「〜〜〜ッ! おま、お前っ、大嫌いッ!」
俺は先生の事、大好き。
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