◆10万HIT CLEAR 触手受け 実験施設から逃げ出した高い知能を持つスライム。 それが私、ナナだ。 多分七番目に生まれたからなのだろう、実に安易な名前である。 たいした利用価値がないので実験体として使われる毎日だった私は、声帯がないので喋れないし、表情筋もないので意志の疎通も出来ない。 誰とも思いを交わし会う事無く朽ちていくのだろうと思っていた。 ……はずなのだが。 「眠い? 電気消そうか?」 ニコニコと笑う男、加賀山 栄はなぜか私の意図を汲み取ってくれる稀有な人間だった。 人間の見分けは余りつかないけれど、綺麗な顔立ちをしているのが私でもわかる。 大きな家に住んでいる辺り金持ちなんだろうという予想はついた。 しかし何故喋れないのに意思が通じるのだろう、不思議だ。 そもそも実験体として生きるのが嫌で逃げ出し、乾燥し干からびかけた私を拾った栄は、食事や寝床だけでなく、研究所にまで手を回し私をかくまってくれた恩人である。 丈夫である事以外、特に価値のない私の事をかくまってくれる理由はわからないが、ここはとても居心地がいい。 寝ている所に電気を流されることもなければ、千切られて元に戻るか実験されることもない、触手を無理に引っ張られてビロビロされることもないのだ。 十分な食事を与えられ、ゆっくり寝られるなんと幸せなことか。 栄はサッカーボールほどの大きさの私の身体を抱えると、彼のベッドの横に用意された私用の柔らかい寝床に私の身体を置いた。 干してくれたのか布団から陽の温かい匂いがする。 「おやすみ、ナナ」 彼の指が身体の表面を滑る。 名乗る事の出来ない私の名前を、僅かな身体の動きから読み取った彼は、一体どんな脳のつくりをしているのだろう? 彼に興味を抱きつつも睡魔に勝てず、私はゆっくりと眠りの淵に落ちていった。 チュプ、チュプと音が聞こえる。 水の中を泳ぐような、ねっとりと絡むような、妖しい水音。 私の身体が揺れている音だろうか? ほぼ身体は水なので寝返りをうつ度にチャプチャプ音がするのだが、今日の音は違って聞こえる。 「ナナ……、……、ナ…ナ」 押さえこんだような栄の声。 どうしたんだろう、用があるのなら普通に呼べば良いのに。 身体を動かそうとして全身がビクンと揺れた。 いや、プルンかもしれない。 (え?) 「あ」 栄も私が起きた事に気付いたらしく、その顔を上げた。 しかし何故、栄は私の触手を口に咥えているのだろうか? そして何故、服をはだけて肉茎を擦っているのだろうか? しばしの静寂で部屋の空気が重い。 人間の性に対する知識も多少なら知っている、こういう事は欲情した時にするのだ。 ……ん? という事は私に欲情している、のか? 「えへ、ばれちゃった」 えへ、ではない。 もしかしてコレは貞操の危機という奴だろうか? スライムに貞操があるのか知らないけれど。 「気付いてただろうけど、俺ナナの事が好きなんだ」 初耳だ。 「初めて合った時可愛いなって思って、一緒に居るうちにどんどん好きになっていった」 ゲテモノ趣味だ。 「自分の気持ちに気付いたら、ナナの触手を舐めながらオナニーするのが止められなくて……!」 変態だ。 「大丈夫、舐める以上はしてないから」 どうしよう。 綺麗な顔立ちで、金持ちで、やさしくて、命の恩人で、私の事を好きだと言ってくれている。 私はスライムだし、今更性別云々言う気はない。 好きだと言って貰えて嬉しいのは事実だ。 けど、変態すぎて感動しない。 こういうのはあれだ、そう、確か……残念な美形。 (軟体動物が好きなのか?) 「ちがうよ、ナナだけ。そこらのスライムじゃ勃たないよ」 それ以前にスライムに勃つ方が問題なのだが。 どうしたらいいのだろう? 元々人に切られたり潰されたり煮られたりしていたので、人に対してあまり良い感情がないのだ。 栄の事は好きなのだが、恩人として好きなのか、愛があるのかわからない。 「怒った?」 (いや、悩んでいた。私はどうしたらいい?) 「俺の事、好きになって……欲しい」 伸ばした触手に触れた栄の唇はかすかに震えていて、軽い口調で話しながらも彼が真剣な事がわかる。 元実験生物の軟体で、声もなく、顔すら曖昧だ。 それでも良いのだろうか? (栄は私と一緒にいてくれるか?) 「一緒にいるんじゃない、一緒にいたいんだ」 栄の腕が私を抱きかかえ、ギュッと力が込められる。 なんとなく気恥ずかしい。 こういう感情が増えると恋になるのだろうか? 「好き」 身体中にちゅ、ちゅ、と音を立ててキスされる。 痒いような、くすぐったいような不思議な感触。 今まで実験されてきた所為で鈍感な感覚が嘘のように身体が敏感にはねた。 (さ、栄……、あまり触らないでくれ) 「俺に触られるの嫌?」 (くすぐったい) 「……もしかしてナナ、感じてる?」 栄の指が私の身体をツプリと貫き、中を擽るように指をうごめかした。 ムズムスと身体が震え、一所に落ち着いていられず、身体の動きに合わせるように触手が勝手に動いてしまう。 それなのに嫌ではないのだ。 (感じてるの、かもしれない) 「本当に? もっとしてもいい?」 (ああ) 身体に埋まっていた指に沿うようにもう1本指が入ってくる。 違和感はあるものの痛みはなく、中でチュプチュプと動く指の感触はただひたすらに気持ちがいい。 「ナナの中、温かくて柔らかいね」 (……いれるか?) 「えっ!」 (男は肉茎を摩擦させると気持ち良いんだろう?) 「そうだけど、でもナナは良いの? 俺の事好きかもわからないのに」 (こんな事、栄にしか許さない) 「ナナ……」 栄以外にしたがる奴もいないだろう事は黙っておこう。 改めて勃起した人間の性器を見たがちょっとグロイ。 赤黒い性器の裏筋には血管が浮き、既に感じているのかピクピクと小刻みに上下するその動きで、そこだけ別の生き物のようだ。 「ほ、本当に挿入れちゃうよ?」 (ああ、大丈夫) 引き抜かれた指のあと、まだ凹んだままの身体に栄の肉茎が押し当てられ、ゆっくりと身体を貫いていく。 中を押される圧迫感はあるものの痛みはない。 それ所か熱い肉茎で身体の中を擦られるのが凄く気持ち良くて、溶けてしまいそうだ。 「あ、あ……、ナナの中、気持ちいい」 私の身体を掴み緩々と腰を揺らす栄は気持ち良さそうで、瞑った目の淵を赤く染めていた。 身体全体で感じる栄の肉茎は濃いカウパー液を零しながら深く浅く私を抉る。 身体中で感じる彼の熱に私も次第に翻弄されていった。 (栄、なんか……変、身体が熱い) 「っ、ナナ、締め付けたら……っ!」 一際深く栄の肉茎が私の身体を突き、体の深い所で熱い飛沫を迸らせる。 透明な私の身体越しに吐き出された精液が見えていやらしい。 ビクビクと震える栄の肉茎につられるように私の身体も震え、触手の先から白く濁った液体を分泌した。 (な、に……これ) 「ナナも射精、するんだ」 栄の指が触手を掴み、白濁した液を零す先端にキスをすると、身体が沸騰するような不思議な感触が全身から生まれた。 (ん、くふ、…んっ) 「凄いナナ、どんどん感度が上がってる」 楽しそうに笑いながら舌先で触手の先端を栄の舌が弄ぶ。 抱きかかえられた身体では逃げられず、全身が蕩けるような快楽にただ翻弄されるしか私には出来なかった。 栄が満足するまで弄られ続けた身体は上手く動かす事すら出来ず、動けない原因の手で私は風呂に入れられていた。 中に出された精液は掻き出すまでもなく身体に吸収されていたので別に良いといったのだけれど、栄の強い押しで一緒に風呂に浸かっている。 (何で風呂なんだ?) 「ラブラブした後は一緒にお風呂って決まりなの」 (そうなのか?) 人というのは厄介な決まりがあるものだ。 まあ温かい風呂は入っていて気持ちがいいし好きなのでまあいいか。 「中出ししちゃったけど大丈夫?」 (おそらく吸収したと思う) 「子供出来ちゃったらどうしよう」 (無理がないか?) 冷静に答える私に、栄は夢がないと少しだけむくれてからキスをした。 (そういえば何故栄は私の考えている事がわかるんだ?) 「愛の力!」 とても胡散臭い。 だけど嬉しそうに笑う栄は幸せそうだったから、黙っておく事にした。 まだ栄の事が好きなのかはわからないけれど、笑う彼を見て私も幸せだった。 匿名様リクエストありがとうございました! 受けにした時にどう扱えばいいのか、悩みどころしかなかったですが楽しんで頂けたら嬉しいです。 栄は全身がほぼ水分のスライムの見分けがつく変態だと思う。 [*前へ][次へ#] [戻る] |