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虎ぶる!!



「なんだこれ?」


 俺は手くらいあるサイズの木の棒を眺めながら首を傾げる。

 部屋に戻る途中に神崎に呼び止められ渡されたものだ。


「マタタビですよ。猫が好きなものですが、ラージ様もきっと喜びます。」
「へー?」


 ただの木の棒のどこがいいんだろう?と俺は半信半疑だった。


「こないだ気分を害してしまいましたので、そのお詫びですから。」


 神崎がそこまで言うならあげてみるか。

 受け取った木の棒を手に部屋に戻った。


「!あきらっ!いい匂いがするっ。」


 部屋に入った途端、虎の姿のラージが駆け寄って来た。


「うはっ、何その顔……あっ!」


 ラージは虎の姿だというのに分かりやすく表情を変えた。

 口をあけてしかめっ面みたいな顔に思わず笑うが、手に持っていた棒を咥えて奪われた。

 ラージはその場でゴロンと寝転がり、前足で木の棒を支えながら舐めたり齧ったりしている。

 床に体を擦り付けてうねうねして尻尾もブンブン振り回して、こんなラージを見るのは初めてだ。

 そ、そんなに嬉しいのかあの棒が……。

 まぁ、喜んでくれたならいっか。と俺はソファーに腰かけて、付けっ放しにしていたテレビに目を向ける。

 面白い番組はないかなとリモコンのボタンを順に押して映り変わる画面を眺めていたら、ぐいっと体を押された。

 この感触にはもう慣れて、見なくても分かる。ラージが頭を押し付けているんだろう。

 なんだ、もう棒には飽きたのか。そりゃそーだよなあんなの。

 面白そうな番組が見当たらなかったのでラージに向き直る。


「!?ちょっ、ラージ虎っ!!虎のままっ!」


 思いの他近くにラージの顔があって虎の大きな口と、それに比べたら小さな俺の口が重なった。


 

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