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◆111111HIT〜
フェデルタ×真実×フェデルタB※R18
「ん……、ぁ」

どうやら真実は強すぎる快楽で意識を飛ばしかけているらしく、少し身じろぎをしたがそのまま眠りについてしまう。
その方が好都合ではある。

痛みのないよう慎重にチビの体から真実を離すとベッドに移す。
全身の力が抜けているのか、ずっしりと重たいがもてないほどではない。

「……わかっているんだろう?」

「……う、」

チビはコクリと頷くと、まだ虚脱感のあるであろう体を起こし私の元までフラフラと歩いてくる。
それを支えるように手を伸ばすと、ニッコリと微笑んだ。

「お帰り」

ふわりと浮くような柔らかい感覚の次に強い衝撃。
ギュッと目を瞑るとあふれ出す思いは、自分であって自分でない者の記憶。

『ただいま』



「ん……」

「起きたのか?」

「ん…、ん、おはよーフェデルター」

「まだ夜だ、寝ていていいぞ」

「あれ、チビは?」

まだ眠い目をパチパチと瞬かせながら、あたりを見回す。

「ここにいる」

「へ?」

私の手の平に乗った小さな不恰好な人形と私を交互に見て不思議そうな顔をする。
ああ、愛しい人が傷つかないで欲しいのに。

「チビと私が分かれて存在する事は出来ない」

「え、でもさっき……」

「短時間だったし、セルヴァの補助もあったから出来た事だ。長期になれば体に負担がかかり過ぎて2人とも消滅してしまう」

「じゃ、じゃあチビは?! フェデルタは?!」

「大丈夫、チビは私の中に還っただけだ」

「還る?」

「元は1つだから、な」

手の平で自分の胸元を押さえると、全てを察したのか真実の顔が真剣な色を帯びた。

「……フェデルタは、チビは、初めからわかってたの?」

鼻にかかった震える声、見る間に溜まる大粒の涙。

ああ、どうか
どうか
悲しまないで

【私】が生まれた事は無駄ではなかったのだから

「…………ああ」

叫びに似た悲痛な泣き声は、深く深く真実が傷ついた事を伝えてきて、胸に熱く零れた涙は深く深く真実が私達を愛してくれた事を伝えてきて、柄にもなく少し泣けてきた。

かける言葉のどれも違う気がして、ただ無言で真実の頭を撫でながら抱きしめるしか出来なかった。



泣きつかれた真実を起こさないように置いて、ベランダから外に出る。
常人には見えないように魔法をかけて、普段は徒歩で訪ねなれた場所へ飛んだ。

尋ね人は気配を察したのか承知だったのか、ベランダで待機していた。

「自分の事なら許した」

「……」

「軽率だとは思わなかったのか」

「…………」

拳を握り、思い切り頬に向かって打ち付ける。
普段なら傷どころか触れることすら出来ないのに、避ける気もないのか、ただ静かに彼は頬で拳を受け止めた。

多少の衝撃があったのか、ゆったりとした動きで頬を押さえた彼は、こちらを静かに見て何かを言おうと口を開き、そして何も言わず閉じた。

「悪魔はいつも結果ばかりでその後を気にしない。一時はそれで済むだろう、だがそれが傷つける事になる事を忘れたら人とはいられない」

ビクリと体を揺らした彼に悪いとは思わない。
それを考えない者に未来などないのだから。

「……次に会う時」

呟くように零れた言葉に彼は顔を上げた。

「普段通り真実と接してやってくれ、……セルヴァ」

彼がどういう反応を返すのか確認せずに、その場を離れた。



「おかえりー」

「……ただいま」

空はうっすらと明るくなっていたけれど、まさか起きていると思わなかったので一瞬反応が遅れてしまう。
目元はまだ赤いけれど、笑う顔はいつもの真実に戻っていた。

「……大丈夫か?」

「うん」

真実の手が愛おしそうに、チビの媒体だった人形を撫でた。

「あのさ、この人形がチビでもいいかな」

「ん?」

「喋って、触れて、愛し合って。一瞬でも大事だと思ったものを無かった事にするのは嫌だなぁって」

自分の犯した罪を忘れるでも、責めるでもなく、受け入れる。
それが真実の決断なら私も受け入れよう。

「きっと喜ぶ」

「そうかな……。そうだといいな」

えへへ、と笑う真実は晴れやかな笑顔。
その笑顔は自分であって自分でないものに向いたものでも、真実が笑ってくれるなら嬉しい。

「なんだか結局、浮気だった気がするな」

「……拗ねてんの?」

「少し、な」

クスクスと笑い、今度は私の為だけの笑顔を向ける。

「なんだよぅ、可愛いこと言ってくれるじゃん!」

ちゅ、ちゅと頬にキスをされたけど、物足りなくて深く口付けた。
今は私と溶け合ったもう1人の分も深く深く、キスをした。




梅様リクエストありがとうございました!
なんだか甘いよりも切ない展開になってしまってごめんなさい(´・ω・`;)
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

あとセルヴァを悪者みたいに書いていますが、真実を喜ばせようとしただけで悪気はないのです。
ただ魔力で簡単に手に入れたものは、痛みを伴って奪い返されるという因果応報。

結局切ない終わりになってしまったのですが、チビの話は本筋にいれたい話でもあったので本編の一部とさせていただきます。


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あきゅろす。
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