ヤりたいお年頃
1
まさかこの俺が男に恋するとは思わなかった。
全寮制男子高でホモやらバイやら多いってのには慣れていたが、自分がそうなるとは思ってもみなかった。
珍しい転入生に人気者達が虜になり荒れる親衛隊、仕事しない生徒会。
風紀の仕事が積もるばっかでイライラして投げ出そうかと思っていたとき、あいつは違った。
仕事しない生徒会役員に文句も言わず、弱音も吐かず、1人できっちり仕事を片付けてしまう力量を持つ男、ここの生徒会長だ。
そんな姿に思わず惚れてしまったのだが、こいつは男と関係を持ったなどの話しを一切聞いたことがなかった。
無理だと思いつつも諦めることは出来ず、さりげなくアピールを続け、あいつから告白してきたときは心臓が天国まで飛んで行くんじゃないかってくらい歓喜した。
もちろんOKをして恋人同士になることが出来た。……まではよかったんだ……。
「っ……はぁはぁ……。」
「はぁはぁ……。」
部屋に2人分の荒い息遣いが響く。
お互い思春期の男だ。そうなるのは当然なんだが。
悲しいことに決してやましい意味ではない。お互い疲れきってベッドの上に倒れているだけだ。
「はぁ……、いい加減、ヤらせろっ。」
「バカ言うな……。それはこっちの、セリフだっ。」
この会話ももう何度したことか。
付き合ってから半年は経つというのに俺はまだこいつと一度も最後までしたことがない。
俺は入れられる気はさらさらなく、それは奴も同じだからだ。
面倒なことに俺らの力は互角で、毎回毎回揉めるが決着がつかず疲れてそのまま寝てしまうオチだ。
「お前、俺のこと好きなんだよな?」
しばらくして呼吸が落ち着いてきたところで、そう問いかけた。
「ちげーよ、愛してるんだよ。」
「じゃあヤらせろ。」
「…………。」
「…………。」
「じゃあお前っ!俺のこと好きなんだろ?」
「…………。」
逆に同じ質問をされたがその次の言葉がどうくるか読めてしまったため、俺は答えずにいた。
「そうか、好きじゃねーのか。じゃあ俺達もう終わりだな。」
そう言いながらベッドから起き上がって出て行こうとする奴を慌てて追いかけ背中から抱き付いた。
冗談じゃない、やっと手に入れたんだ。手放す気はない。
「っ!待て!好きだっ!いや、愛してる!」
「じゃあヤらせろよ。」
「…………。」
「…………。」
けど、これだけは絶対譲れねぇ。
END
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