◆短編
きれいごと1※微エロ
世の中、金ではない。
……なんて綺麗事。
現代社会の大半は金で何とかなってしまうし、むしろ金がないと何ともならない事ばかり。
そういう意味では私の立場は恵まれていると理解している。
なにせ青年1人囲っても罪に問われない身の上だ。
「清彦」
「っ、はい」
リビングの机で勉強をしていた清彦はパッと顔をあげて返事をすると、あわただしく立ち上がり早足で私の元まで馳せ参じた。
清彦の外見は決して可愛らしいタイプではない。
180センチ程ある身長に、均整のとれた体躯はしなやかと表現するのが合っている。
清潔感のある短髪に、以前は剣道を習っていたお陰かすらりとした立ち姿は凛として美しい。
整えた訳ではないのだろうけれど形の良い眉は彼の真面目な性格を表しているよう。
薄くもなく厚くもない唇は形がよく、時折はにかんだ時に口端がクッと上がるのは上品さすら感じさせた。
様々に良い所があるけれどその中でも1番、まっすぐに私を見る清彦の目が好き。
「あ……」
「逃げてはいけないよ」
手を伸ばして清彦の頬に触れる。
決して柔らかくはないけれど、きちんと手入れされた肌は指に心地がよく、ここに来た時は毛色の悪いガキだったが、今はこんなにも綺麗で可愛らしい。
芸術品を品定めするように清彦の顔に手を這わせて隅々までを検分する。
一刻一刻変わっていく彼の欠片を一つも逃さないように、じっくりと。
「あの、充希さ、ん?」
なにか用事があったと思っていたのだろう。
何も言わない私に焦れた清彦が、目を泳がせながら私の名を読んだ。
彼の呼ぶ私の名前は甘く優しく響き、ジワリと私の身体にしみこむ。
名前が変わった訳でもないのに、清彦の声で呼ばれると特別に聞こえるから不思議だ。
「ん、用事なんてないんだけどね。清彦があまりにも勉強ばかりしているからこっちを見て貰いたかったんだ」
「え、あ、……ご、ごめんなさい」
うっすらと頬を上気させた清彦は、申し訳なさそうに形のいい眉毛を歪ませる。
怒っている訳ではないから気にしなくてもいいのだけれど……、いや、気にしてほしい。
「清彦」
「はい」
「最近身体の検査をしていなかったね」
「あ……、は、はい」
頬に触れたままの手にピクリと清彦が反応したのが伝わり、先ほどまでよりも露骨に頬が赤く染まった。
実に素直な反応に思わず笑んでしまう。
「どうしようか?」
彼に許された答えは1つ。
それに逆らう事など許されないし、逆らわせる気はない。
素直で賢い彼ならもう答えがわかっているだろう。
「俺の身体、確認してください」
ほらね。
命令しなくても一糸まとわぬ姿になった清彦は、私の前に立つと恥ずかしそうに太ももにあてた手を握る。
隠してはいけないと以前言ったのを覚えているのだろう、従順な清彦は一度目をつむって何かを覚悟すると、見本のように美しい起立の姿勢で立った。
「ちゃんと覚えていたんだね、偉い偉い」
元々硬めの髪質なのだろう、清彦の頭をなでると短い髪の毛が肌を刺激してちょっとだけくすぐったい。
そのまま指を顔、喉、胸と肌を撫でながら下ろしていき、下肢の叢を指でなぞる。
ここの毛もやっぱり硬め。
カシャカシャと擦れあった毛が硬質な音を立てた。
「ふ…ぁ、っ!」
ビクッと身体を大きく震わせた清彦が、私から逃げようとするのを腕を掴んで制止する。
どうしたらいいのかわからずに泣きそうな顔をする清彦、たまらない。
本気で嫌ならば逃げればいい。
私よりも鍛えている清彦の方が強い、逃げようと思えばいつでも逃げられるだろう。
武器になりそうな物だって隠しちゃいない。
ゴルフクラブでも、包丁でも、清彦が素振りに使う木刀でもなんでもござれ。
だけど清彦は逃げない。
ただ腕を掴んだ弱い拘束だけで止まってしまう。
私の不興を買わないように
私を傷つけないように
私に嫌われないように
私が清彦に性的な事をしていないかといえば、している。
だけど清彦に性的な事を教えているかといわれれば、教えていない。
私は彼に触れるだけ。
それも検査という名目で。
肌に触れる私の指に感じてしまうのは、検査なのに何かを期待してしまう自分の所為。
ただの検査なのに恥ずかしく思ってしまうのは、自意識過剰な自分の所為。
肌をなぞる指の感覚を思い出し、勃起してしまうのは自分の所為。
清彦の思考はそんな所だろうか?
よくも悪くも清彦は私を信用しすぎている。
人間を金で買った男が善人な訳ないのにね。
「若いねぇ」
反応を見せ始めた清彦の下肢を指でつつくと、指の動きに合わせて清彦の身体が小刻みに震える。
芯を持ち始めた清彦のペニスは存在を主張するようにプルンと揺れた。
「ごめ、……なさっ」
恥ずかしくてたまらないのか清彦は身を捩って身体を隠そうとするけれど、半端な隠し方が逆にいやらしさを煽っている事には気づいていないらしい。
擦り合わせた脚の間から性器が見え隠れするこれもチラリズムというのだろうか、卑猥さ格段にアップしていた。
チラチラと覗くペニスの先がうっすらと濡れて見えたのは、私の見間違いではないだろう。
感じやすい、いい身体だ。
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