◆頂き物
沈也様から相互記念5※R18
厭らしい水音が静まり返った室内に響いている。
熱と快楽に霞む頭でどうしてこうなっているのかと探るが、考えが纏まらなかった。
服を全部取り払い、俯せになって腰だけを上げるなんとも恥ずかしい格好をさせられて、唾液を纏った長い指に体内を掻き回される度に洩れる声を抱えている枕に染み込ませた。
「…もう良いですね」
「あんっ!」
指が抜かれる感触に思わず枕から口を離して喘ぐ。
その喘ぎにクレウは楽しそうな笑い声を漏らすと、王子の身体を反転させて顔を合わせた。
すでにクレウも服を脱いで引き締まった身体を惜しげもなく晒している。
「これ…なに…?」
その中で最初に目を引く物。クレウの左胸に刻まれている紋様を王子は指でなぞった。
意味の分からない飾り文字、植物の蔦か何かを連想される。
「…何でもありませんよ。私が私であるという証です」
それ以上それについて質問させる気はないのか、クレウは王子の唇を唇で塞ぐとねっとりと舌を絡めた。
咥内に流れ込んで来るクレウの唾液はどこか甘い気がして、不快感が余り無く喉の奥に通せた。
唇を離すと糸が互いの唇を繋ぐ。
「…そろそろ、かな」
ぼそりと口にした呟きの意味が分からず、蕩けた視線で意味を問うがクレウは答えない。
先程までたっぷりと施してくれたキスも愛撫もくれずに、ただ笑みを浮かべて自分を見ているだけ。
こちらを観察している様な目が怖くて、抱きしめてもらおうと腕を伸ばしたその時、王子の身体にじわりと異変が起きた。
「…ぁ…、ぅ?」
じわりじわりと身体の奥が熱くなる。
触れてもらっていた場所が再び触れて欲しいとざわめき出す。
一番疼いているのは掻き回されていた後孔だ。じんじんと熱を持ち、自ら口を開き始めているのが分かった。
「な、なんでぇ…?」
何故。
クレウは自分にただ触れていただけだ。
怪しい薬など使っていないし、使う素振りも無かった。
ただ手と舌で触れていただけなのに、どうして。
――これじゃまるで――…。
「ちょっと身体を離しただけで寂しくて身体が疼くなんて…セイリア王子は淫乱なんですね」
「っ!!!」
責められる様な内容に涙が滲んだ。
でもその間もどんどん熱が上がって切なく、苦しくなる。――触って欲しくて、仕方が無くなる。
「ああ泣かないで。私はどんな貴方でも好きですから…」
「っほ、ほんと?」
「勿論。…だからどこをどうして欲しいのか…ちゃんと教えてくださいね…?」
優しい声音、紡がれる甘い言葉。
自分を全て肯定してくれる存在はとても心地良い。そんな存在に飢えていた王子には猶更。
愛と快楽に混ぜて辛さを分かってくれるのは自分だけだと、言い聞かされる。
クレウの仕掛けた見えない罠に全て掛かった王子は既に彼に依存しきっていた。
彼に拒まれたらと思うだけでまるで世界に一人きりになってしまったかのような絶望さえ感じる。
――この短時間でそうなる様、クレウが仕向けた。
じわりじわりと末端から毒が染み込むように。
「…さ、さわって。お願い、僕にさわって、あつい…っ」
「喜んで」
震える唇で王子が懇願すれば大きな手の平で胸を、足を撫でられる。
ただそれだけなのに背中を反らす程の快楽が身体を巡り、唾液が口端から零れた。
「なか、なかもあつい…っ、あついぃ」
「ナカ?ここですか?」
「ひゃうっ」
つぷっと後孔に指が突き立てられる。
再び戻ってきたそれに歓喜の声を上げるが、…足りない。
「もっとっ、もっと指ちょうだい…っ、あつい、あついからぁあ…!!!」
泣きながらせがめば指が増やされるが、欲しい物には足りない。
もっと長くて、大きな物で触って欲しい。掻き回して欲しい。
でも一体自分が何を求めているのか分からずに、困惑で涙が止まらなかった。
腫れた瞼が熱く重く、伝う涙の塩分でひりひりと頬が痛む。
「どうしてぇ…っぼく、僕…っ」
「…セイリア王子」
低く呼ばれて顔を上げれば、ぎらぎらとまるで獣の様な目で見下ろしているクレウと目が合う。
両手を強く握られ、頭の横で縫い止められた。
「怖がらないで。おかしくなんかないんですよ…私がそうしたんですから」
「ふ、え?」
「…私の名前を呼んで。私が欲しいと言って。…そうすれば貴方が求めているもの全てをあげますから」
切実そうな響きを持って懇願するように。それでいて何かを狙う様に爛々と目を光らせているクレウに身体が震える。
感じているのは恐怖なのか、それともこんな風に求められる事への恍惚なのか分からない。
ただ、もうこの身体の疼きに耐えられる余裕なんて――王子には無かった。
「…クレウっ、クレウが――…欲しい…っいたっ!」
言い終わるのと同時にちりっとした痛みが掴まれていた左手の甲に走って声を上げる。
何が起こったのか確認しようと左手を上げようとした途端、目の前が真っ白になる快楽に呑み込まれた。
「や、ぁああああぁああ――――――!!!!」
「んっ、くっ…」
自分の足の間にクレウの腰がぴったりとくっついている。
髪と同じ色の下生えが当たるのを感じて、クレウの雄が自分の中に入れられた事を理解した。
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