◆111111HIT〜
100万HIT 正義×セルヴァ1
「ただいまセルヴァ、何か酒の肴になりそうな物あったっけ?」
「はい、ありますが……」
帰ってくるなり嬉しそうに晩酌の話をするご主人様は珍しい。
酒類を問わずお好きらしいが全く酔わないらしく、酔えないから勿体無いとご主人様はあまりお酒を飲まれないのだが……。
「実は今日ね、会社で面白い賭けをしたんだ」
「どんな賭けだったんですか?」
「今日のノルマをこなせた奴からお歳暮のおすそ分けを選べる賭け」
「それでご主人様は?」
俺が訪ねるとご主人様は口の端だけをにやりとあげて、自信たっぷりに微笑んだ。
聞くまでも無く1番初めにノルマをこなしたのだろう。
普通の人なら自意識過剰とも思えるその態度も、きちんとした能力の裏付けと努力を知っているご主人様だから素直に受け入れられた。
意外に思われるかもしれないが、ご主人様には勉強家な面がある。
元々の能力が高いのもあるとは思うが、見えない所での努力を怠らないからこそ、常に高水準で存在する事が出来るのだろう。
自分の持っているものを慢心せずに光らせる事が出来るご主人様を俺は尊敬しているし、そんなご主人様の隣に居て恥かしくない自分でありたい。
(しかし、こういう時に負ける絵面の想像が出来ない人だなぁ)
負けているご主人様見たい訳ではないのだけれど、だれかに負けた時どんな反応をするのか気になってしまう自分も居て、少しだけ自分の性格の悪さに苦笑いしてしまう。
人の世界に居て多少性格がマイルドになったと思うが、やはり基本は悪魔だ。
「じゃーん、純米大吟醸〜」
「日本酒とは珍しいですね」
「自分で買うには高いし安いからってビールとかワインに行っちゃうんだよね。でも頂き物の凄くいい奴だから美味しいはずだよ」
「じゃあ何か軽く摘める物でも用意します」
「ありがとう」
ご主人様から渡された日本酒の瓶は手にずしりと重く、軽く揺らすとチャプリと小さな水を立てた。
日本酒はあまり飲んだ事が無いがご主人様があれほど嬉しそうにしているのだから美味しいのだろう。
その味に思いを馳せながら、俺はつまみを作る為に冷蔵庫を開けた。
「あ、美味しい……」
「これは思ってた以上だなぁ、飲みやすいし美味いね」
少し口に含むと果実に似た甘さがふわりと漂い、口触りの良い液体は喉をすうっ、と通った。
アルコール独特の喉をやくような刺激は少なく、かなりアルコール度数も高いようだがつい飲み過ぎてしまいそうだ。
「お米で出来ているお酒なので独特の癖があると思ってたんですが、すごく飲みやすいんですね。それに凄くフルーティな香りがします」
「たしかに果物系の甘い匂いがするね。ワインみたいに主張は激しくないけど、続けて呑んじゃう味だな」
つまみに用意した小松菜の煮浸しと山芋の海苔はさみ揚げも、この美味しい酒に良くあってついつい呑む速度も速い。
「うーん、刺身とか食べたくなるね」
「ああ、わかります。このお酒に美味しい刺身があったら最高ですよね」
流石に刺身のように傷みやすい物を前もって買っておく訳にはいかないが、次に飲む時には是非用意したい。
スーパーでも美味しい刺身を出してくれる所はあるが、
やはりどうせ食べるなら新鮮な物が食べたいし、幸い今なら俺が能力を使わずとも便利に動く使い魔がいる。
(……使いっぱしらせよう)
ひっそりと心の中で決めて、グラスを傾けた。
・・・
しばらく呑んでいたのだが、身体が熱くてぼんやりしてしまう。
俺も殆ど酔う事はないはずなのだけれど、身体を温める日本酒の効果はあるらしく、吐いた息は熱く頬が火照る。
蕩けるような味につられて呑みすぎてしまったのだろうか?
「あれ、セルヴァ酔ってる?」
「ふぇ、酔ってないれすよ?」
自分でもビックリする位、呂律が回っていない。
これが酔うという感覚なのだろうか?
ふわふわして、温かくて、すごく気持ちがいい状態。
今まであまり呑んだ事が無かったが、日本酒では酔いやす体質なのかもしれない。
「いや、酔ってるだろ」
ご主人様の手が俺の肩を掴んでようやく自分がゆらゆらと揺れている事に気がついた。
ふわふわしているとは思ったけど、実際に揺れてるのも気付かない位に酔っているらしい。
「ふぅん……、日本酒なら酔うのか」
ご主人様が嬉しそうに笑む。
悪い事を考えているその表情は、俺の大好きな顔。
そういう顔をしている時のご主人様は、一杯虐めてくれるから好き。
「ふふ……、ご主人様」
俺の肩を支えてくれていたご主人様の手に頬を擦り付けて、甘えたような声を出したのは自分。
普段なら恥かしくて出来ない事なのに、酔っている所為なのか恥かしくないし素直に甘えられる。
「おや、随分と可愛らしくなって」
猫を撫でるみたいにご主人様の手が俺の喉を擽るのが気持ちよくて、うっとりと目を閉じた。
普段より敏感になっているのか、その手が触れた場所からジワジワと快楽が湧き上がり、徐々に下肢が熱くなるのを感じる。
「ふ……、ん、ぅ」
モジモジと身体を動かす俺にご主人様がと笑った。
はしたなく勃ちあがったペニスが布地を押し上げているのが見えているのだろう。
「ご主人様……」
「ん?」
何を言いたいのか完璧に判っているだろうご主人様はいつも通りに悠然と笑んでその形を崩さない。
ご主人様が欲しくてたまらない俺は、身体を擦り付けて強請ってしまう。
「弄って……、虐めてください」
仕える身の分際で主人に強請るなんて許されないはずなのに、強欲な俺の身体と意識は正気を保てずに浅ましく疼いた。
そんな俺を冷やかな視線で見ながらご主人様は笑う。
「じゃあセルヴァが誘って見せて?」
「え?」
「見ててあげるから1人でしてご覧? 上手に出来たら……」
「ん…っ!あ…」
ご主人様の指が喉をスッと滑り胸の突起をきゅっと摘むと、痺れるほど優しい声で耳元に囁く。
「虐めてあげる」
これ以上無く魅力的な誘いを断ることなど出来ず、俺は身体に渦巻く熱に誘われるように、こくんと頷いた。
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