◆短編
猛禽のススメ2※R18
結局ラシャスには怒られてしまったけれど、紅茶のクッキーを焼いてミルクを温めてあげると機嫌は直った。
3枚目のクッキーをつまむラシャスは鼻歌交じりで、どの形のクッキーにしようかと指でクッキーを揺らす。
鳥の形のクッキーが一番多く、続いて花、そしてまん丸。残りで羽の形にくりぬいてみたけれど、角が多い分焼き加減があまりよろしくない。
「ん、これも美味い!」
「そう? よかった」
それでもラシャスは美味しいと食べてくれる。
優しいのか、はたまた深く考えず食べているのか、とりあえず好意的に受け止めておこう。
「セルジュも美味しそうな匂いがする」
「さっきまでクッキーの生地に触れてたからかな? そんなに匂う?」
袖口に鼻を近づけてクンクンと匂いを嗅いでみるが、自分ではあまり匂いを感じられない。
しいて言うのなら洋服を洗う時に使う粉洗剤の匂い。
長く同じ匂いを嗅ぎすぎて鼻が麻痺しているのか、それとも人外の存在であるラシャスには感じられる匂いなのか。
自然に近い所に居るからか、ハーピー達の嗅覚は鋭い。
クッキーの匂いに対して敏感に反応するものそうだけど、匂いから様々な状況を感じ取っている。
良い匂いだと感じてくれるのは嬉しいけれど、その匂いで危険を感じ取るのを妨害するのは避けたい。
この岸壁に居る限り敵なんていないとは思うけれど、用心するに越した事はないだろう。
「セルジュ、勃った」
そう口にするとラシャスは羽毛に覆われた下肢をあらわにし、その隙間から見える勃起した男性器を主張するように撫でた。
先端からは既にとろりと先走りの蜜が垂れており、羽毛の中で蒸れたのか強烈な雄の匂いを感じる。
羞恥なんてまったくないラシャスは、僕が当然性処理をしてくれるものだと疑いもしない。
実際、そういう関係になってはいるのだけれども、ムードもへったくれもないラシャスの素直さに苦笑してしまう。
まあ、これが彼らしいという事だから嫌ではないけれど。
ラシャスのペニスに指を這わせると、あ、と小さな喘ぎがラシャスの口から漏れた。
普段元気な分、ひそやかな声は妙に艶っぽい。
「クッキーは?」
「あとで食う」
腰を揺らして僕の指にペニスをこすりつけるラシャスの動きは酷く卑猥で、気持ちよさのみを考えて抽挿しているように腰を揺する。
指で作った輪をすぼめてあげると、肌と先走りが擦れあいにちゅにちゅといやらしい水音が室内に響いた。
「んく、ぁ……、あ」
目をつむり眉根を寄せて気持ちよさそうに腰をうごめかしたラシャスは普段と違いすごく艶っぽい。
しなやかな張りのある筋肉にうっすらと浮かぶ汗が肌を怪しく輝かせ、身体が動くたびに割れた腹筋が波打つ。
もっと気持ちよくなって欲しくて僕はラシャスのペニスに口づけた。
「ふぁっ、あああっ!」
ねっとりと舌を絡めて舐めあげると、ラシャスの口から嬌声が漏れる。
独特の苦みと雄臭さが口内に広がり一瞬だけ眉を顰めるが、ラシャスのモノだと思えば嫌悪感はなかった。
カリ首を舌でちろちろと舐めるとラシャスの身体がヒクンと跳ねる。
気持ちいいのだろう、ギュッと握られた手は力を込め過ぎているのか血の気が引いて白っぽい。
先端の穴から漏れ出る先走りもその量を増やし、ぬらぬらと肉茎を濡らした。
ラシャスのペニスを指でなぞり玉を軽くかすめて、その下の玉と尻穴の間を指でなぞる。
「ひゃぃっ?!」
びくっと全身を揺らし腰を引いたラシャスの過剰すぎる反応にニンマリとしてしまう。
敏感で本当に可愛らしい。
「そ、そこは触るな!」
「なんで? ここはラシャスが『受け入れる』大事な場所でしょ?」
「今はない!」
顔を真っ赤にして怒るラシャスは僕から逃げると、足を抱きかかえるようにして身体を隠す。
僕とつがいになってから、ラシャスは物凄く努力した。
『完璧なメスになるには時間がかかるけれど、身体の一部を変化させて子供を作る事は出来るかもしれない』
そう教えて貰ってからラシャスは身体を女性化させるべく、苦手な女性化を必死になって練習してきた。
それはもう、痛々しいほどの努力だった。
自分の限界を超えて無理をするラシャスを心配して、そんな事しなくてもと声をかけた僕にラシャスは真面目な表情でキッと見据えた。
「今はなにも言われてないけれど、子供が出来なければ用無しって殺されてしまうかもしれないんだぞ?!」
この場合殺されるのは僕であってラシャスではない。
ハーピーは群れで生きている為、仲間にはとても優しい。
部外者である僕がいま受け入れて貰っているのもラシャスのつがいだからだ。
でも2人の間に子供が出来なければ、子をなす能力がないと判断されて殺される可能性はあるだろう。
馬鹿だと思う。
僕ではない女を攫って来ればそんなのはすぐ解決する。
人外の生き物でちょっと怖い所はあるけれど、ラシャスはカッコいいし優しい。
攫われてきた当初は驚いても、きっとその後分かり合って幸せな子育てが出来るだろう。
それにわざわざ受け身にならなくてもいい。
僕を選ぶメリットは少なく、むしろデメリットだらけだ。
「俺、頑張るから」
額に玉のような汗を浮かべ、僕の心配を取り除くようにやわらかく笑うラシャスを好きだと思ってしまった。
人でも、女でもない、この人外の生き物を。
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