◆111111HIT〜
3:開幕※R18
昨日の今日で今現在、朝。
俺の貞操(?)は無事である。
神様、ありがとう。
奇跡と言うか、何が起きたかの顛末はくだらないもので。
「優斗さんも僕のお嫁さんになってください」
准一君の言葉に混乱する俺の体が、強い力で引き寄せられる。
厚い胸板で受け止められた頭が、ギュッと抱えられると一瞬息が止まった。
冗談抜きに苦しい。
「ちょっと、にいちゃんは俺の嫁なんだけど!」
「えー、なんでさ。ずるいよ」
「ずるくない! だって准一君のお嫁さんが俺なら、俺の嫁さんはにいちゃんでしょ!」
「言ってる意味がわからないよ、拓馬」
もっともだ。
と言いつつ准一君の言い分もさっぱりわからないのだが。
「1人締めしたら駄目! それににいちゃんはずっと前から俺のなの!」
だれが決めた、そんなこと。
俺の所有権がいつの間にお前のものになった。
「初めては痛くないように准一君に譲るけど、後は全部俺のにいちゃんなんだから」
「拓馬だけお婿さんでお嫁さんでずるくない?」
「ずるくない!」
子供のような理屈でぎゃあぎゃあと争う二人。
とはいえ、いい大人の男が全裸で、勃起したまま言い争ってるのはかなり滑稽だ。
少し痛いが腕を強引に捻ると縛られていた手首から拘束が取れた。
傷が付かない様にタオルを巻いた上から縛ってくれたらしく、少しヒリヒリするものの痕は残っていないのはありがたい。
だが、気を使うべきところを間違っている。
「俺だけじゃ不満だって言うのかよ!」
「そうじゃないけど、優斗さんも美味しそうなんだもん」
「俺のなの!」
「勝手に……人を、巻き込むな!」
久しぶりに拳骨なんて食らわせたので腕が痛いです。
「おはよ〜」
ぼりぼりと頭を掻きながら起きてきた琢磨が、ふわぁあと大きな欠伸をした。
平和過ぎて昨日の事が嘘のように思える。
「目玉焼き幾つだ?」
「2つ」
「コレステロールの取りすぎで太るぞ?」
「激しい運動するからいいのよん」
耳元で聞こえるいやらしい笑いと、太腿に這う指の動きに思わず菜箸を持ったままの手が出る。
前髪を掠めたそれはヒュッと空を切り、目の前でぴたりと止まった。
「潰すか?」
「……目玉焼きの話ですよね、お兄様」
「勿論だとも」
両手を降参というように顔の横に上げた拓馬がゆっくりと後ずさるのを確認すると、手を下げた。
少し焼き過ぎてジブジブと音を立て始めた目玉焼きの黄身に箸を付きたてる。
「潰しとくわ」
「はは、は、ありがとー」
引きつった笑いが張り付いた顔。
自分の身は自分で守るしかないと知った今、多少乱暴ではあるが容赦したらこっちが食われる。
文字通り、本当に食われる。
まさかこの歳になって、貞操の心配をする日が来るとは思わなかった。
話は昨夜に巻き戻る。
自分だけは服を着込み、服がどこにあるかわからない2人は毛布を着せてベッドの上に正座させた。
「どういう事なのか説明しろ」
「にいちゃんは俺の嫁?」
「その問題はまだ片付いてないだろ、決定するなよ」
「そういう話じゃない! 何で2人の関係に俺を巻き込むんだ」
「俺がにいちゃんを好きで、准一君がにいちゃんを気に入ったから?」
「だからってこれは強姦だろう!」
「「うん」」
「お前ら……」
「本気で抵抗したら逃げられるようにしておいたでしょ。まあ、本音を言えば抵抗せずに受け入れて欲しかったけど」
「だからといってしていい事と悪い事があるだろう!」
「だから俺は見捨てられるの覚悟でやってる」
「……は?」
「弟としてじゃなくて、雄としてにいちゃんが欲しい。それ以外はいらない」
ギラギラと凶暴さを孕んだ双眸でキッと睨まれると、みた事の無い男の顔。
今までの弟とは違う表情に背筋が寒くなる。
「お、俺は女じゃない! なんなんだ、さっきから」
「別ににいちゃんが俺に挿入たいっていうなら別にそっちでもいいけど、にいちゃんにしたら挿入るより難易度高いだろ? だから俺がする」
「あのなぁ……」
「今回ばっかりは殴られたって引かない。俺は絶対にいちゃんを手に入れる」
手に入れるって、俺は物でもないと反論しようとした口は、拓馬の唇で塞がれた。
ファーストキスというわけでもないし、小さい頃ならふざけてちゅーとかしてた。
でも、口内を貪るような激しいキスは拓馬の雄を感じさせて、異様だ。
「俺の、だからね」
「最終的には俺の総取りで終わらせてみせるよ」
俺の体を抱きしめながら拓馬が宣言するのに、挑発するような准一君の言葉。
握り締めた拳がもう1度、振り上げられる。
「絶対俺はお前達のモノになんかならない!!!」
こうして、短くも濃い攻防戦が幕を開けたのだ。
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