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◆短編
きれいごと2※微エロ
「清彦。慣れていない君が他人に触れられて反応してしまうのはおかしい事ではないよ?」

「は、はい。でも恥ずかしくて」

小刻みに震えた身体は上気して、肌を淡い桃色に変えていく。
凛々しい身体が可愛らしい色に染まるのを、私は満足感に目を細めて見つめた。

「こうして反応して貰えて君が私の事を嫌っていないのがわかって嬉しいよ」

「嫌ってなんてっ!」

「うん、清彦ならそう言ってくれると思ってた。でも不安だったから嬉しいんだ」

慌てる清彦にニコリと笑いかけると、照れたのか頬を赤く色付かせて清彦は俯く。
清彦は嘘がつけない性格なのか、いつも素直な感情を私に見せてくれる。

謀ったり
貶めたり
誤魔化したり

そういうモノに私は飽き飽きしていた。
彼のまっすぐな反応は私の心を和ませ、そして穏やかな気持ちでゆったりと満たしてくれる。

偽りのない信頼はとても心地いい。

清彦が私の事を盲目的に信じているのは、窮地に立たされた彼を救ったのが私だから。
金といういまいち格好のつかない助け方ではあったものの、彼のピンチを救ったのには変わりなく、彼から感じる信頼は厚い。

だけどそれがほんの偶然だと知ったら彼はどう思うのだろう?
今時金に困った両親に売られそうになっている青年なんて珍しいと、興味本位で見に行って気に入ったから買ったなんて言ったら彼はどんな顔をするのだろう?

そして興味がなかったから彼の妹は見捨てたなんて知られてしまったら、清彦はどんな目で私を見るのだろう?

以前の私なら知られてしまったとしても金で買われた身分で何を言っていると笑い飛ばせた。
だけど今は違う。

清彦が微笑ましくて、可愛くて、愛おしくてしょうがないのだ。

「充希さん?」

急に黙った私に不安になったのか、精悍な顔を不安げに歪めて清彦が私の名を呼ぶ。
響きのよい清彦の声が私の名前を呼んだ、ただそれだけなのにこんなに幸福を感じてしまう。

「……、異常なしだ。チェックは終わり!」

「え」

重苦しくなった空気を誤魔化す為に極力明るい声で清彦に言う。
唐突な流れに付いていけなかったのか清彦は、パチパチと瞬きをした。

「今日はこれから出かけるよ、準備をしなさい」

「俺も、ですか?」

「そうだよ、清彦も一緒に行くんだ」

清彦がここに来てから外に出たのは数えるほど。

美容師もこちらから行くのではなく来させたし、実際の健康診断でも信頼のおける医者を招いた。
例外で外に出たのは腕は確かなのだが気難しく、仕事の時間は店から出ない上、定時きっかりで仕事をやめる堅物の服屋くらい。

そしてそれは可愛い清彦にプレタポルテのスーツを着せるつもりはなく、最高級の物を用意してやりたいという私のワガママだ。
本当に世の中の大半は金でなんとかなってしまう。

「あの、どんな服を着ればいいですか?」

「この前作ったスーツがあっただろう」

「え、えっと……、どれでしょう。充希さん、俺に沢山スーツを贈ってくれるのでどれだかわからなくて」

「ん、そうか」

まだスーツを着なれていない年代の清彦が、落ち着いた色合いのスーツの見分けがつかないのも当然か。
私のように幼い頃からスーツを着て社交場に顔を出していた人間ばかりではない、清彦の目線に立って考えねば。

それともつい贈り過ぎただろうか?
ほんの十着程度だと思ったのだが……。

「じゃあスーツや小物は私が選んでおくから、清彦はトイレに行っておいで」

「トイレ?」

「『それ』そのままで大丈夫かい?」

「それ?」

私が指さしたそこに、清彦の視線がゆっくりと降りていく。

中途半端に話で遮られてなお反応してしまった清彦の下肢は、いまだに硬度を保っており足の間でフルリと揺れる。
流石の若さと言うべきか、羨ましいものだ。

「わぁああああっ!!!」

珍しく大きな声をあげて清彦が勃ちあがってしまったペニスを押さえてしゃがみ込む。
清彦は口をぱくぱくと開閉させて何かを必死に私に伝えようとするけれど、私に伝わるのは清彦の可愛らしさだけで、何を言いたいのかはさっぱり察する事が出来ない。

「あ、あのっ、あのっ!」

「うん?」

「トイレ行ってきます!」

股間を押さえたまま清彦は立ち上がり、アスリートらしく素晴らしいフットワークで部屋の外へ駆けていく。
裸でなければいいタイムが出そうだ。

「……可愛い」

身体の隅々まですべて私に見られている筈なのに、いまだに照れる彼が可愛く、恥じらいを忘れない彼が愛おしくてたまらない。

そんな可愛い清彦を好きになってしまうのは当然の事。
そして好かれたいと思ってしまった。

現代社会の大半は金で何とかなってしまう。
だけどほんの僅かに手に入らないモノがあり、それはとても欲しいと熱望しているモノばかり。

(気持ちも買えればいいのに)

なんでも金で解決しようとするのは私の悪い癖だ。
だけどつい願ってしまう。

彼と一緒に居る未来を。


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あきゅろす。
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