◆短編
青の風、豊穣の地5※R18
来た時と同じく2人が唐突に帰っていってしまったからか、いつも以上に静かに思える穴の底。
蘇芳の方を振り返れば、やはり少し寂しそうに見えた。
「寂しいか?」
「そうだな、いつも青嵐や埴生が帰る時は少し寂しい。こんな事を言ったら失礼かもしれないが、親のように、兄のように思っているからかもしれない」
「そう伝えてあげれば2人は喜ぶと思うけどな」
「そうだといい」
蘇芳はそう言って恥ずかしそうにはにかんだ。
控えめな所は蘇芳の美点だが、もっと感情を口にしてもいいと思う。
口に出して伝えなければ相手に理解して貰えない事は多く、伝わらないのは悲しい事だ。
「……っ!」
蘇芳の隣に移動すると蘇芳の大きな手に自分の手を重ねる。
手など幾度となく合わせた筈なのに、いまだに照れる蘇芳が愛おしい。
「蘇芳」
「う、うん?」
「俺はずっと一緒にいるからな」
青嵐のように風を操れる力もなければ、埴生のように大地を自由に出来る力もない。
蘇芳に比べると腕力だって弱いし、魚釣りもヘタクソだ。
だけど蘇芳が寂しくならないように傍に居る事だけは出来る。
「……」
「蘇芳? ……、ひぁっ!」
黙ってしまった蘇芳の顔を覗き込もうとした俺の足が、ガクガクと震え、腰に甘い快楽が走った。
立っていられないほどの刺激に膝をつきそうになった俺を、蘇芳の手ががっしりと支えてくれる。
倒れないで済んだのはありがたいけれど、肌の感触が敏感になった今、蘇芳に触れられただけでつま先からゾクゾクと快楽が湧きあがり、下肢が甘く疼いてしまう。
浅ましく感じてしまう俺の肌を、蘇芳の指がツゥと意地悪く撫で上げた。
「ふぅ、あ…、あァっ!」
抑えきれずに零れた声は明らかに欲に濡れていて、羞恥で身が焼けるように熱くなる。
だけど身体を貫く衝動は人の身に抗えるようなものではなく、身体の疼きはどんどん強くなっていった。
震える俺の身体を蘇芳が抱え上げ、部屋の中に向かっていく。
何処へ向かっているのかなんて聞かなくてもわかる。
「……助平」
「煽ったのは真白だ。嫌なんて言わないだろう?」
強い口調でいいつつも蘇芳の顔は赤く、俺が拒んだら止めてしまいそうだ。
拒む理由も拒む気もないけれど。
「俺が嫌なんて言う訳がない」
快楽で力の入らない腕を伸ばして、蘇芳の身体に触れる。
逆らう意思がない事を教える為に厚い胸元にすり、と頭を擦り付け、子供の様に甘えて見せた。
少し恥ずかしいけれど優しい蘇芳は俺の事を心配して引いてしまうから、多少大仰にしなければわかって貰えない。
自分でもいやらしいとは思うけれど、蘇芳に触れられるのはとても気持ち良く、大事にされている感覚は俺の思考を甘く溶かしてくれる。
いつもは慎重すぎる程に丁寧な蘇芳が珍しく足でふすまを開くと、乱暴とも思える仕草で俺を布団に押し倒す。
(そういえば布団を干すか迷って引きっぱなしにしてしまっていたな、好都合といえば好都合だが)
流石にこの場で布団を引いていざというのは情けないし、畳に肌が擦られるのはちとご遠慮願いたい。
痛いよりも肌が刺激され、気持ちよくなってしまうのだ。
「ふ……、はぁ、……あぁ」
唇に触れるだけの口付けが徐々に深くなっていき、吐いた息すらすべて蘇芳に飲み込まれてしまう。
蘇芳の手が器用に動き、胸元から着物をはだけさせていく。
胸の先は天を指すようにつんと立ち上がり、赤く色付き張りつめている。
空気が動いただけでも反応してしまうそこを、蘇芳の指がやわらかな果実をつまむようにして優しく触れた。
「きゃうっ?!」
口から漏れた声はまるで女の声のように甘えを含み、自分の声に聞こえない。
だけどそれは確かに自分の声で、蘇芳の指が巧みに動くのに合わせてひっきりなしに嬌声をあげてしまう。
「凄いな、真白の胸は。齧ったら甘い汁が出るのではないかと思うほど、赤く染まって美味しそうだ」
舌舐めずりをする蘇芳の視線は俺の胸をジッと見据え、明らかな欲情を持って俺の胸を弄る。
「や、駄目っ!」
ぶんぶんと首を振って蘇芳を止めた。
ただ触れられただけでもこれだけ感じてしまうのだ、軽く噛まれただけでもどうなってしまうのかわからない。
「大丈夫だ、酷い事などしない」
だけど蘇芳は俺が胸に噛みつかれるのが怖いと思っていると理解してしまったのか、ゆっくりと俺の胸元に唇を近づけて、尖った胸元を舌で優しく舐めあげた。
それはとても優しく、
同時に凶器のように鋭い快楽。
「あ、ぁああああああっ!!!」
まるで痙攣しているかのように身体が震え、逆らえない衝動に流されるように下肢の力が緩んでいく。
押さえようとした手は力が全く入っておらず、ただ情けなくあてられているだけにすぎなかった。
「ま、真白?」
「っあ、すお……、見ないで」
ゆるゆると首を振って蘇芳の視線を拒むけれど、心配性の蘇芳にとってそれが逆効果なのをこの時の俺は気づけない。
なにせ俺も混乱していたのだ。
いい大人になっているというのに、子供の様な失態をしてしまうなんて想像もしていなかった。
「あ」
蘇芳の視線がそこに注がれ、消え入りたいほどの羞恥で全身が赤く染まる。
指の隙間から零れる液体の正体なんて知りたくもない。
「見な、いで」
なんとか止めようとは思ってはいるものの、身体に力がまったく入らずぽたぽたと布を打つ音だけが部屋に響く。
生暖かくなっていく布団の感触に、涙が滲んだ。
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