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800000HIT フェデルタと真実の絡み1
ゴロゴロと音がする。
「フェデルタさーん」
「はーい」
今の私は部屋の掃除中。
勿論の如く私の部屋ではない、真実の部屋だ。
汚い、物凄く汚い、確か以前掃除をしてから1週間程しか経ってない筈なのだが、何故こんなに汚せるのだろうか?
「あ、その返事可愛い。ちょっとこれほどいてー」
「静かにしていろ」
床を転がる真実を跨いで本を棚にしまう。
並べる順番を考えるのは楽しいし、綺麗に並んだ本棚は使いやすく、見栄えもいい。
「あのですねー、どうせ縛るならもっと身体に食い込むような奴の方がいいなぁと思うんですよー」
「そんな事はない、良く似合ってる」
「そう、へへー」
ちなみに真実は布団で簀巻きにされている。
やったのは私ではない、やったのは母親である愛さんだ。
この汚い部屋は私以上に綺麗好きな彼女の逆鱗に触れたらしく、寝ている所を手際よく拘束された真実は現在こんな姿で転がっているという訳である。
物は大体片付けた終わったから後は埃を落として掃除機をかけ、窓を拭いて終わりでいいだろう。
手に着いた汚れを軽く叩いて振り返る。
「……この状態でよく寝られるな」
くうくうと規則正しい寝息をたて、床に転がったまま寝る真実に、呆れを通り越して感心すらしてしまう。
これから掃除機をかけるのに邪魔なので、布団にくるまれたままの真実を持ち上げると私の部屋まで運ぶ。
子供のように安心しきった表情で眠る真実に、しょうがない奴だと思いながらも笑んでしまう。
最近学校のイベント事で忙しそうにしていたから疲れていたのだろう。
人間は忙しくなると眠れなくなる者も居るというから、こうやって眠れるのは良い事だ。
起こさないようにゆっくりとベッドの上に降ろすと、額にかかった髪を指先で撫で、掃除に戻る事にした。
「文化祭?」
「うん、そう」
結局あの格好で昼まで寝続けた真実から、昼食にと作ったチャーハンを大盛りに盛り付けながら話を聞く。
文化祭というのは確か、普段の勉強や研究の成果を外部に向けて発表する場だったと記憶している。
真面目に勉強していたんだな、と内心感心してしまう。
「真実は何をやるんだ?」
「んー、メイド喫茶」
「……は?」
「メイド喫茶」
「文化祭とはそういうものなのか?」
「俺みたいな特に目的もない学生にとっては、文化祭はみんなで騒ぐ祭りだって」
頬を丸く膨らませてチャーハンをほうばる真実は、行儀悪く口に物を含んだまま器用に喋る。
私といえば学んだ紙上の知識と、事実の違いに頭が痛い。
楽しそうなのは何よりなのだが、勤勉さが優れていると聞いていた日本人の中で真実は特異なのだろうか?
「その日だけは一般の人でも入れるけどフェデルタも来る?」
「私が行ってもいいのか」
「うん、まあ俺は殆どなんにもしないんだけどさ」
「しないのか」
「調理の手伝いをしたらね……、すっげぇ怒られた」
「ああ……」
壊滅的と言うほか無い真実の料理を思い出し、納得して頷いた。
果物の皮を剥くだけで苦くなり、盛り付けただけで色が変わり、炒めるだけでフライパンが無残な姿に変わる。
そんな料理の腕前の真実に調理を任せる学友じゃなくて本当に良かった。
「俺はメイドやんの」
「まて、私の記憶する限りメイドというのは女性だったきがするのだが」
「うん、まあ俺の学科殆ど男だし女装だよね」
目の前にいる真実を上から下まで見回す。
恋人の贔屓目で見ても女性の格好が似合うようには見えないし、なかなかにガタイのいい身体に合うとも思えない。
「少し行きたく無くなってきたんだが……」
「え、なんで?」
すっかり食欲の無くなった私に反してまだまだ食べたり無いらしい真実は、フライパンから直接チャーハンを食べながら振り返る。
行儀が悪いと怒る気力すらない。
「俺の服すげーフリフリで可愛いよ?」
自信満々に言い切る真実に、なお一層気が重いとは言えなかった。
ああ、美味しくできたと思ったのにチャーハンの味がしない。
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