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◆10万HIT CLEAR
天使×人間・ラブラブ(Hなし)
「ただいま帰りました。……真実? う゛っ!」

「あ、あは、お帰りフェデルター」

珍しく力なく笑う真実の前にあるのは大量の炭。
何故か皿に乗っているのはなにか理由はあるのだろうか?

「なんだこれは」

「鶏卵の成れの果て」

「鶏卵は炭にならない」

「だって卵と塩しか使ってないのにこうなったんだもん!」

鶏卵だったものを両手に掴み、軽くそれを打ち鳴らしてみれば甲高く澄んだ音色が鳴り響く。

「上質な備長炭?」

「そんなもの使ってないし、作ってないよ! なんで駄目なんだよー!!!」

バンバンと真実が鶏卵だったものを叩くと、軽やかな音が部屋に響いた。



拗ねてしまったのかベッドに転がり枕を抱きしめて真実はゴロゴロと転がる。
可愛いといえるようなサイズは無いが、私にとっては可愛く見えた。
恋人の欲目だろうか?

「なんなの、この脅威の料理テクニック」

「ま、まあ、愛さんが今度バーベキューするって言っていたから無駄にはならなくて良かったじゃないか」

試しに火をつけてみればそれはもう見事なまでに炭としての役割を果たし、柔らかいオレンジの光は心を癒してくれそうなほどだった。

「そういう問題じゃないもん」

「料理が出来なくても真実には真実のいい所が有るだろう?」

「どこ?!」

まるで責めるように俺に問い詰める真実は真剣な表情で、思っていた以上に料理が出来ない事で思いつめていたらしい。

「そうだな、真実が居るとその場が明るくなるし柔らかい雰囲気になる」

「それってお調子者なだけじゃん」

「常に前向きだし、その笑顔を見ていると元気になれる」

「反省しないし、へらへらしてる?」

「……真実」

言った端から否定され、ネガティブに改悪されていく。
本当にいい所だと思っているのに悪く取られるのは悲しい。

「ごめん、ちょっと自分が何も出来なくて拗ねてる」

表情を曇らせた真実が私の手の平に頭を寄せて、すりすりと髪の毛を擦りつけた。
撫でて欲しいのかと思い少し撫でると、安心したように真実は瞳を閉じる。

「私の大切な人を悪く言わないでくれ」

「だってさ、俺このままだったらフェデルタのお荷物になっちゃう」
「何故?」

「だって、フェデルタ働いてるじゃない? セルヴァの紹介だっていうのもあるけどそれなりに給料貰ってるし、俺大学卒業しても絶対まともな就職しないもん」

「だから?」

「いらなくなっちゃうじゃん」

こちらを見る真実の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいて、それを想像しただけで悲しくなってしまったらしい。

ああ、もう本当に、

私の恋人は愚かで、


愛おしい。

「じゃあ真実は私があのまま就職しなかったら私を捨てた訳だ」

「へ?! そんな訳ないじゃん!」

「そうか? だが真実の言った通りなら真実が大学を卒業して働き始めても、まともな定職に就けない私などお払い箱のように聞こえたが?」

「そんな事しないってば!」

掴みかからんばかりの勢いで立ち上がった真実が、攻めるように腕を握り私を揺さぶる。

「ああ、私もそんな事はしない。当たり前だろう? いらなくなるなんてありえない」

私の言葉に真実はグッと息を飲むと、その場にへなへなと座り込み深いため息を吐いた。

「落ち着いたか?」

「大分。 ……つか、裏返して考えると俺ヒドイ事言ってんね、ゴメン」

「色々考えてしまう事は仕方が無い。私も将来の展望が全く見えずにどうしたものかと途方にくれたからな」

戸籍が無いため普通の仕事に就けない状況だった私にとって、選べる仕事は悪事ぐらいしか思いつかなかった。
真実とずっといる為にそれに手を染める訳にも行かず、完全に手詰まり状態だった私に手を貸してくれた正義とセルヴァには本当に感謝している。
まあセルヴァは感謝など伝えたら、物凄く嫌な顔をされるのだろうけれど。

「それでどうして料理だったんだ?」

「お嫁さん、……みたいな?」

「は?」

「だってほら、『お帰りなさい、あなた。ご飯にする?お風呂にする? それとも、ワ・タ・シ?』っていうじゃない?」

「言うのか?」

「言うの! 風呂は入れられるじゃん? 身体の相性はばっちりだしオールタイムいつでもOKじゃん? 問題はご飯なんだよなぁ、俺ビックリするぐらい飯つくれないし」

「真実は世の中のお嫁さんに謝った方がいいと思う」

よく知らない世界だが、真実は何かを曲解している気がする。
というか確実に間違っていると思う。

「それに私が仕事をしたかったのは真実とずっと一緒に居るためだ、離れるなんて目的と正反対じゃないか」

「ずっと一緒にいるため?」

「そうだ、真実の重荷にならないで一緒に歩いて行けるように仕事が欲しかった。それが全てではないけれど、私には家族も未来の保証も何も無いから」

「俺だって家族はいるけど未来の保証はないなぁ、ゲイだから子供も出来ないし」

「そう、だから仕事……というか金が要る」

「ん?」

真実の眉根がピクンと上がり、表情が曇る。

「貧乏人と金持ちなら、金持ちの方が選ばれやすいだろう?」

「ひっで! 俺をそういう奴だと思ってんのか?」

「だが同じ私なら金があるに越した事はないだろう。どんな些細な事でもいい、真実が離れていかないように打てる手は全て打つ」

「……案外、黒いね。フェデルタさん」

「黒く染まるだけで真実が手に入るなら幾らでも」

小賢しいと思うし、悩むこともある。
だか私は真実を失う事がなによりも怖く、失わない為に手段があるのならそれが悪魔であっても迷わず縋るだろう。
「こういう私は嫌いか?」

「馬ー鹿、どんなフェデルタだって好きだよ」

ちゅ、と小さな音を立てて真実がキスをくれた。
この小さな繋がりが私をとても幸せにしてくれる。

「ところでさ?」

「なんだ?」

「お腹空いちゃった」

よくよく考えれば鶏卵は炭になってしまったので、真実はなにも食べていない。
拗ねていた原因が解決して安心したのか、お腹がぐぅううと色気のない音を立てた。

「仕方のない奴だな、少し待っていろ」

「わーい、大好き」

私達の関係は歪だ。
だが当の本人がそれで満足しているのだから、それも1つの幸せの形なのだろう。

笑う真実の頬に唇を落とし、私はこんなにも幸せなのだから。



のの様リクエストありがとうございました!
エロ無しでもいいとの事だったんで、ひたすらお互いを思って悩むというラブラブにしてみました。
エロよりラブの方が恥かしくて、爆発しろと唱えつつの作業になりました。
楽しんで頂けたら嬉しいです!

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あきゅろす。
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